R15/ショウ×カーヴェ/安らぎの形2/捏造/旅人(空)→カーヴェの要素を含みます。

※ショウ×カーヴェ
前作の続編です。

※R15ぐらいです。

※捏造
捏造しかない。何もかも全てが幻覚。

※概念ショタおねです。

※またしても何も知らないカーヴェくんです。
実装前幻覚です。

友情出演
旅人(空)


・・・


 その日も、カーヴェは普通に何事もなく過ごしていた。最近は熱が出たりふらついたりするので、仕事を整理して休暇を作っている。家事を細々とやりながら、体を休める日々である。医者にも原因不明とされ、せめてもと栄養を補うサプリメントを処方されるぐらいだ。
 で、そんな日に彼は来た。
「カーヴェ、おはよう」
「おはよう、ショウ君。なんで窓から来たの?」
 玄関から入ると、アルハイゼンにバレる。ショウはしれっと言った。
 カーヴェの自室の窓は大きい。なんの苦もなく、するりとショウは入る。
 椅子に座って友人たちへの手紙を書いていたカーヴェは、一応手紙を伏せて、ペンを置いた。
「それで、今日もお菓子かな」
「カーヴェの体を治しに来た」
「はいはい。クッキーがいい? マフィンも作れるよ」
「あまり動かない方がいい。覚悟を決めろ」
「いや、覚悟っていうか。ショウ君、ちなみに何するつもり?」
「抱く」
「却下だよ」
「何故だ。確実に治るというのに」
「一応、少しずつマシになってるよ」
「肌が触れ合うだけでいいのだが」
「前言を思い出して。何の信用もないよ」
「むう」
 とりあえずと、カーヴェはショウをリビングへ連れて行った。不満そうだが、無理なものは無理なのである。

 マフィンを作る。計量し、混ぜ合わせる。テキパキと作るのを、ショウが後ろから見ている。興味深そうにカーヴェの後ろ姿を見るショウは、幼い姿と変わらないなと、カーヴェは微笑ましくなった。
 オーブンで生地を焼いている間、ふと思う。
「ショウ君って何歳ぐらいなの?」
「知りたいのか」
「外見年齢は十六才ぐらいかな? 旅人とそんなに変わらないよね」
「長生きしているが」
「うーん、それを裏付ける証拠がなあ……確実に僕が捕まるから手を出さないでね」
「お前が我に食事を与えたのにか」
「鳥だと求愛行動の一つだけどね、僕らは人間の形をしているんだから」
「我も何か渡そう。今度は土産を持ってくる」
「ああ、そう……」
「婚姻はいつにする?」
「結婚しないよ?」
「むう」
 幸いなことに、ショウはカーヴェと外出したりはしない。なので奇妙な目で見られることもない。ただ、そもそもショウと再会してから、カーヴェはろくに外に出ていないが。
 それでも、隙さえあればべたべたと引っ付くショウに、カーヴェなりに危機感を覚えていた。小さな姿を見ている。短期間だが、育てたようなものである。そんな子どもに、じいと情欲の籠った目で見られて、倫理観の重要性と危機感を覚えない方がおかしい。
「そもそも、ショウ君のそれは多分刷り込みのようなもので」
「我は長く生きているが」
「うーん、話が噛み合わない」
「まふぃんはもうすぐか」
「まだ少しかかるよ」
「では我が近づいてもいいか」
「駄目。キッチンは危ないからね」
「そうか」
 カーヴェはコーヒーを淹れる。ショウはミルクコーヒーが好きらしいとは、最近知った。あまり頓着していないようだが、僅かに表情が柔らかくなるのだ。
「カーヴェ、こっちに来い」
「はい、コーヒーね」
「そふぁに座れ」
「落ち着いてね」
 コーヒーマグを机に置いて、ソファに座る。しっかり距離を置いたが、ショウはずいと近付いてくる。
「近いよ、ショウ君」
「布団で共寝したのにか」
「うん、子どもだからね」
「我は子どもではないが?」
「今はそう思うから怖いかな」
「怖いのか?」
「貞操の危機を感じるんだよ」
「我はいつでもお前を抱けるが」
「やめようね。犯罪だよ」
「我は子どもではない」
「見た目はしっかり子どもなんだよ」
「だったら共寝すると?」
「分かってて言ってるよな? もう一人で眠れるだろうし、体の成長とかの理由もないし」
「理由があればいいのか」
「駄目」
「そうか」
 そのまま近づいてくるショウに、マフィンが焼ける音がした。するりと抜け出して、マフィンをオーブンから出してケーキクーラーに並べる。不満そうな気配がするが、気がつかないふりをする。
 そもそも、カーヴェにとって、ショウとの関係はあの夢の中だけで完結していた。ショウとしてはそうではないようだが、現実と夢は違う。あの夢の中で認められた関係であっても、現実では認められない。未成年と関係を持つなど大人としてあり得ないのである。
 いや、本人曰く、子どもではないらしいが。
「カーヴェ」
「わっ! ソファに居てくれよ!」
「しかし、いくら許可を得ようにも、お前は心を決められないらしいからな」
 背後から腹を撫でられる。うなじに、唇が当てられ、ちうと吸われた。絶対に、キスマークがついた。カーヴェはくらりと目眩いがした。
「だから、ダメだって!」
「嫌だ」
「なんでそんなに僕にこだわるのさ!」
「我を愛したのはお前だ」
「でも、あれは、不可抗力っていうか」
「それでも我を愛したのはお前だ」
 ショウのほんとうを知らずに、ただのショウとして愛した。その事がどれだけ得難いことか、お前には分からないだろう。
 そんなことをショウは言った。確かに、カーヴェにはそれがどれだけ特別なのかが分からない。
「すぐにでも洞天に連れて行って無理矢理組み敷くこともできるが?」
「やめておくれ、本当に」
「それを尊重している。ただ、あまり目に余るようならいつでも攫うつもりだ」
 目に余る、とは。カーヴェは目を白黒とさせた。
「お前は我の番だ」
「ち、違うよ、落ち着いて。あ、う、お腹、撫でないの!」
「子宮を作るか……」
「何恐ろしいこと言ってるのショウ君??」
 とりあえずマフィンを食べようと、カーヴェは言った。するりと、名残惜しそうに撫でながら、ショウの手が離れていった。

 マフィンはブルーベリーを入れたものだ。ショウはもごもごと食べている。ちゃんと食べているので、きっと不味くは無かったのだろう。作って良かったとカーヴェは思った。
「カーヴェ、家主はいつ帰ってくる?」
「いつも通りなら定時だね。それがどうかした?」
「それまでは二人きりか」
「待ってやめよう。あまりそう言うことを言わないでくれ」
 ショウはマフィンを食べ終わって、ミルクコーヒーを飲む。そして、言った。
「今日こそお前に触れて、少しでも回復させたい。できれば体を暴きたいが、手を繋ぐぐらいで我慢しよう」
「わあ、ありがとう……」
 カーヴェは遠い目をした。
 ショウが近寄ってくる。隣に座って、右手に重ねられて、ゆっくりと指を絡められた。ぞわりと背筋に何かが走る。すりすりと、ショウは指を使ってカーヴェの手を愛でている。恥ずかしくて、カーヴェは目を閉じた。ふ、と、笑う声がした。
「目を閉じていいのか」
「え、」
 手を絡ませたまま、ショウがカーヴェを押し倒した。その目に、カーヴェはさっと顔を赤らめた。視線とは、雄弁である。明らかな独占欲、性欲、情愛に、体が火照る。
「やめてくれ、やだっ」
「好きだ」
「あ、う、」
「お前が好きだ。愛してる。我の番」
「ちが、う、え、なに?」
 ショウがカーヴェの下腹部を触る。ゆっくりと撫でて、トップスを上にあげて、素肌に触れる。ショウの手がじっとりと下腹部を撫でたかと思うと、ぽわ、と温かくなった。
「あったかい……」
「少し力を注いだ。気持ちいいか」
「ん、きもちいい……」
 とろんと声が甘えたものになるのをやめられない。弱った体に、ショウの優しい手が心地よい。カーヴェはお酒を飲んだようにふわふわとしていた。
 そんなカーヴェにショウは僅かに笑む。
「まだ何もしない。だから、触れることを許せ」
「は、ん、わかった……」
 すり、すり、とショウの手がカーヴェの下腹部を撫でる。なんでそこなんだろう。カーヴェは頭の隅で思ったが、注がれる"何か"に意識がとろとろと溶けていく。まだ少年の色を濃く残す手は、それでもしっかりと武人の手だった。
「カーヴェ」
 呼ばれて、ショウを見る。目と目が合うと、顔が近づいた。軽く、唇が触れ合う。そのまま唇を食まれて、ちうと下唇を吸われて、開いた口に舌が入り込んだ。舌が口内を刺激して、唾液が溢れる。二人分の唾液を、カーヴェは、こくん、こくんと、何とか飲む。それでも垂れた唾液はショウが舐めとった。
「ショウくん、あったかい……」
「ああ、そうだな」
 ショウが笑っている気がする。カーヴェは微睡のような意識の中で、そっと彼の頭を撫でた。
「いい子、ショウ君はいい子だね」
「そうか」
「優しい子、きっと幸せになれるよ」
「我はお前と居られればそれでいい」
「ふふ、僕からは離れていいのに、っあ」
 ぐい、と下腹部を押される。肌と手が触れ合って、温もりと共にピリッとした感覚がした。
「我は離れない」
「う、あ、ショウ君、なに、これ」
「恐ろしいことは何もない」
「ん、分かった……」
 とろとろと思考が溶けていく。考えがまとまらない。温かくて、心地が良い。あれ、なんかさっきキスしたような。
「カーヴェ、口を開けろ」
「あ、あー」
 口を開くと、ぱくりと食べるように口付けられる。下腹部をゆっくりと撫でられながら、深い口付けを受けた。ぴちゃぴちゃと唾液をかき混ぜられて、流されて、こくん、と飲む。経験した事のない快楽に涙が滲んだ。
「お前は経験が無いのか」
「ふあ? ん、ないけど……?」
「そうか。我が最初か」
「そうかも……? いや、しないから、ね?」
「ああ、今日はな」
 また口付けをして、唾液を飲まされて。下腹部をじっとりと撫でられては、たまにきゅっと押されて。不規則なそれらに翻弄される。
「ん、ん、ショウ君、もう、つかれたあ」
「そうか」
「あっ、お腹、押さないで、」
「下準備だからな、耐えろ」
「んんっ、ぴりってする……」
「痛いか」
「う、平気、だよ」
「分かった」
 そっとショウが離れる。カーヴェはソファの上でぐったりと脱力していた。唇が腫れている気がするし、下腹部は何だか温かい。これは何なのだろう。カーヴェは内心で首を傾げた。
「まふぃんを食べてもいいか」
「うん、好きなだけどうぞ。僕、少し寝るから」
「そうか。我はここにいる」
「ん、ありがとう、ショウ君」
 すうっと、カーヴェは眠りについた。


・・・


 気がつくと、ショウがカーヴェを抱き抱えていた。とんとんと軽く歩き、カーヴェの寝室に入る。ベッドの上に優しく寝かせられて、ショウは隣に寝転んだ。
 そして、そのままカーヴェに抱きついて、頭から足の先までしっかりと絡めて、眠る。カーヴェはやや浮上した意識を、また深く沈めた。


・・・


 夕方。アルハイゼンが帰ってくる頃だろう。カーヴェは起き上がる。ショウが来ていたが、もう帰っただろうと考える。相変わらず甘えたがりなのか、何なのか。よく分からないが、大人である自分がもっと自制しなければと、カーヴェは記憶に蓋をした。
 さて、夕飯は何を作ろうか。


・・・


「ショウは何でカーヴェが好きなの?」
 旅人の洞天。戦闘を終えて、夜食にと杏仁豆腐を食べていた二人の間に沈黙が落ちた。
「……好き、か」
「違うの?」
「いや、それもある」
「あるんだ。他には?」
「愛している」
「熱烈!」
「番にそう思うのは普通だろう」
「人間は普通、番とか言わないけどなあ」
「我は人間ではない」
「カーヴェは人間でしょ」
「知らん」
 ええ、と旅人は不満そうだ。
「俺もアピール頑張ろーっと。負けないからね!」
「既に我の番だ」
「そういう余裕な態度してたら俺が食べちゃうんだから!」
「そうか」
「あれ、焦らないの?」
「カーヴェは我を受け入れているからな」
「そうは見えないけど」
「表面と中身は違う。あれは確実に我を受け入れている」
 また会うのが楽しみだとショウが言うと、旅人はやけに楽しそうだねと苦笑したのだった。


・・・


 絶対に離さない。何があっても、どう思われていようと、二人で幸せになるために、離さない。一時の快楽などいらない。一時の安堵もいらない。長くを共にするために、ショウはカーヴェを離さない。

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