鍾カヴェ/🔶🏛/恋する花人・プロローグ/🌸神関係者🏛(🌸神≠🏛)


 夢を見る。かつての花の匂い。優しくて甘くて、尊い匂い。刹那と芸術を愛したその友は、自らの薄命を受け入れていた。それが信条だからなのか。それが、花たる彼女の最たる特徴だったのか。ただ、より親しき友のために、彼女は消えた。
 死んだのだ。モラクスは、鍾離は、思う。あの友はもういない。

 洞天。主たる旅人の蛍とカーヴェが話していた。
「永遠に残る建築を造りたいなとは思うよ」
「そうなの?」
「人間はいつか終わる。建築は、残る。使った材料の耐久年数はあるけれど、それでも人に比べたら半永久的だ」
 永遠を望みながら、カーヴェは、生き物の儚さを知っている。薄命を、知っている。
 彼からは、よく似た匂いがする。懐かしくて、泣きたくなるような、楽園(天上世界)の匂いが、する。

 鍾離は遠くからカーヴェを見つめる。そのうち、話せたらいい。だから今は、ただ、その匂いの懐かしさに浸れたらいい。鍾離はそっと目を閉じた。

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