夢見る極楽鳥とワンダーランド!01/クロスオーバーgnsn×twst
とん、とん。木屑が舞う。花弁が落ちる、砂が地面を這っている。
とん、とん。足音だ。カーヴェは目を覚ます。自分は彫刻をしていた。木彫は、家の形をしている。
とん、とん。
「おや、もういいので?」
ああ、カラスの声がする。
「はい。もういいんです」
カーヴェは瞬時に理解した。己は今、夢を見ている。
夢はスメールにおいて大切な意味を持つ。こうして部屋にやってきたカラス男はきっと、訳がわからないはずだ。
夢境。それも、カーヴェの精神世界。
それをカーヴェはただ、夢、と呼ぶ。
「僕の夢へようこそ、クロウリー」
夢見る極楽鳥とワンダーランド!
1:烏の男と、バターケーキ
バターの香りがする。ケーキは焼きたて。カーヴェは彫刻刀を置いて、コーヒーを淹れる。
「このぐらいどっしりしたケーキなら、コーヒーでも負けないよ」
楽しそうに語る男を、クロウリーはそうですかと笑って観察する。ここは夢の中だろうか。やけに五感に訴えかける夢だ。
コーヒーの入ったマグを置いた男は、青年である。美しい見目をしていて、かといって、女性的ではない。溶けたバターみたいな髪。その毛先は焦がしバターのように茶色になっている。真っ赤な目は柘榴石(ガーネット)。なるほど、物語にふさわしそうである。
「クロウリー、お食べよ」
「いいのですか?」
「うん。この夢は、あなたにおやつを食べさせるものみたいだからね」
「食べたら夢は終わりますか」
クロウリーの問いかけに、青年は笑う。
「もちろん。これは夢だからね」
夢はいつか終わるものだよ、クロウリー。
芳醇なバターの香り。ふわりとした口当たり。コーヒーの苦味と酸味。全てが混ざって、夢は終わりを告げる。
「あなたは迷わないんだね」
「そうでしょうか。これでも考えた方ですがねえ」
「夢には決まったトリガーがある」
「バターケーキですか?」
「今日はね」
あなたはまた夢を見るだろう。
「もし、もう一度、僕と出会ったら、トリガーを探すといいよ」
そうすると"総て"がスムーズだ。青年は笑う。
夢は、溶けて消えた。
まるでバターみたいに!
目が覚める。クロウリーは机の前にいた。白昼夢だろうか。夢を見た。あれは、バター色の夢だった。ような。
「ええと、何でしたっけ」
何かを探すといい、はず。