gnsn夢/たかまがはらの子供達:4幕

神の寵愛を受ける子供達がテイワットに転生させられたけれど神の寵愛があるから神の目は無い。
ちょっと変わった夢です。変な夢が読みたい方向け。

以下サクッと夢主説明。読まなくて大丈夫です。

夢主1→青樹千秋(あおき ちあき)男装主。茶髪茶目。西洋人形のような美少女であり、美女。ディルックより五歳上。360度ツンドラ気候だが、成澤に対してのみ態度が違う。原作知識有り。風の義眼。

夢主2→成澤雪菜(なりさわ ゆきな)狩人主。黒髪黒目。一般的な女性に見えるが、中身は人外思考。ディルックより五歳上。何らかの実験の被験者だった。今はモンドの森の奥の小屋で暮らしている。原作知識無し。風の義眼。

夢主3→大谷和希(おおたに かずき)騎士主。男性。ピンク髪と目。女運の無いイケメン。表情豊かな熱血漢。地位は気にしない。ディルックより五歳上。青樹と成澤は前世の縁で知り合い。片手剣を使う。水の義眼。デバフ撒き散らし型。原作知識有り。

本の魔神→???。複数の子ども達を玩具として使っている。邪神、悪なるもの、恐怖と憎悪と無邪気な子どもの姿をしている。黒髪黒目。義眼はこの魔神が与えたもの。
「玩具が原神になれるわけないよね☆」


・・・


 前略。結果としてモンドは守られたわけである。

 青樹と成澤はずっと静観していた。声をかけることはせず、話しかけられたら応えるぐらいだ。何かを知っているようで、何も知らないような。そんな曖昧な雰囲気を漂わせているのに、苛立ちなどは浮かばない。なぜか、と蛍は気がつく。その目が、あまりにも優しいのだ。青樹は真顔だけれど、ジンとディルックを見る目は確かに先生として優しい。成澤は笑顔だけれど、皆を平等に見守っている。導き手、と、守護者。そんな雰囲気だった。

 モンド城に戻ると、ガイアやアンバーといった騎士団メンバーと合流した。蛍はちらりとディルックを見る。ディルックは騎士団が嫌いだが、何故かついてきた。何故か。なんて考えるまでもない。成澤と青樹も城まで来ていたのだ。
「っ青樹! 成澤!」
 たったとパルクールの要領でピンクの髪と目をした青年が駆け寄ってくる。年頃は青樹と成澤と同じだろう。立派な成人男性だった。
「お前達やっぱ戦ってたのかよ!」
「当然です」
「殆ど見てただけだよー」
「ったく。いい加減騎士団に来てくれればいいのに。俺は歓迎する」
「大谷が歓迎してどうするんです?」
「祝う!!」
「なに言ってんのさー?」
 成澤がけらけらと笑う。青樹は顰めっ面で、青年はにこやかに笑っていた。
「あの、先生」
 そこに声をかけたのはジンだ。青年が、自己紹介するかと言った。
「俺は西風騎士団の騎士、大谷和希だ。神の目は水!」
「……それも、だね」
「うおっ誰だお前?! ん、なんか嫌な予感がする」
「合ってますよ」
「合ってんの?! えっ義眼ってバレるもんなのか?!」
「墓穴掘ったねー」
「言わせたのは青樹だろ!?」
「私たちもバレたんです。死なば諸共です」
「死なねーよ!」
 微妙どころかブリザード吹き荒れる空気の中で、三人の男女だけがワイワイと楽しそうである。特にディルックとガイアの空気が悪い。ジンは困惑を極めている。
「っ、ジン!」
 走ってきたのはジンとさほど歳の変わらない、でも少女のような女性だ。
「天音?! どうしてここに」
「姉さん達が戦っているもの。だから、わたしも来た。ジン、怪我はない?」
「怪我はない。そうか、二人のことで、来たのか」
「そう。特にあの世代は無茶をするから」
「天音、生徒達の様子はどうでしたか」
「はい。無事です」
「宜しい。ジンと下がりなさい」
「はい。行こう、ジン」
「だが、」
「"先生"の言うことは従おうよ」
「……そうだな」
 そうしてジンと天音という女性たちは騎士団の城の中に消えた。
 大谷はまったくと息を吐く。
「たぶん次は祭りをするぜ」
「酒と踊りですかね」
「俺が幹事をするぜ! 堅苦しくないやつをやろう」
「頼むよー。ねー、青ちゃん」
「頼みます。そうですね、成さん」
 で、と大谷は言った。
「青樹は何でユニコーンに乗って移動してんだ?」
「移動手段に使っているだけですが?」
「(性別を)隠す気あんのか?」
「テイワットにユニコーンはいないので」
「アッ?! そうだな?!」
「おい、先輩?」
 そこでガイアが口を開いた。げっと大谷が言う。
「なんでそんなに怒って……ディルックもすげーオーラしてんじゃん! 何?!」
「俺は、どうしても気になるんだが、大谷先輩と二人の関係を聞いてもいいか?」
「仲間」
 仲間。蛍はなるほど青樹と成澤と大谷は何かしらの面識があってのこの対応なのかと理解した。パイモンは仲間って何だっけと言う顔をした。ガイアとディルックは二人揃って“そんなわけないだろ”という顔をしていた。
 そこへ割り込むのがウェンティだ。
「ねえ、貴方も義眼だよね。さっきの天音さんも」
「おう。俺たちは皆、義眼だな。あの魔神が授けたのはそれ。決して、神になれる"可能性"を俺たちに与えなかった」
 その言葉に、ガイアは眉を寄せた。ディルックは、言う。
「それはどんな魔神なんだ」
「どんなって、本?」
「本だと?」
「おう。ずっとあいつは本だよ。俺たちという玩具で遊び続ける子どもであり、物語そのもの。難しいけどさ、多分、理解しなくていい。いつか、きみが対面するさ」
 そう言った、きみ、とは蛍を見ていた。蛍はハッとする。
「まさか、お兄ちゃんを知ってるんですか?」
「いや、俺は知らない。でも、あの本の魔神は知ってるぜ。知らないことはない。それは知恵じゃない。あいつが本という記録媒体そのものだからだ」
 さて、と大谷は踵を返す。
「とにかく、後始末の書類も溜まってるし、仕事するぜ! ガイアもちゃんとしろよ!」
「ああ。ではな、」
 青色の髪を揺らして、ガイアは騎士団の本部に入った。ディルックと成澤と青樹は蛍とパイモンを見る。
「さてー、僕は何もないなら小屋に戻るよー?」
「私は家の方に顔を出します。旅人はどうされますか?」
「ええと、ディルックはどうするの?」
「……僕は店に寄る」
「そっか。じゃあ、私とパイモンは任務を片付けるよ」
 そうして解散となった。


・・・


 青樹家ではジンと天音が待ち構えていた。その他にも生徒が数人集まっている。
「皆さんどうされたんです?」
「姉さんに今度の祭りでドレスを着てもらいたいの」
 天音は頼み込むように言う。それですか、と青樹は顔を顰めた。
「私の性別など些事に過ぎません」
「でも、これだけ目立ったことをしたからには、きちんと証明しないと」
「先生の身に何かあった時に対応が遅れます」
 天音とジンからの説得に、青樹は息を吐く。
「確かに、私の体は年々弱くなっています。ですが、」
「姉さん、お願い」
「……わかりました」
 青樹は渋々頷いた。手塩にかけて育てた生徒達と妹に真っ直ぐに頼み込まれては、青樹は折れるしかなかった。
 祭りまでにふさわしいドレスを仕立てる。大まかに言って、夜に着るイブニングドレスと、昼に着るカクテルドレスだ。色味については、黒になった。喪服になりそうだが、そこは派手な刺繍でなんとかなる。服飾の道に進んだ生徒達が腕によりをかけて作りますと豪語していた。
「そうだ、ならば成さんの分も頼めますか」
「あとで連れてきてくれたら採寸して作るよ」
 天音が力強く言った。


・・・


 後日、エンジェルズシェア。モンドの酒場のひとつ。ディルックがオーナーであるそこに、成澤とガイアがいた。酒を飲んでいる。バーテンとして立つディルックは、二人とも酒豪だなと遠い目をした。
「この店は初めて来たよー」
「旦那が頑張ってるんだぜ」
「普段はチャールズに任せてるよ」
「へえー」
 成澤はさっきから度数の高い酒をちまちまとマイペースに飲みながら甘いお菓子を食べている。甘党なのか何なのかはっきりしたほうがいい。ディルックはまた、遠い目をした。
「で、何か話したいことがあったんじゃないか?」
 ガイアが切り出すので、成澤はまあねと口にした。
「お祭り当日に知らせるのもアレだしねー」
「うん? 何なんだ?」
「僕らに、かい?」
「この後、青ちゃんの屋敷に行こうー」
「青樹家か。アポ無しだろうに」
「僕がいるから平気ー」
「そもそも、お兄さんは青樹家の人だったんだね。それなら過去にパーティにいたのも納得だよ」
「いつも通りの姿だったでしょー」
 その言葉に、ディルックとガイアは首を傾げた。正装ではあっただろうに。しかし成澤はふうと酒を飲み終えた。
「はい、これは代金のモラね。行こうかー」
「え、」
「お、おい?!」
 成澤は二人を引きずるようにエンジェルズシェアから出た。

 夜のモンド城内は、静かだが、人の気配に満ちている。成澤は音を立てることなく、上機嫌に進む。ガイアとディルックは戸惑いながら続いた。

 やがて、モンド城の奥にある青樹家の屋敷、本家とは違う、生徒達との授業につかうこぶりな屋敷に着いた。
「青ちゃん。お披露目しよー」
 扉を開くことなく、成澤は上を見上げた。出窓が開く。ひょっこりと青樹が顔を出した。
「今行くよ!」
 そして引っ込むと、たったと走る音がする。扉が開く。青樹が成澤に笑いかけた。
「成さん、屋敷に来てくれて、ありがとう」
「いいえーやっぱりここじゃ、男装してないんだね」
 そう、今の青樹は白いレースのワンピース姿だった。
 夜の中、光の中。淡く輝くピンクパールのワンピースと、それがよく似合う彼女の体格に、ディルックとガイアはぽかんとしていた。いつもは結っている髪も、ハーフアップにしている。
「立ち話も何だから入って。青色君も赤色君もおいでなさい」
 そうして、青樹はメイドや執事にお茶の用意を頼んだ。

「本当に女性なのか」
 ガイアが恐る恐る言う。ディルックは頭を抱えている。成澤は美味しい紅茶を飲み、青樹はそうですよと平然としていた。
「結果的に性別を隠していましたが、生徒達には教えていましたし、別に無理に男性として生きるつもりも無かったので……まあ、利便性から男装してた面もありましたし。今度のパーティではドレスを着ることになったので、馴染みの子ども達には伝えないと、と」
「もう子どもという年頃でもないんだが?」
「僕もとっくに成人している」
「そんなこと言ったら僕らはおばさんだねー?」
「ふふ、そうだね」
 ガイアも頭を抱えてしまった。静かになった男性陣をそのままに成澤は自分のドレスも仕立ててもらうんだよと爆弾発言をする。青樹は生徒の中に服飾系の道に進んだ子がいましてと楽しそうだ。
「そもそも、どうして男装していたんだい?」
 ディルックの問いかけに、青樹はしれっと言った。
「趣味です」
 そっかあ。ディルックは遠い目をした。


・・・


 ジンはリサと話し合う。祭りについてだ。
「大谷先輩が幹事をするらしい。リサは手伝ってあげてくれ」
「もちろんよ。わたくしにできることはやるわ。彼には恩があるもの」
「そうだな。エリートとしての道を全て捨てて、騎士団の中で働いてくれている。本当に、助かる」
「正義感が強くて熱血漢なのが玉に瑕かしら」
「そうかもしれない」
 そこへ、こつこつと天音がやって来た。普段、姉の右腕として働き、屋敷から出ない彼女は、今日ばかりはジンの隣にやって来た。
「二人ともお疲れ様。わたしは邪魔かな」
「いいえ、わたくしはこれで」
「リサ?」
「ジンはちゃんと言葉にするのよ。それじゃあね」
 リサはひらひらと立ち去る。図書室に行くのだろう。天音はそっとジンを見上げる。ジンは天音の頬を撫でた。
「怪我はなかったか?」
「うん。何もないよ。わたし、ちゃんと皆を守ったの」
「君も、義眼だったのか」
「そうでもペガサスを召喚して魔法攻撃できるぐらいかな」
「充分な戦力になる。でも、なるべくなら戦わないでほしい」
「ジン……?」
 きゅっとジンは眉を下げた。
「すまない。私もまだまだ、だな」
「どうして? ジンは代理団長をして、仕事をたくさんしてる。凄い人だよ」
 天音の性格は天邪鬼だ。だが、信頼した人、つまり、この人と決めた人には、とことん甘い。水菓子よりも、砂糖菓子よりも、特別に甘いのだ。それをジンは享受している。その事実にジンの神経がびりびりと痺れるようだった。
「天音、パーティでは私のパートナーとして居てくれないだろうか」
 その言葉に、天音はきょとんとする。
「勿論そのつもりだよ」
 それ以外は考えてなかったと、天音は言った。


・・・


 旅人こと蛍は、パーティが開かれるまでモンドの地図を埋めたり、宝箱を探したり、依頼をこなしたりと、忙しなく動いていた。
 そこで、新たに見つけた秘境に入る資格を得たので、適当に仲間を募って秘境の前に集合した。
 青樹とガイアとリサである。
「リサは来て良かったのか?」
「大谷君に気晴らしして来いと言われてしまって」
 ガイアの問いにリサは悲しいわと言う。大谷は騎士団の中でも変わり者であり、何より世話焼きだと、ここ数日で旅人はよく知っていた。依頼をこなしていればモンドの人間関係も分かるというものである。
 問題は青樹だ。旅人は青樹の能力を知らない。成澤のように複数の元素を使うとして、どう戦うのだろう。ユニコーンという馬のような生き物は召喚していたが。
「適当に元素爆発や開花や反応を起こすので、お気になさらず」
「ええっと、とりあえずギミックは簡単だと思う」
「では私は旅人さんの護衛をしますね」
「っお兄さん!」
「青色君。もうお姉さんで大丈夫ですよ」
「あら、先生は認められたのね」
「生徒達や妹にあんなに頼み込まれては」
「ふふ、良い事だわ」
「……お姉さんを男だと思ってたのは俺だけなのか?」
「私もすぐ分かったから、たぶん、そう」
「オイラは分かんなかったぞ!!」
「そうか……」
 ガイアは少し落ち込んでいた。

 かくして秘境探索である。青樹は詠唱する。
「地獄の門番、冥府のモノ、三ツ首の獣。ケルベロス、来なさい」
 どろりと、それは現れる。炎を吹く恐ろしき化け物。青樹はそのケルベロスを愛おしげに撫でる。
「炎元素の子です」
「元素生物の召喚、ということかしら」
「そうなります。正しくは神話上、伝説上、物語上の、架空の生物ですけれども」
 興味深いわとリサが言う。旅人は便利だなあと思っていた。そして、つまり本人は戦わないのかと気がついた。ガイアが渋い顔をしている。
「その召喚とやらのデメリットは何なんだ?」
「特にはありませんね。詠唱が多少長いので、急に出すことができない程度でしょうか。あ、呪文を噛むと化け物が出て来ます」
「うわー!怖いぞ?!」
「滅多に間違えません」
 言い切る青樹に、ガイアは息を吐いた。
「基本的に戦ってほしくないんだが」
「私自身は戦いませんよ」
「あなたには家で待っていてほしい」
「私は別に家庭的な女性ではありませんが?」
「先生だものね」
「あくまで知識として様々なことを知っているだけです」
「そうじゃないんだが……」
 がっくりとガイアが肩を落とす。旅人は可哀想になってきたなと、きょとんとするパイモンの頭を撫でた。


・・・


 パーティは盛大なものだった。カクテルドレスの青樹と成澤は、それぞれが黒と水色を纏っている。そんな二人に挨拶に行くのは青樹の教え子達だ。華やかな少女から女性まで。子女たちがひっきりなしに声をかける。それを、ディルックとガイアは眺めていた。
 旅人はこの人達は顔がいいのに壁の花に徹するのかと、呆れていた。実際、女性たちから熱い眼差しを受けている。そしてそれに気がついているだろうに、相手にしないのだ。

 にしても、と、旅人とパイモンは青樹と成澤を見る。二人とも、普段は男装をしている青樹と、狩人らしく動きやすい服装の成澤だ。そんな二人が着飾った姿は大変見目麗しい。目の保養である。旅人は手を合わせた。良いものを見た。
 なお、天音という人はジンと並んでいた。こちらも大変目の保養になった。ただ、雰囲気が甘過ぎてお砂糖かなと思った。パイモンはスイートフラワーみたいだと言っていた。わかる。

「やあ」
「あ、ウェンティ」
「随分と彼女たちが騒いでいるね。いや、周囲が、かな」
「自慢の先生だと言ってるね」
「師匠を褒められると嬉しいものなのかも?」
「たぶん、そう」
 ふふとウェンティは笑うと、さてと壁の花になりきれていない義兄弟を見る。
「あんまりのんびりしてると、誰かにとられちゃうよ?」
「いや、それは無いだろう。生徒達で手一杯らしいからな」
「同上」
「それはそうだろうけどね。まったくもう」
 ウェンティはさっさと話しておいでと二人を叩くと、蒲公英酒を飲み始めたのだった。

 ガイアとディルックは仕方なく、子女に囲まれる青樹と成澤の元に向かう。二人はすぐにガイアとディルックに気がつくと、ひらひらと手を振った。
「青色君と赤色君は楽しめてますか」
「二人ともちゃんと楽しむんだよー?」
「それはこっちのセリフなんだが」
「二人は料理も食べれてないだろう。何か取ってくる」
「気にしないでー」
「私も教え子達と話したいだけなので」
 つまり飯を食べないと言われ、ディルックは眉を寄せる。ガイアも失礼にならない程度に二人を見た。細い。性差を含めても、あまりにも二人は細い。
「何か取ってくる」
「俺もそうするぜ」
 離れていくディルックとガイアに、青樹と成澤は子ども時代を思い出すなあとのほほんとしていたのだった。


・・・


 かくしてパーティを終えたわけである。
「なあ旅人! 璃月(リーユエ)に行くって本当か?!」
「そうだけど、どうしたの大谷」
「俺も連れてってくれ! 会いたいやつが璃月港にしばらく滞在してるって話なんだ!」
「騎士団は?」
「休暇を貰った!」
「じゃあ一緒に行こうか」
 よっしゃと、大谷はピンク色の髪と目を揺らしたのだった。

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