カーヴェ受け/ほのかなる甘さ/カントボーイのカーヴェの総受け/pixiv1500フォロワーお礼リクエスト企画作品になります。じゃりぬこ様、リクエストありがとうございました!
//恋愛感情があるんだか無いんだか、な出来です。総受け……?


 カーヴェの身体的特徴を端的に言うと、上半身が男性で、下半身が女性である。
 生まれつきなので、教令院でも隠しつつ、なんとかうまく乗り切ってきた。なお、下半身が女性ではあるが、子宮が未成熟で、月のものは無い。

「っアルハイゼン!」
「どうした騒々しい」
「言いながらノイズキャンセリングするな! また変な置き物買ってきただろ!」
「嵩張るものではない」
「嵩張るとか嵩張らないとかいう問題じゃない! 内装に合わないって言ってるだろ!」
「それより、きみ、支度はいいのか」
 ああそのこと。カーヴェはころりと切り替えて言う。
「荷造りはできてる。旅人の洞天に泊まり込むことは前にもあったからね」
「ならいい。今日の夕飯は?」
「用意してるよ。シチューを煮込んでる」
「そうか。夜は早く休んでおくといいよ」
「うん」
 カーヴェは頷いて、たったかと夕飯の仕上げに向かった。

 明日からしばらくの間、カーヴェは旅人の洞天で家具作りに協力するという依頼があった。報酬は出すよと旅人の少年は眉を下げていた。前にも同じようにまとめて家具を作ったので、カーヴェは何ら構わない。報酬をもらうほどなのかと首を傾げたが、アルハイゼンが絶対に報酬をカーヴェに押し付けろと旅人とパイモンに念押ししていた。信用がないことに信用がある。

「いらっしゃい、カーヴェ」
「いらっしゃいだぞー!」
「やあ、特に模様替えなどはしてないね」
「うん。部屋は前に使ってもらったところ。ええと、これは作ってもらいたい家具のリストで、本当に申し訳ないけど秘境を回らないといけなくて」
「そうなんだね。空いた時間に食事でも作っておこうか?」
「いいのか?!」
「その分も報酬出すから、頼めるかな……何人かに頼み込んで、壺に泊まってもらって周回してるんだ」
「へえ、誰がいるのか聞いても?」
「ええと、固定はしてなくて、バラバラなんだ。余裕がある量を想定してくれると助かるよ」
「分かった。たっぷり作っておくから、頑張っておいで」
「ありがとう」
「ありがとな! じゃあ行こうぜ、旅人!」
 そうして秘境へと乗り込んでいく旅人とパイモンを見送った。

 カーヴェはさてと家具を作る。マルと世間話しつつ、リストにあるものを作成していく。
「やあ、カーヴェさんおはよう!」
「あ、タルタリヤくん。おはよう。あなたも来ていたんだね」
「まあね。任務の合間に休暇を取ることになって、ここならいつでも秘境に駆り出してくれるし」
「そのわりに、今ここにいるね」
 首を傾げると、タルタリヤはきょとんとした。
「だってカーヴェさんがいるじゃん」
「……僕は強くないよ?」
「知ってるよ。能力は便利だと思うけど」
 開花で回復するもん。タルタリヤは、いいなあと拗ねる。カーヴェは家具のセットが終わって、時間待ちの間に、部屋に向かうことにした。
「タルタリヤくんが嫌じゃないなら、おやつを作ろうか?」
「え、何?」
「バクラヴァは甘すぎるかな」
「いいよ。カーヴェさんが作ってくれるおやつ、好きだから」
「ありがとう」
 そうして荷物を持ったカーヴェの手から、するりとタルタリヤは荷物を手にした。
「運ぶの手伝うよ」
「あ、ありがとう。いいのに」
「俺がやりたいの。で、部屋はどこ?」
「前に泊まった時と同じなら、二階の一番奥かな」
「そこかあ」
 とんとんと二人で歩いて、部屋の扉を開く。タルタリヤに荷物を置いてもらって、カーヴェは軽く荷解きする。事前に掃除しておいてもらえたようで、カーヴェは良かったと安堵した。
「ねえ、カーヴェさん」
「なんだい?」
「カーヴェさんって欲しいものとかあるの?」
「欲しいもの? 急に言われても思いつかないな」
「料理作ってもらうなら、お礼がいるかなって」
「そんなの気にしないでおくれ。旅人が報酬を出してくれるから」
「モラじゃ、埋もれるか……」
「どうかしたのかい?」
「いや、何も! 何かあったら助けるよ。だから、いつでも声をかけてね」
「そうするよ」
 カーヴェがまたマルの元に向かうので、タルタリヤは一旦鍛錬するからと別れた。

 昼食を作り終えて、カーヴェはさてとマルに声をかける。
「洞天の中にいる人たちを集められるかい?」
「できますよ。食堂ですか?」
「そう。お昼ご飯さ」
「では通達しますね」
「これはマルさんの分だよ」
「わあ、ありがとうございます」
 かくして、食堂に人が集まった。
 オードブルのように好きなものを食べてもらうことにして、カーヴェは昼食を摂る。もぐもぐと食べていると、隣はいいかと声をかけられた。
「んぐっ、鍾離さん?」
「ああ、そうだ。久しぶりだな」
「お久しぶりです。鍾離さんは秘境では、」
「休憩をくれたのだ」
「お疲れさまです」
 カーヴェの言葉に、大したことではないさと鍾離は言う。だが、顔には疲労が見える。料理で少しでも元気が出るといい。カーヴェはちまちまもぐもぐと食べる。
 鍾離は料理が気に入ったようで、夕飯も楽しみにしていると微笑む。カーヴェは家庭料理のようなものですよと返事をした。
「鍾離さーん!」
「ああ、堂主。何故ここに?」
「周回の休憩! ちょっと向こうに呼ばれてるよ」
「旅人か、分かった。カーヴェ、美味しかったぞ、ありがとう」
 食べ終えた食器を返しがてら、すたすたと旅人の元に向かう鍾離を確認して、胡桃はさてと口にした。
「カーヴェさん、久しぶり。それで、体調は?」
「大丈夫だよ、胡桃さん」
「もう、みんな心配してるんだよ。旅人の洞天は男性が多いから」
「そう言われても」
 胡桃はカーヴェの体を知る人である。旅人と仲の良い女性の何人かは、カーヴェの体について知っている。何故かと言うと、女の勘が働くらしい。カーヴェには分からない。
「部屋の中に男の人を入れちゃダメだからね」
「心配性だなあ」
「とにかく気をつけて!」
「うん。分かったよ」
「堂主」
「あ、鍾離さん! カーヴェさんを守ってね!」
「うん? 分かった」
「分からなくていいですよ?!」
「じゃあ行ってくる!」
 胡桃がぱたぱたと旅人の元へ向かう。鍾離は少し休憩だそうだ。

 カーヴェはまた家具をセットして、屋敷の中を掃除、点検する。洞天の中とはいえ、旅人とその仲間たちが長く使ってきた場所だ。傷む場所も当然ある。あれこれと様子を見ていると、やあと声をかけられた。
「ガイアくん、こんにちは。久しぶりだね」
「ああ、久しぶりだな。カーヴェさんはまた家具を作りに来たのか?」
「そうだよ。ガイアくんは周回のお手伝いかな」
「そうだな。ここにいると各国要人が集まるから連絡事項がある時に助かる」
「え、何かあるのかい」
「今は何もないぜ。あえて言うなら、カーヴェさんがここにいる」
「僕なんかがニュースにはならないだろうに」
「カーヴェさんは人がいいからな」
「そうかい? 普通だよ」
 ははと笑うカーヴェに、ガイアはそういうところだなと苦笑していた。

 夕飯もいくつか作って、各自で食べてもらう。旅人に家具の作成状況などを報告して、カーヴェの部屋だけ増築してもらったバスルームでシャワー浴びた。これは女性たち連名での希望だ。旅人はカーヴェの体のことを知らないので。
 バスルームから出て、ケアをしてから寝間着を着る。寝るまで仕事関係の読書でもするかと机に向かうと、トントンとノック音がした。
「はい、居るよ」
「こんばんは、夜分にすまないね」
「ディルックくん?」
 どうしたんだいとカーヴェは目を丸くした。
「明日は早くから秘境に行くらしいんだ。カーヴェさんは朝食を無理せず休んでて、だそうだよ」
「ああ、もうこんな時間だからね……徹夜ぐらい平気だけど」
「ちゃんと寝たほうがいい」
「そうだね。おやすみディルックくん。伝えてくれてありがとう」
「ああ。おやすみ」
 そうしてディルックが去るのを見てから、カーヴェは扉を閉めた。

 早朝。カーヴェは起きて、朝食を作った。旅人はとてもありがたがって、秘境探索メンバーも喜んでくれた。カーヴェが言うことを素直に聞くと思ったら間違いである。

 家具作りの休憩中に昼寝をする。ふわふわと寝ていると、七七ちゃんがとてとてと歩いてくる音がする。白朮さんがふわりと上掛けをかけてくれた。
「ん、ありがとう、」
「あまり無防備に寝ていてはいけませんよ」
「七七が、はこぶ」
「そうですねえ、カーヴェさんはそれでよろしいですか?」
「七七ちゃんに悪いよ」
「そんなこと、ない。はこべる」
「こう言ってますし」
「うん、わかった……」
 よいしょと声を出した七七と白朮の手で、カーヴェはリビングのソファから、与えられた部屋のベッドに移動したのだった。

 カーヴェが目覚めると夕飯の支度を始める頃だった。マルの元で家具のセットをしてから、手早く料理を作り上げていく。二人暮らしではこんなに大量の料理を作ることがない。大変だが、面白い。

 あれこれ作っていると、美味しそうですねと声がかけられる。綾華と綾人とトーマだった。
「ありがとう。もうすぐ食べられるよ」
「わあ、楽しみです」
「目でも楽しめる料理ですね」
「工夫してるな! 手伝うことはあるかい?」
「大丈夫。こうやって経験を積んでいるようなものさ。料理人になりたいわけではないけどね」
 苦手なものは食べなくていいからね。カーヴェが笑えば、三人はゆるゆると表情を緩めた。

 夜になると、部屋のシャワーを浴びた。明日はバスタブに湯を張ってもいい。ふわふわと考えながら髪を乾かした頃。ノック音がした。
 誰だろうと扉を開く。鍾離だった。
「こんな時間にすまない。少しいいだろうか」
「構わないけど……どうかしましたか」
「旅人が、宵宮の花火の試し打ちに洞天を提供したので、音がするぞ」
「え、わあっ」
 ひゅうるる、どん。花火の音だ。鍾離が手を掴む。
「さあ、行こう」
「鍾離さん?!」
 抱き上げられて、すたすたと運ばれる。歩けますと言うものの、鍾離は聞き入れない。カーヴェは軽いなとのんびりしていた。

 屋敷の外、物陰。花火がよく見える穴場らしい。ひとつひとつ確かめるように上がる花火に、カーヴェは目を奪われた。きらきら、美しい。
 ほう、と眺めていると、鍾離が言う。
「花の火であり、夜の花とも表す」
「はい」
「願いそのものだ」
「はい」
 俺はな。鍾離はカーヴェの手を包む。ふっと、カーヴェは鍾離を見上げた。
「貴殿が幸いであればいいと思う」
「……素晴らしい、祝福です」
 ありがとう。カーヴェがそう微笑むと、鍾離は嬉しそうに笑った。

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