R15/甘い宿/カーヴェ総受け/pixiv1400フォロワーお礼リクエスト企画作品になります。カンザケ様リクエストありがとうございました!
※キス表現があります。綾人→カーヴェ、タルタリヤ→カーヴェ、鍾離→カーヴェ。


 カーヴェはしばらく旅人の洞天に泊まることになった。
 ここは気が狂ってしまいそうなんだけどな。
 苦笑つつも、アルハイゼンは教令院の一室に泊まり込むと聞いて手を合わせた。南無。カーヴェは仕事のための環境がないと、仕事にならない。旅人と相談して、彼の洞天にアトリエを設けたわけである。

 本宅とは別の、スメール式の小さな家。カーヴェはそこでせっせと日々を過ごす。カーヴェ一人しかいない家だが、本宅には旅人とパイモンと、旅人が招いた仲間たちとやらがいて、カーヴェのアトリエによく訪ねてきてくれた。もちろん、彼らは仕事の邪魔をすることなく、カーヴェを支えてくれた。
「カーヴェさん」
「ん? やあ、ディルックくん! 寄り道かい?」
「うん。これはお土産だよ」
「レーズンの、バタークッキーか? 美味しそうだ。コーヒーを淹れよう」
「休憩してもいいのかい?」
「仕事は滞りなく進んでるからね。あと、少しは休めばいいって皆に言われてるから、この仕事を片付けたら休暇を取るつもりさ」
「そう……それは良かった」
「ディルックくんこそ仕事だらけだろう? しっかり休むんだよ」
「ありがとう、カーヴェさん」
 ディルックにコーヒーを渡すと、二人でテーブルを囲む。最近のモンドについて話を聞き、あれこれと意見を交わす。ディルックに知恵を授けることに、カーヴェは躊躇わない。彼はいい人だからだ。
「休暇はいつからなんだい?」
「一週間後ぐらいかな」
「じゃあ一週間後にまた来るよ」
「いいけれど、何かあったかい」
「カーヴェさんに会いに来たくて」
「ふふ、そういうことは娘さんに言っておあげよ」
「カーヴェさんだからだよ」
「ありがとう」
 ディルックはそれじゃあと帰って行った。


・・・


「カーヴェさん、おはようございます」
「あれ、綾人さん。こんな時間に珍しい。久しぶりだね」
 夜にやってきた綾人を迎え入れる。仕事の後なのだろう。カーヴェさんは深く知らないでほしいと希われたので、カーヴェは察しつつも、彼らに何も言わなかった。
「風呂なら入れるよ。さっき沸かしたんだ」
「一番風呂なんて、」
「構わないさ。ほら、清潔にしておいで。着物はいつもの浴衣かな」
「すみません。泊まらせてもらえますか」
「もちろん。浴衣は元々寝間着なんだろう」
 綾人を風呂に送って、床の汚れを拭き取ってから、浴衣を取りに行く。ゲストルームは二つある。稲妻式とモンド式の二種類で、スメール式はカーヴェの寝室だ。なお、カーヴェの書斎はそれらの奥にあった。
 稲妻式のゲストルームにある浴衣を運ぶ。
 脱衣所に入って、置いておくよと声をかけた。
 小さなリビングでホットミルクを飲んでいると、綾人が髪までしっかり乾かして、戻ってきた。
「お風呂ありがとうございます」
「構わないよ。好きなものでも飲んでいて。ああ、それだけ疲れているのだから、酒はやめておいた方がいいね」
「ふふ、そうですね」

 カーヴェが風呂から出ると、綾人は冷たいジュースを飲んでいた。ラズベリー類のジュースらしかった。
「カーヴェさん。共寝してもらえませんか」
「添い寝かい? 構わないよ」
 カーヴェには綾人の仕事を察することしかできない。きっと厳しいものだろう。カーヴェは僕で良ければと、稲妻式のゲストルームに二人で向かう。布団を一組だけ敷いて、綾人に引き込まれるように同じ布団に入る。そのまま抱きしめられて、すり、と首筋に額を擦り付けられた。
「綾人さん?」
「綾人でいいですよ、カーヴェさま」
「ええ、急にどうしたんだい」
「いいんです。少しぐらい、夢を見させてください」
 ぺろりと首筋を舐められて、耳元をくすぐられて。くすくす笑うとキスされる。唾液を混ぜ合わせ、カーヴェを喰らわんとするそれに息が上がる。
「ふ、あ、綾人さん、だめ……」
「はい、ここまでです」
「うん」
「口吸いする友達だっているんでしょう?」
「さあ……僕は、あんまりちゃんとした友達がいなかったから」
「私も同じですよ」
「そうなのかい」
「ええ、ですからカーヴェさまが初めてです」
 綾人は微笑んで、また深い深い口吸いを仕掛けたのだった。

 朝になると、カーヴェは綾人に抱きしめられていた。体格も背丈だけですらも、綾人の方が大きい。神の目の扱いも慣れていた。カーヴェは息を吐いて、メラックに綾人が起きたら諸々の案内をと頼んだ。カーヴェは温かい人肌に擦り寄って、二度寝した。今日は打ち合わせなどもなかったので。


・・・


 とことこと人がやってくる。
「やあ、カーヴェおにーさん」
「タルタリヤくん、君多忙なんじゃ、」
「これはお土産ね」
「わ、ギモーヴ。コーヒーを淹れるよ」
「それよりおにーさんを食べたいな」
「大人をからかわないの。コーヒーにミルクは入れるかい」
「カーヴェさんに合わせるよ」
「そうかい?」
 カフェオレを作って、タルタリヤと向き合ってリビングの椅子に座る。
「カラフルだし、果物の味がするから、好きそうだなあって」
「うん。色も味も好きだよ。ふふ、筒抜けだ」
「一緒に寝てもいいぐらい?」
「添い寝ならいいよ」
「キスは?」
「うーん」
「あ、許したんだ」
「秘密」
「じゃあ俺もいいよね」
「まあ、キスぐらいなら友人でもするし」
「カーヴェおにーさんがそう言うならするかもね」
「うう、違和感ぐらいはあるよ」
 カーヴェか視線を落とすと、かた、と椅子の音がした。
「じゃあ、キスしようか」
 タルタリヤが体を近づけていて、顔が近くて。
「あ、」
 ちゅ、と下唇を吸われて、舐められて。そのまま深いキスになる。綾人とは違う、やや強引で、強気なそれに、カーヴェはなんとか呼吸をしてついていくしかなかった。
「ふ、あ、たる、たりや、くん、んっ」
「あはは、とろとろだね」
「も、やだあ」
「もう少しがんばろっか」
「あう、んんっ」
 タルタリヤはカーヴェの隣に立つと、上から覆い被さるようにカーヴェをキスで溺れさせた。


・・・


 カーヴェが休暇を始めると、ガイアが酒を持参して訪ねてきたり、コレイとアンバーがお菓子作りを教えてとやってきたりした。アルハイゼンは来ないが、セノとティナリは顔を出した。
 そして、数人の大人はカーヴェとのキスを楽しんでいく。その先は旅人から禁止されてるんだぞと、カーヴェがくたくたになるまでキスをした鍾離が、耳に息を吹き込むように教えてくれた。
 安心なのか、何なのか。カーヴェはまあ気持ちいいならいいかと、刹那主義気味かつ楽観的に考えていたのだった。

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