カーヴェ総受けっていうか誰も肉体関係持たないんですけど愛情も親愛も性愛も男女問わずめっちゃ向けられてるカーヴェくん(女性にもなれる)の話です。カーヴェとアルハイゼンの産まれや体(体質)の捏造。タルタリヤやセノの過去も捏造。アルカヴェが恋愛じゃなくて最大級の親愛を向け合うプラトニック関係。そんな感じのやばい話の骨組みです。めちゃくちゃ長い。

セノとティナリに呼び出されてガンダルヴァー村のティナリの小屋にきた旅人(蛍)とパイモン。

セノとカーヴェが幼い頃から合わされていた。セノの教育の一面としてである。教令院カーヴェは髪が長く、口調も体も少年とはいえ男だが、セノとカーヴェは互いに名乗ることはせず、子セノの希望で「おねえちゃん」とカーヴェを呼び、カーヴェは「おとうと」とセノを呼ぶことになる。

深夜の密会を何度か繰り返し、子セノが子カーヴェの異変に気がつく。カーヴェの体内の元素量が会うたびに変わっているのだ。
子セノは何度目かの密会で勇気を出してこのままでは子カーヴェが死んでしまうと訴えたが、子カーヴェはこれはスメールが幸せになるための実験だからと繰り返す。「このままでは神の目がなくてもつかえるようなものすら何も扱えなくなる!」「いいんだ。誰かを傷つけるような力なんて僕はいらないからね」「おねえちゃん、おれは、おねえちゃんのつるぎになりたい」「だめだよおとうと、きみの優秀な全てはスメールを守るために使いなさい」
これが子供二人の最後の密会となった。

言うなれば、セノとカーヴェは幼馴染という関係である。

ティナリはなるほどとやけに納得していた。ずっと気安い二人が不思議だったけど、幼馴染なら納得だ、と。

「カーヴェがスメール国内でしか働かないようにしているのはマハマトラがカーヴェを守っているからだ。カーヴェは神の目を得てもメラックがなければ他人を傷つけられない」
「で、それで? なんでこんな話をしたわけ?」
「今言ったほとんどのことはマハマトラ、いや大マハマトラの機密だ。国家機密になる」
「えっ、オイラたちきいてもよかったのか?!」
「むしろ聞かせなければならなかった。これから、俺がしたいことをするために」
「どういうことなの? なんか、セノらしくないね」
「最近のカーヴェの行方を知っているか?」
「村には来てないけど……」
「そういえば見てないぞ?」
「そうだ。今、カーヴェは幽閉されている」
「はあ?!なにそれ?!」
「おいおい!それはアルハイゼンが黙ってないだろ!あいつらあんだけ喧嘩してても仲良いし!あのアルハイゼンだぞ?!」
「アルハイゼンは動けない。犯人に最も危険視され、身動きが取れなくされている。家にも帰れてないだろうな」
「は? え、なにそれ。あのアルハイゼンがそんなこと」
「アルハイゼンとて人間だ。そして、俺がここまで動けるのも、カーヴェの救出のために旅人と会えたのも、俺が大マハマトラだからだ。犯人から信頼されているとも言える」
「なあなあ、オイラすっごく嫌な予感がする」
「僕もだよ」

「カーヴェを拉致、監禁、幽閉しているのはクラクサナリデビ様だ」

笠っちとアルハイゼン
「本当にさ、出来れば手足を切って殺したいけど、それはダメって言われてるんだよね、面倒なことに」
「……っぐ」
「あー、全部終わったらあの人に会えるから、それまで僕とここにいること。案内もするから安心してよね」

眠るカーヴェと、その頬を撫でるナヒーダ。
「愛しい、愛しいわたくしの民……わたくしたちの、お母様。はやく元気になって頂戴」

「元素量を変化させる研究は確実に神を作るための前準備のひとつだよね」
「そうだ。ゆえにクラクサナリデビ様は全てを知って酷く心を痛められた。よって、何度もカーヴェと密談を交わしていたが、カーヴェはクラクサナリデビ様から何も受け取らなかった。よってクラクサナリデビ様ができることはただひとつ、カーヴェの体を元に戻すことだったのだろう。つまりは、慈悲なのだと思う」
「待って、元素を触るのは分からないけど、そもそも体内にそんなに元素ってあるものじゃないよ?!神の目だって外付けの元素機関なんだし、」
「だが、カーヴェが実験に耐えられた以上、そもそもカーヴェには膨大な元素が、全ての元素が詰まっていたのだと推測できる」
「そんな、そんなの、カーヴェは人間じゃないっていうの?!」
「カーヴェは人間だ。心臓を刺されば死ぬ、母から産まれた。怪我だってする。心もある」
「カーヴェがメラックでしか戦えないのは元素が安定してないからなの?」
「いや、不足していたのだろう」
「そんな状態でずっとフラフラしてたわけ?!」
「マハマトラが常に見守っていた。なお、カーヴェに実験を行った学者は俺がこの手で裁いた」
「……僕も文句を言いたかった」
「そうだろうな。ティナリの説教はよく効くだろう」
「ナヒーダがカーヴェを幽閉してるのはどこなんだ?!助けに行くぞ!」
「スラサタンナ聖処だと思われる」

スラサタンナ聖処
「なんで誰も僕らの邪魔をしないのかな」
「おそらく、クラクサナリデビ様の本懐が遂げられたのだろう」
「じゃあ、つまり、カーヴェは、」
「いらっしゃい、わたくしの愛しい民たち」

スラサタンナ聖処の奥
「っ、何の部屋、ぐらつく……」
「全ての元素で満ちているわけか……」
「旅人とオイラは平気だぞ!」
「ええ、そのまま。お母様がお目覚めになるの。ぜひ祝福して頂戴」
「お母様……?」

眠るカーヴェの髪はベッドから落ちている。床まである長い長い髪、服装はナヒーダの服をアレンジしたようなもの。

「旅人」
「鍾離!ウェンティ!八重!フリーナ!タルタリヤ?!」
「そうだよ!各国代表とその代理ね!ナタはどうしても難しいからまた今度って」
「はは、戦だからな」
「鍾離たちはなんで、」
「うん?お母様のお目覚めに駆けつけぬわけにはいかぬだろう」
「そのお母様って、」
「カーヴェは男だよ?!」
「簡単なことよ。お母様はすべての命の母。ええと、性別がどうであれ、お母様なの」
「お母様は何度も命を繰り返し、全てに愛の祝福を与え続ける。記憶は毎回引き継がないな」
「鍾離は前のお母様に会ったことがあるんでしょ」
「ああ、前回のお母様も実に愛情深い方であった」
「ねえ、そろそろじゃない?」
フリーナの声で、ふわりとカーヴェの目が開いた。

各国代表が頭を下げる。カーヴェは何度か瞬きをすると、無言で起き上がった。ぼうっとした様子で周囲を見る。ティナリが駆け寄った。
「カーヴェ!カーヴェ!意識はある?!」
「ティナリ、おそらくまだ意識が混濁している」
「カーヴェ!!」
ティナリの必死の呼びかけに、徐々にカーヴェが意識を取り戻した。
「え、ティナリ? セノも、旅人も! ここはどこだ?! 何の髪!重!! 服も何?!」
「お母様、おはようございます」
「クラクサナリデビ様!これはどういうことですか、僕のこれは一体、ていうかお母様って何?! よく見たら知らない人たちいっぱいいるし!!」
「詳しい自己紹介はまた今度にするとしよう。ただ、お母様へ俺たちから祝辞を」
「うむ。我らがお母様、お許しを」
「許しも何もいらないから! あー! 顔を上げて! 服装からしてこれ全員他国の方々だよな?! なんでこんなことに、」

そこへアルハイゼンが駆けつける。
「かー、う"ぇ、」
「っ、アルハイゼン!どうしたんだその怪我!ボロボロじゃないか!」
「カーヴェ、すまない、カーヴェ、」
「謝るな!とにかくこっちに、手当てをしないと」
「すまない。きみを、その姿には、させないと、誓っていたのに」
「そんなボロボロになるなら誓いなんていらない!ああもう早く、ええと、今なら多分癒せる。ちょっと待てよ、ええと、懐かしいなこの感覚。なんで戻ってるんだか……」
カーヴェがアルハイゼンの怪我を治す。
アルハイゼンの背中から隼の翼が飛び出してカーヴェを包み込んだ。
「アルハイゼン!翼が出てる!」
「いい、もう、いいから、」
「隠してたんだろ、いいのか?」
「もういい……」
「そうか。ならいい。とりあえず、アルハイゼン、髪を切ってほしい。あと服を見つけてくれないか?たぶんこの部屋のどこかにある」
「ああ。全て俺に任せてほしい」
「頼んだ」

全員が見守る中、着替え、そして断髪。
「懐かしいな、昔もアルハイゼンに切ってもらった」
「ああ」

アルハイゼンとティナリとセノが監視する中でとりあえず全員が自己紹介(名前と所属国ぐらい)をさらっとしてお開き。

とりあえずこれでカーヴェ騒動は一旦おしまい。

次、ミニイベ。カーヴェを砂漠の遺跡入り口で見つける旅人とパイモン。カーヴェは一人にさせてほしいと言うが、不安なのでこっそりついていく。
遺跡の奥、わずかに光が差し込む暗い場所。カーヴェはそこでしばらく立っていたがすたすたと人が現れる。タルタリヤだ。
「タルタリヤ!」
「やあカーヴェさん。元気?」
「もちろん! 今日も女皇様からのお使いだね」
「うん。命令だね。でもとりあえずお喋りしようよ」
「構わないよ」
戦闘のことは一切言わずに当たり障りのない近況報告をする二人、とても仲良しそう。
「カーヴェさん、あれして」
「いいよ、どうぞ」
膝枕。
「カーヴェさん、呼んで」
「いいのかい?」
「うん」
「しょうがないな、アヤックス。今日もよく頑張ったね」
「うん。カーヴェさん、俺の心の柔らかなところ、全部預けるよ」
「何度目かなあその文句。もちろん、アヤックスの柔らかな心、全部受け止めるよ」
で、二人は深淵での日々をぽつぽつと語る。タルタリヤが深淵で師匠に叩きのめさされる日々に、カーヴェもそこにいた。カーヴェは戦うのではなく、傷ついた少年アヤックスの治療を繰り返した。師匠はそれを止めず、むしろカーヴェに求婚していたが、カーヴェはその求婚は一切受け取らなかった。
そしてカーヴェとアヤックスは深淵において、アヤックスのやわらかな心をカーヴェが預かるという誓いを立てた。
「カーヴェさんは女皇様と会っちゃダメだよ。ファデュイも執行官もだめ」
「そうだね。そもそも女皇様が何度も贈り物をくださるのが不思議なんだけど」
「とにかくダメ。いい?」
「うん」
そして起き上がると、カーヴェに氷でできた花を差し出す。女皇からの贈り物だ。カーヴェが受け取るとすうっと体の中に溶けていく。
「ああ、温かいな。女皇様の優しい気持ちが詰まってる。本当に嬉しいよ」
「うん」
「ありがとう、タルタリヤ」
「うん」
ちら、と旅人たちが隠れる方を一度見たタルタリヤ。
「ちょっとごめんね」
「え、なに、んっ」
キスをするタルタリヤ。カーヴェは弱々しく抵抗している。
しっかり、キスをすると、カーヴェは息を乱してポカンとしていた。
「タルタリヤ?」
「カーヴェさんは悪くないよ。牽制かな」
「牽制って、大袈裟な」
「とりあえずカーヴェさんは先に戻って、ね?」
「うん。じゃあまた」

「そーこ、相棒いるでしょ」
「ご、ごめん、」
「いや、相棒ならいいよ。とりあえず、カーヴェさんを、ファデュイ、特に執行官が傷つけることは一切しないよ。女皇様のご命令だからね。何かしたらどんな処罰が下るか分かったんもんじゃないし」
「あ、そうなんだ??」
「あとは、こうやって会ってるのは秘密だから言いふらさないでね?特にアルハイゼンさん」
「怖いんだぞ……」
「とりあえず相棒はカーヴェさんが困ってたら助けて欲しいなあ。俺から言えるのはそれだけ、じゃあまたね!」

「怖すぎるんだぞ……」


ミニイベ。カーヴェのフォンテーヌ。
仕事でフォンテーヌに来たカーヴェ。お母さんへの挨拶はできない。何故ならお母さんも仕事で忙しいからである。カーヴェの請け負った仕事の規模としてまず水竜様にご挨拶せねばならん。
というところで壁炉の家。
リネリネットフレミネに母上と呼ばれるカーヴェ
「もしかして、リネとリネットとフレミネかい?!大きくなったね!随分と久しぶりだ!」
きゃっきゃと話す四人に、アルレッキーノがやって来る。
「あれ、ええと」
「久しぶりだな、我が妻」
「うーん、これは名前を言ってはいけないやつかな?僕が妻なら、旦那様、とか?」
「それでいい」
壁炉の家withカーヴェでフォンテーヌ街観光。
夕方。
「今日は屋敷に泊まるといい」
「それはダメです。僕は仕事でこちらにきてて、宿も手配もしてるので」
「そうか……久しぶりに会えた妻を朝まで返したくないのだが」
「はは、その設定徹底してますね」
「夫婦の誓いもしただろう?」
「は、え、いつ?!」
※寝てるカーヴェに対して勝手に指輪を送った一方的誓いです。
※カーヴェは母の結婚式でフォンテーヌに来た際に壁炉の家組と出会っていて、カーヴェが惜しみなく彼らに愛情を注いだ結果がコレである。

よくわからんまま壁炉の家組と別れて、宿に泊まって、アポイントメントを取ってヌヴィレットと面会。の前にめちゃくちゃメリュジーヌ達に好かれるカーヴェ。お母様お母様ともみくちゃにされてるところをヌヴィレットが助ける。
仕事の話を一通りしてから、ヌヴィレットの頼みでメリュジーヌたちとお喋りする。愛情深い言葉たちにヌヴィレットも上機嫌。これが噂のお母様か……となる。

仕事の関係で水中探索をするカーヴェ。一切敵対してこない生物たち。
迷い込んだのはメロピデ要塞。真っ先に駆けつけるシグウィン。そのまま抱っこ虫になったシグウィンをよしよししてると公爵登場。よく分からん公爵。よく分からんカーヴェ。シグウィンは甘えっ子になって離れない。
ただごとではないシグウィンの様子にとりあえずリオセスリが執務室に案内して、ここが要塞であることや仕組みなど、言える範囲でサクサクと解説。カーヴェはびっくりである。
「それで貴方は?」
「僕はカーヴェです。スメールの建築デザイナーをしてます」
※全く嘘ではないしカーヴェはガチで言っているぞ!
シグウィンが落ち着くまで世間話をして、シグウィンは落ち着いたら今度は看護師長として怪我人の手当ての手伝いをして欲しいとカーヴェに頼む。
「え、看護師長?!」
「構わないよ。怪我人の手当てぐらいなら僕にもできるから」
「ありがとうなのよ!」
リオセスリも引き連れて怪我人の手当て。様々な人々の声に耳を傾け、必要以上には言葉をかけないカーヴェ。手当てはほぼ完璧、分からないところはシグウィンに聞いて、一発で覚えるカーヴェ。必要な人に必要な言葉を愛情深く語りかけるカーヴェ。ジグウィンは何故かずっと上機嫌。困惑のリオセスリ。
一日中働いて、リオセスリの執務室に三人で集まると、カーヴェが少しいいかなとリオセスリに声をかける。
「メラック、図面。すまない、リオセスリさん大きめの紙はあるかな」
そして始まる要塞の修理案。だいたいはすぐには手をつけなくて良いところ。怪我人を手当てして周りながら見ていたという。
「以上かな。これが僕からのお礼だよ」
「お礼?!」
「一日中お世話になったし、たくさんの話を聞けたからね。本当はもっとちゃんとしたお礼をしないといけないけど、僕には仕事があるから……フォンテーヌには短期滞在の予定だからね」
「いや、え、ええっと……?」
「じゃあ僕はこれで」
「ウチが地上まで送るのよ!」
「ありがとうシグウィンちゃん」
何もかも追いつかないリオセスリ。今のは何だったんだ……。

フォンテーヌ滞在。仕事の図面を引き終えて、職人に提出。帰国するか!というところでフリーナやらナヴィアやらと出会う。フリーナとは再会になる。和やかなお茶会をして、スメールへと帰国するのであった。

カーヴェの璃月仕事
とりあえず依頼主の凝光にアポイントメントの手紙を送ってから璃月港を歩く。目の前に現れたのはショウ(サイトでは文字化けするのでカタカナです)。無言で清心を差し出される。受け取るカーヴェ。
「これは、清心だね、高地でしか咲かない、珍しい花だ。とても綺麗だね、嬉しいよ、どうもありがとう」
「……」
「きみの名前を聞いてもいいかい?お礼をしたいんだ」
「……ショウ、と」
「ショウか。うん。とてもいい名前だね。きみによく似合う気がする」
「この璃月にいる限り、お守りする許可を」
「許可なんていらないよ!僕にはメラックもいるから守る必要もない。きみはきみの好きなように、きみの信条に従えばいい。さあ、顔を上げて、目を見て」
「っ」
「うん、少し体が軽くなったかな?もっとその、体内の分からないものを何とかできるけど、それはきみの生き方に影響があるかもしれない。だからこれは清心をくれた分のお礼さ」
「どうして、いや、その、我は」
「えっと、ダメだったかい?」
「そんなことは、」
「ショウくん。どうか健やかにね。じゃあ僕はこれで」
カーヴェは宿を探すかあと歩き出す。ショウはポカンとしながら、カーヴェの背中を見守っていた。

宿が見つからない。不幸体質かなこれ。ってなってるところに鍾離。
「あ!ええと、鍾離さん」
「うむ。見るに、宿を探しているのか?」
「そうです」
「お母様ならいくらでも宿を当てがうが」
「待ってください。そのお母様はやめてください。あと僕は安宿を探してまして。その口調は完全に高級な宿に案内するつもりですよね??」
「ははは。お母様は鋭いな」
「鍾離さん……頑固ですね?」
「何のことだか。敬語は使わなくていいぞ」
「それはちょっと」
「宿ではないが部屋から貸せるぞ」
「えっ」
鍾離が契約してる部屋、わりとボロいが手入れはしてある。たまに鍾離が寝泊まりだけしてるとかなんとか。
「ここを使っていいぞ」
「えっと家賃は」
「お母様から受け取るわけにはいかないぞ?」
「そんな悪いです」
「……では、お母様が璃月でこの部屋を使う間、俺も共に暮らしていいだろうか?」
「……はい?」
鍾離との共同生活である。
お互い何の仕事かはよく喋らず、璃月各地の話やスメールでの話をする。食事を作ったり家事をするのはカーヴェだが、ほぼ全てのモラは鍾離が負担。ベッドは一つしかないので二人で身を寄せ合って寝る。

凝光との打ち合わせはスムーズに進んだ。カーヴェの建築精神を凝光はとても気に入った。なお仕事は璃月港の一部改修である。
下見と職人たちの様子を見に、カーヴェは身分を明かさずに港をぶらつく。勿論困っている人がいればすぐに助ける精神は変わらない。スメールの学者先生にしては優しくていい人だなあと人々は思う。

本屋を眺めていると行秋と出会う。お互い名乗らず、あれこれ本の話をして、行秋がたくさんの本がある場所を知ってるよとのことでカーヴェがついていく。図書館かな、知恵の殿堂かな、そんなことを考えていると商会である。お坊ちゃまと呼ばれる行秋にぎょっとするカーヴェ、気にしないでとしか言わない行秋。商会の膨大な車庫に案内されて、目を輝かせるカーヴェ。行秋は仕事があるからとしばらくカーヴェを車庫に残す。カーヴェはすぐに本を読んだり精査したりと素早く知識を吸収していく。

夕方、行秋が迎えに行く。明日も来るかい?と言われてだいたい分かったから大丈夫とのカーヴェ。「あの量を?」「あのぐらいならね」「そうか、スメールの学者っていうのはすごいね」「そうかもね」「ええと最後になるだろうから、名前を聞いてもいいかな?」「僕はカーヴェだよ」「ええと、行秋だよ」「行秋くんだね。今日はどうもありがとう!どうお礼をしたらいいかな。少しの間璃月港にいるから、必要な時に呼びつけてくれていいよ」「そうかい?じゃあ見かけたら本の話をしよう」「それはいいね!」
カーヴェが立ち去ってから、行秋は首を傾げる。「カーヴェってどこかで聞いたことがあるような……」
※旅人です。

仕事しつつ璃月港を散策したりして璃月キャラと出会っては愛情を惜しみなく注ぐカーヴェ。特に人外陣がメロメロになる。

鍾離との奇妙な共同生活は鍾離がゆっくりと距離を縮めてくるが、カーヴェは特に気にせず(元々アルハイゼンとルームメイトなのである)、のんびりと仕事を終えて帰国するカーヴェ。色んな人々に感謝を伝えて、何人かには璃月に留まって欲しいと言われるが、カーヴェはスメールで待ってる人たちがいるからと残らない。どうしてもと最後に皆の前で会ったのは鍾離で、すっかり慣れた(慣れさせた)距離感で「お母様、愛しています」「ありがとう、鍾離さん」のやり取りをして目が点になる周囲。そして旅人が迎えに来る。
「カーヴェ!スメールに帰るよ!」
「あれ、旅人、迎えに来てくれたのかい?」
「アルハイゼンたちが嫌な予感がするーっ!て騒がしいんだぞ!」
「ナヒーダがすぐにでも会いたいって拗ねてるの」
「クラクサナリデビ様が? そこまで?!」
「そうだぞ! スメールはカーヴェがいないとぜーんぜん回らないんだぞ!」
「そんなことはないだろ? 僕はただの建築デザイナーなんだから」
「でもスメールの中枢にいる人たちはみんなカーヴェの友達でしょ?」
「いやまあそれは成り行きでね」
「市井の人たちも気にしてたんだぞ!カーヴェがいるとずうっとみんな笑ってるんだからな!」
「そんなことはないと思うよ」
「とにかく行こうカーヴェ!」
「もう、わかったよ。じゃあ璃月の皆さん、ありがとうございました!」
残された璃月陣はカーヴェさんは何者なんだ……で終わる。

来たぞモンド編。
騎士団というかリサからの依頼でモンドに呼ばれたカーヴェ。詳細がよく分からないがリサさんの頼みならと受ける。なお依頼してきた知り合いの学者たちは皆土下座してた。何があった……。
モンドではまず騎士団に滞在許可を貰いに行く。リサからの依頼状を見せて騎士団の建物に入り、要件をノエルに伝えると、ノエルは快く受け入れ、何故かそのままジンの元へ案内される。多忙なんじゃないかと慌てるカーヴェに、ノエルは大丈夫ですの一言。
ジンは書類仕事に追われていた。ノエルからお客様と言われて、顔を上げるとカーヴェである。あまりの美にびっくりするジン(n徹目)しかも駆け寄ってきて、体調を心配するカーヴェ(全力で善意)、「この仕事量じゃ休めないね、疲労を取るのは最終手段として、休もう。いや、休めないかな。ええと、仕事の割り振りとかはちゃんとできてる?」(お母さんか?)以上、ジンは言う「お母様……」(概念)。ジンはカーヴェの膝枕で眠った。

リサはくすくす笑いながら、登場。眠るジンを横目にリサからの依頼は図書館で見つけた古い資料の調査と、モンドをよく知ってほしいとのこと。
「資料の調査のためにモンドを知ると言うことですね」「まあそうね。できれば人々を癒してほしいの」「癒す?教会があるのでは?」「そうではないの、カーヴェさんには深い愛情と知恵があるでしょう?ぜひ人々と会話して頂戴」「ええと、僕なんかで良ければ、依頼、お受けします」

ジンは数時間眠って、飛び起きる。カーヴェは膝枕の苦痛など気にしない様子で本を読んでいた。
「起きたかい?疲労は少しは良くなったみたいだね。休むのも仕事だよ。僕の言えたことではないけどね」「いや、すまない。取り乱してしまった。私はジンだ。あなたは?」「カーヴェだよ。スメールのカーヴェ。リサさんから依頼されてモンドまで来たんだ。しばらくの滞在許可を貰えないかな?」「構わない。どこか宿は見つけているのか?」「いや全く」「では屋敷を」「そんなのは勿体無いよ!宿は適当に見つけるから平気さ。野宿だってできるし」「しかし!」「安心して、リサさんの依頼はきちんとお受けしたし、誰かを傷つけることはしないからね」「そういうことではなく」「じゃあ、僕はこれで」

カーヴェはモンド城内を探索。というか宿探し。人助けや建築などの観察をしつつ、ふらふらと歩いているとウェンティに声をかけられる。
「やあ!久しぶりだねお母様!」
「ウェンティくんか。その呼び方はやめてね」
「宿を探していると聞いたけど」
「耳が早いな。いい安宿はないかな」
「お母様なら安宿じゃなくて、」
「いや安宿で頼むよ。あまり豪奢なのは好かないんだ」
「そう?じゃあこっち!」
というわけでウェンティが話をつけた安宿(?)を確保。
とりあえず宿を確保したのでモンドならお酒を飲みたいなと探索中に仲良くなった人々からおすすめとしてエンジェルズシェアを勧められる。
軽い気持ちで向かう。賑やかでいい雰囲気。一人でカウンター席に座って少しだけ飲んで空気を楽しんでいると、ガイアが声をかけてくる。
「初めまして、だな。隣はいいか?」
「どうぞ。ここの常連さんかい?」
「まあな。お姉さんの名前を聞いても?」
「僕は男だよ」
「はは、すまないな」
「構わないよ。僕はカーヴェ。スメールから来たんだ」
「そうか。俺はガイアだ」
モンドの話をしながらのんびりと酒を飲むカーヴェ。酔っても頼れる人はいないので頑張ってセーブするがモンドの酒はうまい。我慢である。
「酒に弱いのかい?」
「まあね。モンドに友人はいないから、面倒をかけるわけにはいかないし、セーブするよ。我慢ぐらいはする。にしても、モンドの酒は美味しいね」
「はは、そうだな。皆が酒好きだ」
しばらく話して、カーヴェはなんとか酔い潰れずに宿に一人で帰る。

翌日は騎士団の図書館でリサに依頼された資料を見せてもらう。まだよく分からないけれどといいつつ、リサと共に推測を高速で述べていく。学者と学者、天才と天才である。リサの心使いで図書館利用者や騎士団関係者などからは見られない奥の部屋での会話であった。

資料で気になった点をモンドの風土から推理すべくとりあえずモンド城内散策。騎士アンバーと知り合う。あれこれ案内してもらい、教会へ。
教会前で仕事のあるアンバーと別れて一人で教会を見る。素晴らしい建築に惚れ惚れするカーヴェ。
その熱心さにバーバラが声をかけてくる。
バーバラと会話し、教会のことやモンドのことをさらに教えてもらう。ここまでは互いに特に名乗りはしない。
そこへ城外で奇襲があり怪我人が出たとのことでシスターたちが仕事に当たる。カーヴェはバーバラに頼み込み、患者の手当てを手伝う。
的確かつ正確な手当てと豊富な知識に驚くシスターたちとバーバラ。そして途中で重傷患者が出てきて、流石にこれはとバーバラがスキルを使おうとしたところでカーヴェが先に手を伸ばす。
「自然の摂理というものがある。だけれど、あなたの状態はここモンドの技術では確実に死に至るが、スメールでは治療可能だ。だがあなたを移動させるなんて負担を強いるわけにはいかない。僕がこの場限りのスメールの代表として、知恵を授けよう」
カーヴェがその場で重傷患者を癒す。穏やかに眠る患者は一命を取り留めた。これ以上は自然に逆らうことになるし、患者の自然治癒能力を下げてもいけないからと、カーヴェはてきぱきと残っている怪我の手当てをした。
そして多くの患者の手当てをし、落ち着いた頃にカーヴェにバーバラがお礼を述べる。カーヴェはできることをしただけであり、助けを求める手を取っただけだと言う。あくまでお礼を受け取ろうとしないカーヴェに焦れたバーバラやシスターがせめて名前を、後でふさわしいお礼をと懇願すると、カーヴェは困った顔で「スメールのカーヴェだよ」とだけ言って、教会から去って行った。

夜であるのでエンジェルズシェアへ。一応服などに汚れはない。ちびちびと酒を飲み、吟遊詩人の詩に耳を傾けていると、ガイアがまたやってくる。
「昨日ぶりだな」
「やあガイアくん。本当に常連なんだね」
「はは、そう言っただろうに。カーヴェさんは酔い潰れるなよ」
「肝に銘じるよ」
のんびりとモンドの話やスメールの話をして酒を飲み、一人で宿に戻ろうとしたが、疲れで酔いが回っていた。歩けないことはないが、危なっかしい。ガイアが宿まで送ると言うので、カーヴェはその言葉に甘えることにする。
ガイアに安宿の部屋まで送ってもらう。水を汲んできたりと世話まで焼いてもらい、カーヴェはお礼は必ずと言って眠る。
ガイアは安宿の主人たちと知り合いなので、安心してカーヴェを預けて職務に戻る。

翌日、なんとか二日酔いはなく。カーヴェはモンド城外の様子も見たいなと悩む。戦力としてはメラックがいるから平気だが、昨日の奇襲騒ぎからしてちょっと治安が悪そうである。悩んでいるとベネットのフィッシュルに声をかけられる。城外を探索したいスメール人であり、神の目もあるが治安が不安だと言うカーヴェにまかせろ!!な二人。

三人で探索。カーヴェの調べ事に、よく分からんが護衛でついていく二人。カーヴェの語る知識に圧倒されつつ、戦力として申し分ない三人。
無事夕方にはモンド城に帰り、カーヴェは報酬として二人にモラを渡そうとしたが、二人にしてみれば知らないことをたくさん教えてもらったからと受け取れない。あれこれお礼について揉めているとすっかり知り合いになったモブ兵士から、それならカーヴェがモンドにいる間にベネットとフィッシュルが物を教えてもらえばいいと提案される。それでいいのか?!のカーヴェと、それがいい!の二人。よって、また後日会う約束をして別れる。カーヴェは今日は酒場に行かずに宿へ直帰。

うとうとしている窓からウェンティがやって来る。夢心地にウェンティの演奏を聞いて眠るカーヴェ。さりげなく手を取り、感謝の言葉と共に風の加護を授けるウェンティ。

翌日。カーヴェはモンド城の図書館に行く。一般人が入れる範囲で本を眺めるカーヴェ。ガイアと会う。
「やあカーヴェさん」
「あれ、ガイアくんこんにちは。酒場以外では初めて会うね」
「まあな。図書館に用事かい?」
「多角的にモンドについて知りたくてね」
「そうか。スメールの方なんだろう。言語は平気なのかい?」
「まあ多少は読める方だよ。安心してほしい」
「そうか」
「ガイアくんは図書館に何の用事だい?」
「いや、特には無いんだが、カーヴェさんが見えたから追いかけてきたのさ」
「はは、ガイアくんのような男性がそのように女性に言っては勘違いされそうだね」
「カーヴェさんは男性だろう?」
「同性でも誰彼構わず口説くのは良くないよ?」
「ははは、肝に命じるさ。ところで俺は本にあまり詳しくないんだ」
「そうなんだ」
「だから教えてもらってもいいかい?」
「僕に分かる範囲なら」
ガイアとカーヴェのひっそりとした会話。小声なのでリサも文句は言わない。というかむしろめっちゃ面白い図だなと思ってるリサ及び図書館利用者たち。

夕方まで先生と生徒をして、そのままエンジェルズシェアに行く。カーヴェは今日はやめておくと言ったが、今日なら旦那がいるぞと笑うガイアに押し切られる。
ディルックが立っている。ガイアが連れてきたカーヴェに驚きつつ、とりあえず店員として対応。カーヴェはガイアとディルックは知り合いなんだなあとか仲良しなんだなと察したが特に言わずにお酒何飲もうかなと悩む。二日酔いはしなかったものの、昨日ガイアに送ってもらったので迷惑をかけるわけにはいかないのである。悩むカーヴェに、ディルックがノンアルコールのカクテルを出す。ガイアから酒に弱いと聞いたのだ。安心して、カーヴェはカクテルをちまちまと飲む。
ガイアとカーヴェの会話に耳を傾けつつ、ディルックは働く。ガイアとカーヴェは図書館の続きのように先生と生徒のやり取りを続けている。カーヴェの柔らかな語り口と深く幅広い知恵にディルックは驚きつつ感心するし、カーヴェとガイアの声が聞こえる範囲の近くの客も話をやめてカーヴェの話に耳を澄ませる。
カクテルを飲み終えたカーヴェはそろそろお邪魔するよと席を立つので、周囲の無言の催促でディルックが問いかける。「失礼、あなたの名前を聞いても?」「僕かい?カーヴェだよ。スメールのカーヴェさ」じゃあねと去っていくカーヴェにやや唖然とする酒場。たまたまいたモブスメール人が「え、カーヴェさん?」と言ったので視線が集まる。「いや、あの、カーヴェさんのことはほとんど知らなくて、でもスメールでは有名な方だと思います。わたくしはただのいち商人ですが、確か、ええと、何だったかな。ただ、一般人、砂漠の人も雨林の人もよく知る名前です」「どういう仕事をしているかとかは分かるかい?」「全く知りません。ただ、人伝にカーヴェさんという名前を聞いた覚えがあって……」
よく分からんがスメールの有名人ということだけは分かったディルックとガイアであった。

なお、カーヴェが宿に帰るとウェンティがいた。ウェンティとあれこれモンドのお話をして、特に楽器はカーヴェも弾けるので盛り上がったのであった。

翌日のカーヴェは教会に向かった。ウェンティが演奏すると聴いたからだ。ウェンティの教会前の演奏を人だかりの中で聞いていると、バーバラが駆けつける。お礼をしたいからとぐいぐい引っ張られて教会の中へ。
そして教会の資料を見せてもらえることになった。
「いいのかい?貴重なものだろうに」「お礼には足りないほどだよ!でもスメールの方で知恵と言っていたから、教会からお返しできるのはこれらの資料ぐらいで……」「充分すぎるよ! 一日の滞在許可を貰えるかな」「一日なんて言わずにもっといいんだよ?!」「いや一日で平気さ。あまり人を入れる場所じゃないんだろう?悪いよ」
というわけで一日教会に籠るカーヴェ。

夕方には宿へと帰ろうとするカーヴェ。そこでふと透明化していたメラックが反応する。敵対反応がある。小走りで向かうカーヴェ。モンド城裏手の水辺にいた盗賊団とおぼしき集団に、カーヴェは全くもうと歩いて向かう。
ある程度話をして、交渉決裂となり戦闘。メラックで戦うカーヴェ。水辺のカーヴェなのでとてもつよい(単純)。
ある程度懲らしめて、これ以上の悪いことはダメだと叱りつけると、盗賊団は逃げ出した。とりあえず物は壊してないなと確認していると、ディルックが城から出てくる。真っ黒な装束の闇夜の英雄であるがカーヴェはそんなことは知らないのである(まじで何も知らないカーヴェ)。
「戦えるんだね、カーヴェさん」「あ、ディルックさん、でしたね。はは、少し見逃せなくて」「いや構わないよ。今の時間は騎士たちの監視が手薄だったからね。カーヴェさんが出なければ僕が出ていたさ」「そうだったんだね」「カーヴェさんは戦闘には慣れてなさそうだけれど、どうして戦ったか聞いても?」「モンドの人々は優しいからね。愛おしい人々は平和に生きてもらいたい。それだけだよ」「そう……」「じゃあ帰るよ。ディルックさんも早く帰って寝るんだよ」「そうするよ。でも、まずは送ろうか」「はは、僕は男だし、神の目もあるから平気だよ」
謎が深まるカーヴェ(ディルック視点)だが、まじで善意だけのカーヴェである。

翌日。ベネットとフィッシュルと探索しつつお勉強会である。二人は冒険者なので冒険に役立つ知恵がいいだろうということである。カーヴェの調べ事をしつつ、モンドの冒険者として必要な知恵を広く教えるカーヴェ。午前中に授業を終わらせて、モンド城へ。
依頼のあるベネットとフィッシュルと別れ、昼食をカーヴェ一人で食べて(二人に勧められたキャッツテール)。午後からリサの元へ。
だが途中で兵士にジンのことを頼まれて向かうと、ジンはやはり仕事をしていた。ワーカホリックである。カーヴェは親近感と好感を覚えつつ、ジンに休憩時間を設けようと説得して、キッチンを借りる。
お菓子作りの時間である。
ノエルに器具や材料を教えてもらってモンド人の舌に合いそうなバクラヴァを作成。念のためノエルに試食してもらって好評をもらってからチャイも淹れる。
ジンの待つ客間でバクラヴァとチャイを振る舞う。
「カーヴェさんは料理ができるんだな」「人並みだよ。口に合うかな?」「とても美味しい」「ありがとう。良かったよ」カーヴェの全力の善意甘やかしを受けるジン。ある程度の時間でお開きとなり、リサがカーヴェを迎えに来るが、先に図書館に言っててというリサ。カーヴェは素直に図書館へ向かう。
リサはジンがリラックスした様子なことに安心し、無茶はダメなんだからと改めて言って、離れようとする。ジンが、リサにカーヴェさんはどのような方なのかと問いかけるとリサはそうねえと笑う「ここモンドに来ているあの人はただのスメールのカーヴェさんね」「つまり本来の職業などがあると」「そうね。でもカーヴェさんにも信条があるもの、それにここは自由の国モンドでしょう?できればあの人にも自由に過ごしてもらいたいわ」「それは、その、スメールでは自由がない、と?」「そうではないでしょうけれど、しがらみの多い人ではあるわね。そうね、これだけ言っておくわ。カーヴェさんは少し前までスメールから出られなかったのよ」「それは、何故?」「飼い殺された美しい鳥であり、あとは、あまりこれはカーヴェさんが好きな例えられ方ではないけれど、」「例え?」「あの人は星よ。それだけ」

図書館の奥の部屋でリサと調査報告やら依頼の資料の調査そのもの、意見交換を数多く交わす。学者と学者の議論である。あくまで冷静に、素早い議論で、またいくつかの疑問点が浮かび、カーヴェが調査すると約束して図書館および騎士団を出る。

そのままエンジェルズシェアに向かうと、バーテンディルックとウェンティがいた。ガイアはいない。
ウェンティが酒を飲むとはこれいかにと思いつつも、カーヴェはディルックの進めでノンアルコールカクテルを飲む。うまいのである。
飲兵衛ウェンティとぽんぽこ会話するカーヴェ。たまに楽器片手に歌い出す吟遊詩人ウェンティに呆れることなく、カーヴェは楽しんだ。
「ねえ、カーヴェさん、楽しいかい?」「もちろん。ここはいい雰囲気だね」「あのね、カーヴェさん」「なんだい?」「少しだけ手を貸して?」「どうぞ」そのままその手をとって手の甲に恭しくキスをするウェンティ。ぎょっとする周囲およびディルック。カーヴェはぽかんとしていた。
「ウェンティくん?」「どうか自由の国を楽しんで。あなたが喜び、愛情を分け与えてくださることが、ひいてはモンドの幸福へと繋がる」「大袈裟だな。僕は僕のできることをしているだけだよ」「カーヴェさん。どうか笑って。そして、この国にいる間はどうか、全てを愛し、愛されて欲しい」「ウェンティくん、それはちょっとやっぱり大袈裟だよ」「ううん。とても大切なことだよ。自由を味わって、ね、風鳥の君」「ああ、そういうことか。モンドは風の国だったね。僕は確かに極楽鳥の星座だけれど、風鳥だなんて言わなくていいんだよ。どうかカーヴェと呼んでね」「もっと親愛を込めて呼びたいな」「ふふ、ダメだよ」
明らかに親密なやりとりだったが、すぐにウェンティはいつものように酒を飲み、カーヴェはカクテルを飲んだのだった。
カーヴェが帰ると、ウェンティにディルックが話しかける。
「要件は」「なんのことかなー?」「カーヴェさんが一般人ではないことは分かった」「それだけじゃダメかい?」「モンドにおいて知らないことがあるのは不都合があると思わないかい?」「うーんそれもそうかな。カーヴェさんのことをモンドで知ってるのはごく限られてるし、まーだれも口を開かないだろうし、だから、調べればいい!」「調べると言っても」「スメールに手紙を出せばいいよ。アテがないのは頑張ってね。でもスメールのある程度の人ならカーヴェさんの基本情報は分かると思うよ。踏み込んだ内容になると、」「……」「それこそ草神に面会しないと教えてもらうのは難しいかもね」「は、草神?」「あとはカーヴェさん自身と仲良くなって直接教えてもらってね!じゃあこれで!ばいばーい」

翌日のカーヴェ。調査したいのは風龍廃墟である。調べたい内容としてベネットとフィッシュルを頼るわけにはいかない。カーヴェとメラックでなんとか乗り切るためにあれこれ準備する。一日で行って帰って来れないからと宿に少し空けるとの話をして、さて出発するかと門に向かうとガイアがいた。
「あれ、ガイアくん?」「はは、兵士たちが心配していてな」「心配?」「遠出するんだろう?戦力として俺も同行しよう。心配しなくても神の目はある」「え、でも、悪いよ。ガイアくんだって仕事があるだろうし。いやガイアくんって何の仕事してるか知らないけれど」「仕事ならいいさ。モンド内ならどこへでもお供するぜ」「う、うーん」「人を連れて行きたくない場所かい?」「あーいや、風龍廃墟に行きたくて」「……何故あそこに?」「調べ事があってね。たぶんそこに行けば分かるから。少し遠いし、危険だろう? ガイアくんを連れていけないよ」「いや、むしろ余計に一人で行かせられないな。危険だ」「ガイアくんは城の皆に好かれてるだろう? 何かあったらどうするんだい?」「それは俺の力が及ばなかっただけだ。それにモンド城の人々からカーヴェさんだって好かれてるぞ」「食い下がるなあ」「譲れないからな」「分かった。一緒に行こう。旅支度はあるかい?」「当然だ」

ガイアとカーヴェの風龍廃墟への旅である。二人のサバイバル知識やら戦闘力やらで大した怪我もなく進む。基本方針はなるべく戦わない、である。

風龍廃墟ではカーヴェがてきぱきと何やら遺跡の調査をしている。メラックが常に浮かんでいるが、ガイアがメラックについて問うた際には「僕の工具箱」としかカーヴェは答えなかったし、まじでそれだけなのである。

トワリンの近くまで行くと流石にガイアは止めたが、大丈夫と言ってカーヴェはトワリンに会う。あわや戦闘かとガイアが飛び出そうとするが、トワリンはひどく穏やかにカーヴェに擦り寄った。それをカーヴェは受け止めて、よく撫でる。トワリンは嬉しそうに鳴いて、カーヴェを歓迎していた。

「何だったんだ……?」「風龍廃墟に来たからには挨拶したほうがいいかなと」「挨拶?」「あの子がここの主みたいなものだろう?それにしばらく苦しんでいたとも聞いていたからね、少し様子を見たくて」「あー、関係性は?」「特にないと思う」「それにしては懐いていたな」「そうかい?初めて会ったから普段のあの子を知らなくて」「そうか……」
ガイアは遠い目をする。さて帰ろうか!なカーヴェ。

帰路も順調であり、大きな怪我をすることなくモンド城に久しぶりの帰還である。風呂に入りたいカーヴェに、ならばこっちだとガイアが騎士団に案内する。
思いっきり来客用の風呂場に案内され、困惑のカーヴェ。ガイアはゆっくりなと出ていってしまう。
「もしかしてガイアくんは騎士団の人……?」宇宙猫カーヴェ
とりあえず風呂に入り、着替える。似たような服は持ち歩いているのでそれを着た。
風呂を出るとそのまま案内され、執務室の一つに通される。アンバーとガイアが話していた。
「あ!カーヴェさん!」「やあアンバーちゃん。偵察騎士だったね」「そうだよ!えっと、二人は知り合い?」「名前しか知らないね」「えっ」「とりあえず名乗ろうか。俺はガイア・アルベルヒ。騎兵隊長をしている」「そうだったんだね。僕はカーヴェ。うーん、ちゃんと名乗るにしても特にモンドで通じる役職はないな」「スメールでの職業を聞いてもいいかい?」「ああ、基本は建築デザイナーだよ。依頼があれば大抵のことは受け付けてる。フリーランスだね。固い騎士団とは正反対さ」「なるほど」「モンドには仕事できたの?」「うん。リサさんに依頼されてね。普段なら請け負わない依頼なんだけど、知り合いの学者たちは土下座して頼み込んでくるし、そもそもあのリサさんの頼みを断るのもと思ってね」「建築デザイナーとして来たわけではないわけか」「そう。だから、ここにいる僕はスメールのカーヴェとしか言えないな」「リサさんからの依頼って?」「ほとんど機密になるかな。まだ議論しなきゃけいけないことが多いし、分からないことが多い。ただ、そんなにはかからず帰国すると思うよ。だってあのリサさんだからね。ああ、そもそも議論がまとまったらリサさんはジンさんに報告すると思うよ。そこまで議論が片付いていれば機密でも何でもない。モンド国民なら誰でも知る権利はあるさ」「ふむ」「えーっと誰でも知れるのに今は機密なの?」「基本として、発表前の論文は絶対に他人に言ってはならない、というところかな」「……カーヴェさんは学者なのか?」「学者というか、教令院の卒業生だね」「そうなんだ!頭がいいんだね!」「そうかもね」
「カーヴェさんも疲れただろう。宿に帰って休むといい」「そうするよ、お風呂を貸してくれてありがとう。旅の同行も助かったよ。それじゃあまたね」
立ち去るカーヴェ。そこでアンバーとガイアが息を吐く。
「アンバー」「カーヴェさんの調査だよね。んー、スメールの教令院卒業生の建築デザイナーかあ。そもそもリサさんはなんで教えてくれないんだろう?」「さあな。ただ、本当にそれだけの人ではないんだろう」

翌日。
アカツキワイナリーのディルックの元に旅人とパイモンが訪ねてきた。
「ディルック、久しぶり」
「久しぶりなんだぞ!」
「ああ、旅人とパイモンか。どうしたんだい?」
「モンド城にお届け物があって。ワイナリーはついでに見に来たんだ」
「そうか。先日はではどこにいたんだい?フォンテーヌかな?」
「いやスメール」
「スメール?」
「色んな人からの頼まれごとでくたくただぞー」
「本当にね、アルハイゼンたちは機嫌が悪いし」
「……スメールなら、その、カーヴェさんを知ってるかな?」
「カーヴェか?!話には聞いてたけどやっぱりモンドに来てたんだな!」
「良かった。お届け物はカーヴェ宛なんだ。モンド城にいるとは聞いてるんだけど……」
「あー、待ってくれ。カーヴェさんについて教えてもらえるかい?」
「なんでだあ?」
「何かやらかしてるの?」
「何も。むしろいいことばかりしてくれていると思う、たぶん」
「カーヴェらしいな!」
「疲れてないといいけど」
「どういう人か教えてもらえるかい?」
「……なあ旅人、どう話せばいいんだこれ」
「パイモン、余計なことは言っちゃダメだよ」
「いやでもよう。カーヴェは本当にいいやつなんだぞ」
「いい人すぎてダメなんだよね」
「そう!見てて不安になるぞ」
「えっと、そうは見えないけど」
「気を張ってるのかもね。とりあえず、ディルックには私たちから話せることを伝えておくね」
「話せることを?」
「カーヴェの秘密というか、生い立ちは複雑だから……」
「教令院はやっぱりダメだな!」
「パイモンは黙ってようね」
「ええと?」
「カーヴェは教令院妙論派の栄誉卒業生、現在はフリーランスの建築デザイナー。私たちから見てカーヴェの人を助けるという信条は正直病的かな。それがどんな人だろうと、助けを求められたら手を差し伸べる。もちろん貧富の差はない。善悪の判断はつくし、悪業に対する怒りはもちろんある。でも、優しすぎるの」
「それは……」
「あとは、ついこの間までカーヴェは事情があってスメールを離れられなかった。体が、その、弱いというか、メラックがないと戦えなくて、色々あってマハマトラ、こっちでいう騎士団の保護下にあったの」
「……」
「カーヴェはスメールで色んな人たちを救ってる。本人に自覚はないけどね。アルハイゼンもティナリもセノもとても大切にしてる」
「彼らなら旅で会ったことがあるね」
「そう。そして何よりナヒーダ、草神のお気に入りというか、むしろ七神全員のお気に入りかな」
「……なぜ?」
「カーヴェは人間なんだけど、ナヒーダたち曰くお母様なんだって。全ての命のお母様」
「……カーヴェさんは男性では?」
「性別は特に関係ないってナヒーダは言ってたよ。カーヴェは当然、お母様って言われてびっくりしてたし、断ってたよ」
「そりゃそうだよ」
「話せるのはそのぐらいかな。とにかく、カーヴェはスメールの大切な人だね」
「カーヴェがいないとスメールの人たちみーんな落ち込むんだぞ!」
「そうか……」
「とりあえずそろそろモンド城に行くね、またね!」
「またなー!」

「……エンジェルズシェアに出るか……」

カーヴェがモンド城の宿にいると、旅人とパイモンがやって来た。
「これ、頼まれものだよ」
「ありがとう、よく知恵の殿堂の許可が降りたね」
「カーヴェとリサのサインがあればな!」
「そういうこと」
「はは、なるほど」
いくつかの書籍である。カーヴェは旅人とパイモンに報酬のモラを渡してから、言った。
「モンド城を歩こうか」
「え、いいの?」
「忙しくないのか?!」
「今日は予定を入れてないんだ。旅人たちさえ良ければ、だけれど」
「もちろんだぞ!」
「うん」

カーヴェ、旅人、パイモンでモンド場内を歩く。各人に声をかけられては答えつつ、旅人が冒険者協会や掲示板に立ち寄るのでカーヴェも話を聞いた。
「そうだ!カーヴェは騎士団には行ったか?」
「うん。用事かい?」
「少し騎士の皆の顔が見たくて」
「栄誉騎士って街の人たちに呼ばれてたね。すごいなあ」
「そうだぞ!」
「行こう、カーヴェ」

騎士団に行くと、兵士たちが驚いていた。旅人とパイモンに驚いているのかなとカーヴェは思いつつ、旅人とパイモンはああカーヴェはやらかしているんだなと察した。
「カーヴェはジンに会う?」
「心配だから会おうかな」
「ガイアもいるかもな!」
「アンバーも」
「皆知り合いなんだね」
「まあな!」

かくしてジンの執務室ではジンとガイアとアンバー、そしてリサとノエルがいた。
「あ、話し合いの最中だったか?!」
「いや、構わないが、その、カーヴェさんはどうして」
「僕は旅人についてきただけだよ。大切な話し合いなら下がってようか?」
そこでリサが口を開く。
「カーヴェさん、依頼の件はどう?」
「順調だよ。図書館に行くかい?」
「いえ、ここでいいわ」
「発表前なのに?」
「ここにいる人は皆、口が硬いもの」
「そう? じゃあ始めようか。メラック」
姿を現したメラックがサッと空中に資料を出す。そのままリサとカーヴェの議論が始まった。
天才と天才の素早い議論はこの場にいる誰もが理解不能である。ただ、かろうじて、モンドの記録に残っていない歴史を編纂していることだけは分かった。
ただ黙って見守り、議論が一旦止まる。
「では引き続き調査をよろしくね」「そうするよ。でも、あとはほとんど本にするだけかな」「ええ。でもまだ調べることはあるでしょう?」「まあね」
そこでリサが皆を見渡した。
「さて、これがカーヴェさんへの依頼内容の一つよ」「一つなのかあ?」「もう一つの依頼はモンドの人々と交流してほしいということなの。カーヴェさんは色んな人を癒せる人ですもの」「話をするだけだけどね」「そんなことはないわ。人助けを色々としてくれてるのは知ってるのよ」「うーん耳が痛いな」「ただのカーヴェとして自由の国にいて欲しかったけれど、そろそろジンたちが詳細を教えて欲しいってお願いしてきてね」「詳細も何も、僕はただの一般人だろうに」
「カーヴェ……もしかしてずっと一般人って名乗ってたのか?!」「だってモンドにおいては間違い無いだろう?依頼内容もこれだし」「せめて教令院の妙論派の栄誉卒業生で建築デザイナーとは名乗って」「それスメール以外で通じないだろ」「分かる人には分かるから!!」「あとアルハイゼンとティナリとセノのすごーく大切な人だって言うんだぞ!あいつらは旅人の仲間としてここにいる人たちとも旅してるからな!」「ただの後輩と友人と幼馴染だよ」「どうするんだぞ旅人」「カーヴェが教令院で講義を開くととても評判がいい、とか」「ただの客員教授だよ」「ナヒーダのお気に入りとか」「それは僕も本当に分からないんだ。僕がクラクサナリデビ様に何をしたって言うんだ」「胸に手を当てて」「何も分からない……」
「というわけね。あとのことはスメールというか教令院の恥だから秘密よ」「ただの実験、」「カーヴェ黙って」「それは言っちゃダメだぞ!」「もう首謀者はセノが片付けたのに……?」
「……要するに、カーヴェさんがいないとスメールは大変、ということでいいか?」「ジンのそれ正解」「じゃあモンドにいるのは」「スメールとしてはあの教令院卒の天才リサさんの頼みだし、カーヴェ自身が依頼を受けるって決めたから何も言えないの……」「カーヴェはスメールからずーっと出られなかったからみんなもカーヴェには自由に行動してほしいらしいぞ!」「ただみんな気持ちが追いつかなくて、ね」
スメールの阿鼻叫喚を想像した騎士団側はそっと頭痛がした。騎士団側であってもリサだけはいざとなればカーヴェさんとお茶会よと言っている。
「その、国際問題だな」「いやまだそこまでじゃないよ」「できれば早く戻ってきて欲しいぞ!」「あら、わたくしはまだモンドにいて欲しいわ」「依頼が終わってないから帰国はもう少し先だね」

そうして場所は変わり、エンジェルズシェアである。夕方なので夕飯である。カーヴェが酒を我慢していたと聞いた旅人とパイモンが今回は自分たちが介抱するからお酒を飲んでと勧めたのもある。
ディルックがいたのでむしろ好都合である。二階を貸し切りにして、宴会だ。カーヴェがご機嫌に酔っ払ってきたところで旅人とパイモンは彼にスケッチブックと筆記具を差し出した。不思議そうな周囲(モンド人はこの程度で酔わない)(一部を除く)に、旅人とパイモンは見てればわかると言った。

スケッチブックに一気に筆記具が走る。描かれるのはモンドの建物が多いが、草花や風景など、精密で光り輝くような美しい景色だ。
「これがスメール酒場名物なんだぞ!」「カーヴェは酔っ払うとところ構わずらくがきするからノートと筆記具を置いておくといいんだって」
らくがきとは。次々と描かれる溢れんばかりのモンドの情景に、全員が目を丸くしていた。
「やあカーヴェさん」
そこへ来たのはウェンティだ。スケッチブックを覗き込むと、くすくすと笑う。
「お母様にはモンドがこんなふうに見えてるんだね、嬉しいよ」「ん、うぇんてぃくん?」「そうだよ、お母様、もっと見せて」「うん」
ご機嫌なカーヴェに笑顔のウェンティ。ウェンティの正体については語るに落ちるとして、と旅人は食事をしながら言った。
「とりあえずモンドではウェンティがカーヴェを守ってくれてたんだね」「まあね。お母様は無茶ばかりするから大変だったよ。ボクは大したことはできないし、そもそもトワリンに残ってた後遺症まで治してくれたし、なんかもう、流石はお母様だね」「モンドの宿はどこにしてるの?」「ボクの顔見知り。安宿がいいって言うからなるべくそれっぽいところを選んだよ。安全はボクが保証するからね」「そうしてね。ナヒーダも少しは安心すると思う」「いつでも名前出しておいてね。スメールからの催促すごいでしょ」「カーヴェはこれだけ飲んだら記憶無くしてるだろうし、言ってしまうとものすごく皆心配してるかな」「カーヴェは普段筆まめな癖に今回は手紙一つ出してないからなあ。連絡が来た!となったらリサとの連名で資料貸し出しの要請だったからな!」「まあ私としてもモンドはいいところだと思うから満喫はしてほしいよ。だから、カーヴェが居ると決めただけモンドに居させてあげてほしいな」
つまりは。
「これが栄誉騎士からモンドへの依頼だね」「頼んだぞ!」


翌日。カーヴェは旅人とパイモンの介抱により二日酔いは軽度で済んだ。二人がスメールに戻るので、それを見送ってから、さてと宿を出る。今日は図書館に篭ろうか。そう考えていると、ウェンティがやって来た。
「カーヴェさん!演奏できるよね?楽器なら用意したから!」「え、うん」
そのまま教会の広場に連れて行かれて、ウェンティとカーヴェはそれぞれ楽器を奏でた。バーバラが出てきて歌うので、さらに広場は盛り上がったのだった。

図書館に行くとリサが待っていた。そして笑顔で言う。
「モンドはいいところかしら?」
カーヴェは頬を染めた。
「とてもいいところですね。愛すべき自由の国です」
それこそが、モンドの全ての生き物への祝福であった。

- ナノ -