gnsn夢/ゆるっとプレイヤーは行き来する。


ゆるっとプレイヤー主
いわゆる夢主。女性。ごく普通の一般市民を自称する。親族に社長やら裁判所勤務やら教師やら地主やらいるが、本人はごく普通の一般市民。所属は田舎だよ。
なお、妹が二人いて、末っ子が原神ガチプレイヤー。話がわからん。


 吾輩はゆるっとゲームで遊ぶ同人女である。嘘です。同人誌は出したことないです。単にネットに小説を投稿することぐらいしか特徴のない一般市民です。
 さて、私の好きなゲームを紹介します。ポケモンです。以上。え、ソシャゲ。あんまり遊んでないですね。あえて言うならとうらぶだよ。そんな感じで育成ゲーしかやらない私を無理やり原神に引き摺り込んだのが末の妹である。可愛い妹は原神にどハマりしている。無課金で雷電将軍さんとやらを引いていた。頑張ったね。
 で、私はのんびりと妹の話を聞きながら原神で遊ぶ日々だ。仕事は在宅なので歳の離れた妹との交流として、遊んでいるのである。
 まあそれはそれとして、探索は面白い。基本的に画面酔いのために十五分ぐらいしか継続して遊べないが、その十五分で世界を歩き回るのが好きだ。推しは今のところ蛍とアンバーである。あと最近ディルックとセノを引いた。ディルックは初めての星五である。よく知らないが君の義弟とやらの声があまりにも三日月宗近なのはどうにかならないか。私は諸事情あって三日月宗近アレルギーなので(推しです)(自分の中で解釈が固まりすぎて二次創作も公式も見れないです)、ガイアを使う時は音声をオフにしている。ごめんて。
 とまあそんなゆるっとプレイヤーであるが、在宅ワーカー私は、基本的に無茶をしがちである。そもそも虚弱体質である。ということで、今日は風邪をひいた。結構きつめの。
 とりあえず次女の妹にプリンを買ってきてくれるように頼み、寝る。ポカリを飲み、寝る。
 熱は上がる。うーん、まずいかもしれない。明日も熱があったら病院に行こう。私はそう思いながら、目を閉じた。


・・・


「大丈夫?」
「はい?」
 目の前に蛍ちゃんがいる。えっマジ、何。夢ですかね。夢だな。
「わあ、可愛い……」
「ありがとう。お姉さんはどうしてこんな所で倒れてるの?」
「こんなところ? あれ、ここ、海辺?」
「うん。私が初めにパイモンと出会ったところ……パイモン、どうしよう」
「オイラも分かんないんだぞ。このお姉さんは弱そうだし」
「わっパイモンさん可愛い!」
「わあっ! 何だ?!」
「わかる。パイモンは可愛いよね」
「蛍ちゃんも思うんだね。よかった!」
「オイラを置いて話をするなー!」
「とりあえず、モンド城まで行ってみる?」
「あ、いえ、多分そこまで辿り着けないです」
「え?」
 距離を考えてみよう。虚弱体質の私には無理である。
「ここで少し話そう。たぶんそのうち帰れるから」
「帰れるの?」
「わかんないな。消えるかもしれない。私は普通の一般市民だからね」
「ねえ、お姉さんの名前は?」
「名前? ごめんね、私はあまり名前が好きじゃないんだ」
「そうなの?」
「だから蛍ちゃんがつけてほしい。私をなんて呼びたい?」
 笑いかけると、蛍ちゃんはそうだなあと考える。
「カメリアさん」
「じゃあ私は今からカメリアだ。椿だね。いいね、私の好きな花の一つだよ」
「そうなんだね。よかった」
「えーっと、カメリアは甘い匂いがするぞ?」
「あ、飴持ってるみたい。いつも持ち歩いてるんだよね」
「何で持ち歩いてるの?」
 パイモンに飴を一つ分けて、答える。
「体調が良くない時に糖分を摂ると少しはマシになるからね」
「……体が弱いの?」
「まあ虚弱体質ではあるね」
「だから城に行けないの?」
「そうだよ。歩けないだろうね」
「そっか」
「蛍ちゃんはいっぱい駆け回るんだよ。私がこうして話すのはきっと今日だけ、今だけ。足止めしてごめんね」
「ううん。大丈夫。ねえ、カメリアさん」
「なあに?」
「また会える?」
「さあ、それは夢に聞いてみないと」
「夢?」
「私はきっと夢を見てるんだと思うからね!」
 そうして意識がふわりと浮く。あ、起きる。私はそっと蛍ちゃんとパイモンの頭を撫でる。
「さようなら、二人とも。私はあなた達とお喋りできて嬉しかったよ!」
「う、うん」
「カメリア?!」
 私は目が覚める。


・・・


 いやすごい夢だな。私は妹がベッドサイドのチェストに置いておいてくれたプリンと、手紙を見る。うん。明日は病院に行けとのお達しだ。やだなあ。とりあえずプリンを食べながら、そういや熱が引いてる気がすると首を傾げた。


・・・


 例えば夢小説だとして。私のようなザ非力が原神世界なぞ無理である。普通に生きていけない。じゃあ何があればいけるかなって病院の待合室で考える。
 ところで私の嫁はポケモンのミュウちゃんである。嫁っていうか嫁入りしたいのでミュウちゃんは婿。ミュウちゃんが一緒ならやっていける気がする。ただ、ザ平凡な私がミュウちゃんと一緒にいるのは解釈違いなんだよな。
 解釈って、難しいな。

「××さん」
「あ、はい」
「手術が確定しました」
「うっそお」
 馴染みの医者は遠い目をしていた。
「ノリが緩いんですよ。なんでこんな悪性の腫瘍を放っておいたんですか」
「いやなんか胸にしこりがあるなとは思ってましたけど」
「下手したら全摘ですよこれ」
「あ、ついでに胸ナーフしましょ」
「私は下手な医者ではないので全摘はさせませんよ」
「チッ」
「露骨に舌打ちしないでください。しかも下手」
「えー、腫瘍って病気的アレですか?」
「そこは本人にはまだ開示しませんけど」
「やだあ」
「とりあえず、手術の予定日は……」

 まあ人間何かしらの病は抱えているものである。それが単に悪性腫瘍だっただけ。なんの悲観も覚えず、私はなんか知らんが点滴を受けながら一日入院した。


・・・


「カメリア?」
「あれっ、蛍ちゃんだ」
 また夢らしい。原神の夢は二回目である。蛍ちゃんはカフェテラスのような場所にいた。うーん。ここはモンド城内かな。
「突然出てきてびっくりしたよ」
「あー、ごめんね。私もよく分からない。ここはモンド城内かな?」
「そうだよ。パイモンは今、ピザを食べてる」
「わあ、吸い込むようだね」
「カメリアも何か食べる?」
「やめておくよ」
「そう? じゃあお喋りしよう」
「わーい。蛍ちゃんはどうしてここにいるの?」
「冒険者協会に来たかっただけだよ。あと腹ごしらえかな」
「なるほど」
「カメリアは何してたの? ここはカメリアとしては夢の中なんでしょ? 現実では?」
「入院中」
「えっ」
「むー! ぷはっ、カメリアどこか悪いのか?!」
「いや、今日は検査と点滴だけ。近々腫瘍の摘出するんだってさ」
「腫瘍って、」
「胸に何かあったみたい。悪性だからとろうねって。まあ、腕のいい医者だから大丈夫だと思う」
「軽っ!!」
「余程、信頼してるお医者様なんだね」
「まあね」
 夢の中で何かを食べること、の方が、今は怖い。とは言えない。"よもつへぐい"をご存じだろうか。冥界の食べ物を食べることで、戻って来れなくなることだ。いや前回、パイモンに飴あげたけど。だが、まあ、あの飴が現実世界では消えてなかったので、私がこちらに持ち込むことはないのだろう。
 食べることに執着がなくてよかった。私はパイモンがピザを食べるのを促した。いっぱいお食べ。
「カメリアはこっちだと丈夫なの? こっちでも虚弱なの?」
「さあ? 調べたいとも思わないけどなあ」
「神の目は無さそうだね」
「そうだね。あったら怖いな。神になぞなりたくもない」
「え?」
「いや、こっちの話。ごめんね、現代日本ではめちゃくちゃ怪しいのよ、その辺」
「はあ……」
 蛍ちゃんが困っている。うーんと考えて、そうだと紙切れを手にした。多分いらない紙だろう。
「ほら」
 私はサクサクと折り鶴を折って渡す。私の特には十連折り鶴を作ることである。今回はただの折り鶴だが。蛍ちゃんは目を丸くしていた。パイモンも目を輝かせた。
「カメリアは手が器用なんだな!」
「これぐらいは誰でもできるよ」
 あ、そろそろ起きる。そんな気がして、私はじゃあねと蛍ちゃんとパイモンに手を振った。


・・・


「手術終わりましたよ」
「うっそお」
 本人の同意とかいらないのか。いるだろ!!


・・・


 自宅療養とされた。私は在宅ワークをしながら、毎日を過ごす。無茶はしないように気をつけている。
 せっせと毎日を過ごしていると、夜に眠るわけだが。

 最近は毎晩、どこかの自然の中にいた。多分、原神のモンドだが、周りに人がいないのだ。かといって魔物もいないので、どうしたらいいのか分からず、ぼーっとして起きるのを待っている。
 しかし、なあと私はゲームをしながら思う。
「最近は瑠月探索も頑張ってるし、モンド以外でもいい気が……いや、モンドが一番好きだわ。あの感じが一番いいよね」
 あ、強めの敵だ。
「蛍ちゃんと旦那の元素スキル使おう」
 ぽちぽちとしていると、ふわっと体が浮いた。
 浮いた??

「っわあ?!」
「えっ、カメリア?!」
 そのままゲーム画面である。私はなんとか頭を守って落ちる。体を強打した。痛い。しかしこのままここにいるのはダメだ。なんとか立ち上がって下がる。敵がいない位置で、隠れる。蛍ちゃんとディルックが戦っている。うわー!私の画面と同じだけど、蛍ちゃんとディルックの動きが死ぬほど上手い。ごめんな下手くそプレイヤーで。あ、石投げないで。

「カメリア、大丈夫?!」
「う、あ、蛍ちゃん……だいじょうぶ? 蛍ちゃん怪我、あ、怪我してる!」
「カメリアの方が大変だよ?!」
「私はいいの。蛍ちゃん、怪我、治さなきゃ」
「カメリア? カメリア落ち着いて」
「うう。ごめんなさい。蛍ちゃんに怪我させちゃった」
「カメリアの所為じゃないよ。落ち着いて」
「あう、うわ、ごめん、少し混乱してる。放置してれば治るから」
 蛍ちゃんは無言で抱きしめてくれた。温かい。人の体温に、じわじわと涙が出てきた。
「ごめんね、ごめんなさい、私、私、」
「カメリアは何も悪くないよ」
「うん、うん、わかった」
「じゃあカメリア、怪我の手当てしよう」
「たぶん、私は治せないよ」
「どうして?」
「こっちの住民じゃないもん」
「試してみよう」
 蛍ちゃんがご飯を使ってくれている気配がする。でもやっぱり治せないみたいだ。せめて、蛍ちゃんとディルックは治してもらう。パイモンは私の怪我を見て焦っていた。
「肩も腹も! 打ち身もひどいぞ?!」
「虚弱ゆえに……パイモンは怪我ない?」
「オイラは大丈夫だぞ! カメリア、どうにもならないのか?」
「多分目が覚めたら、戻るから。分かんないけど」
 そうして私は意識が遠のく。ああ、これは出血し過ぎた。ごほ、と吐血する。うーん。やばい。
「旅人、彼女は?」
 そこでディルックが声を発した。おう、ディルックには何も出来ないと思うよ。
「カメリアっていうの。不思議なお姉さんで、どこかとテイワットを行き来してるみたい」
「は?」
「とにかく、こっちで死んじゃうなんてダメ。カメリア、応急処置してもいい?」
「何をするの? 止血?」
「そう」
「止血とかいうレベルじゃなさそうなんだけど」
「血が止まらない……もしかして意識もダメそう?」
「ごめん、そろそろ目を開けていられない」
「カメリア、死んじゃだめだよ」
「うん。こほ、ごほっ」
「吐血……っ」
「あー、蛍ちゃんごめん、血がつくから離れて」
 そこで目が覚める気がした。お、助かった。
「またね、蛍ちゃん、パイモン、あとディルックさん」
「カメリアっ!!」
 私は目覚める。


・・・


 激痛である。痛みに耐えながら、ベッドの中で唇を噛み締めた。夢の中であれだけの怪我をしたから、目覚めても体がおかしいのだろう。
「きっつ」
 なんとか体を動かして、痛み止めを飲んだ。効くか分からないが、飲まないよりはマシだろう。多分。


・・・


 それから数日。すっかり痛みが取れた私は菓子作りをしていた。作るのはクッキーである。サクサクと作って、焼く。美味しくできるといいな。
「バレンタインもホワイトデーも寝込んでたからなあ」
 どうせなら最近夢に見た原神のキャラクターにでもこのクッキーを渡せたら面白いのに。
 いや、それはそれで限界オタクらしくていいな。私はラッピングを探す。清潔な袋や飾り紐など諸々で、焼いて粗熱が取れたクッキーを個包装する。
「とりあえず三人分、と」
 蛍ちゃんとパイモンとディルック向けだ。ふふんと満足して、写真を撮ろうとした。すると画面が原神だった。
 ゲーム、立ち上げてたっけ。

「あれっ」

 声は蛍ちゃんで。私はぽかんとする。
 目の前に蛍ちゃんとパイモンとディルックがいる。
「ど、どうして?!」
「カメリア無事?!」
「大丈夫かあカメリアああ!!」
「ここはどこだい?」
 蛍ちゃんは私を抱きしめて怪我を確認している。痛い痛い。怪我はないし、もう痛みもない。普通に抱きしめる力が強くて痛い。
「えーっと、ここは私の住んでいる家ですね。ついでに言うとキッチンです……」
「キッチンなの?」
「いい匂いがするぞ?」
「見慣れないね」
「モンドはドイツ辺りが元ネタだっけ。じゃあだいぶ違うかな。ここは日本なので。とりあえず、リビングに行こう。お茶出すよ。水出しの紅茶があったはず」
「カメリアは大丈夫?」
「大丈夫だよ」
 とりあえずリビングに案内して、座ってもらい、水出しの紅茶とラッピングしたクッキーを出す。
「はい。蛍ちゃんとパイモンとディルックさんへ」
「え、いいの?」
「クッキーだぞ!」
「僕まで?」
「いや、まさか本当に渡すことになるとは思わなかったんだけど……面白いから、こう、ネタとして皆さんをイメージしてラッピングしたの。リボンがイメージカラーかな」
「ありがとう、カメリア。嬉しいよ」
「わあ、蛍ちゃんが眩しい。すき」
「私も好き」
「あわわ」
「オイラ、これ食べていいのか?」
「パイモンは足りないだろうから、まだ余ってるクッキーを持ってくるね」
「僕もいいのかな」
「どうぞ。口に合うかは分からないですけど」
 とりあえずパイモンのために、余ってるクッキーを皿に山盛りにして持ってくる。戻ったら各人がラッピングを解いてクッキーを食べていた。わあ。すごい光景。
「一枚いいですか」
「へ?」
「写真か?」
「構わないけど……」
「やったあ! 残るかは分からないけど!」
 スマホで三人の写真を撮る。我が家のリビングに蛍ちゃんとパイモンとディルックさんがいる。すごい光景だな。一枚だけで我慢して、私は三人が美味しいと言ってくれるのを受け取った。

 そして、食べ終わって、紅茶も飲み終わると、彼らは消えた。なるほど、テイワットで私が消える時はいつもこんな感じなのか。原神のアイコンを何となく眺めてから、私は片付けを始めたのだった。


・・・


空白の頁


・・・


 蛍はカメリアという女性を思う。綺麗な人だと思った。足首まで隠したロングスカートを着て砂浜にいた時は美しい人魚かと思った。髪は暗い茶色で、腰まであるのをハーフアップにしていた。目は茶色と黄色と緑が混ざったようなヘーゼルアイだ。蛍はテイワットも異世界も巡ってきたので、その目は他の人でも見たことがある。本当に吸い込まれるような目だ。
 カメリアは虚弱らしい。モンド城内にいるときも、日差しを避けるように現れた。白磁のような肌は単に日焼けしていないだけ、とは思えないほどに白かった。
 戦闘中に現れた時は本当に驚いたし、怪我を見て肝が冷えた。さらに治せないものだから、悔しかった。カメリアは今にも死にそうなのに、微笑んで消えた。

 それからしばらく会えなかった。

 次に会った時はカメリアの住む世界だった。ディルックとパイモンと共にそこに居て、カメリアはぽかんとしていた。足首まで隠れたスカートと、シャツ。そしてグレーのエプロンをしていた。
 食べさせてくれたクッキーは美味しかった。食べ終わったらテイワットにいた。ディルックもパイモンも、美味しかったと言うから、やっぱりとても美味しいクッキーだったのだ。
「カメリア」
 あの人にもっと会いたい。戦うことを知らない人。無知の人。不安定な人。また会えたら、今度こそ何かを食べてもらわなきゃ。

- ナノ -