ショウ×カーヴェ/捏造/特殊な夢の話/ハッピーエンド/旅人(空)→カーヴェの要素を含みます。

※ショウ×カーヴェ
他に書いた作品とは何の関係もありません。

※捏造
捏造しかない。何もかも全てが幻覚。

※名前付きモブがいっぱい出ます。一覧は最後のページにあります。自分用メモなので読まなくて大丈夫です。

※名前付きモブ×名前付きモブのBL(未満)とGLとHLを含みます。

※ショウが一時的に金色の小鳥になってます。
特定の鳥にしたくなかったので金色にしました。
※ショタ化します。
※成長します。
※逆光源氏……?でもカーヴェは特に見返りを求めてません。タチが悪いやつです。

※またしても何も知らないカーヴェくんです。
実装前幻覚です。

※ハッピーエンド!!この先何があろうとハッピーエンドだ!!未来は絶対ハッピーエンド!!と思いながら書きました。結構きついシーンがあります。

友情出演
旅人(空)、パイモン、アルハイゼン


[newpage]


 揺られて、揺られて。次に目が覚めたら、カーヴェは木組みの天井が見えた。

 今は夏。ここは璃月の小さな村だ。自給自足で暮らす彼らに、カーヴェは命を助けられた。
 老若男女が揃った、小さな村は、他の村や町、港とも交易しているようである。婚姻なども他の村や町から迎えているようで、血が濃過ぎるようなこともない。外部との繋がりが多いので、道すがらに倒れていたカーヴェを快く助けてくれたのだ。
「おはようレールタさん!」
「おはよう、ユイ。今日も元気だね」
 ここで、カーヴェはレールタと呼ばれていた。何せ、カーヴェは気絶していて、一週間に及ぶ昏睡の果てに目覚めたのだ。その一週間の間、ユイという少女が中心となってカーヴェを世話したわけだが、何せ名前がわからない。ということで、仮にレールタという星の意味を持つ呼び方をされたのだ。
 どうして自分が星だと思ったのか。ユイに聞くと、ユイは道端で倒れているカーヴェを見つける直前に流れ星を見たのだという。

 だから、きっとこの人は星からの使者なのだ、と。

 カーヴェはリハビリとして村の労働を手伝っている。元々、神の目があってさえも体がそう強くない。すぐに体が動かなくなるが、カーヴェは懸命に皆の仕事を手伝った。
 元々筋肉がつきにくい体質なのだろうとは思う。カーヴェはそれでも骨と皮だけのような体からは回復した。
 それでも、カーヴェは恩返しに足りないと思う。与えられることにカーヴェは慣れていない。与えるばかりで、与えられたらどうしたらいいか分からない。際限も、制限も分からない。

 だから、カーヴェはしばらくはこの村で教室を開くことにした。教科書になる本をざっくばらんに集めて、教室の棚に置く。学習内容は個人で決めていい。個人の学習の手助けを、先生役であるカーヴェが行うのだ。

 スメールへは一応手紙を出したが、交易に積極的であれど、辺境の地ではあるこの村から、ちゃんとスメールまで手紙が届くかは分からなかった。

 村の子どもから若い衆、果てには老人まで。カーヴェの教室で学びたいことを自ら選び、学ぶ。まねぶが学ぶであるが、彼らはその真似の相手をカーヴェに見た。カーヴェはこう思う。他人とは鏡である。だから、他人を見れば自然と自分の悪い点も良い点も見えてるものだ。
「レールタさん、今日は何をなさいますか?」
「ユイは何がしたいかな?」
「わたしはいいんです! 午後から教室に行きますね。午前中は、ええと、畑で間引きをしないと」
「それは大変だ。僕は、午前中だけは、森に行こう。井戸の掃除だったね」
「はい。若い人たちがやることになってますね!」
「危険だから互いによく確認しよう」
「はあい!」
 ユイはそれではとカーヴェの服を置いて去っていく。カーヴェはこの村でよく着られている服を着た。といっても洋服だ。様々な文化が混じり合った結果、気楽な作業着は作りやすく洗いやすい洋服に落ち着いている。もちろん、各国各時代の伝統衣装もきちんと伝わっていた。

 何だか妙な場所ではあるが、恩はある。外との繋がりもある。カーヴェは楽観的に考えながら、毎日を過ごしていた。

 そんな日々の中で、カーヴェはユイを家に置いて、夜の散策に出ていた。夜警担当たちに声をかけて、差し入れにと鞄から飲み物などを渡す。そして、カーヴェは流れ星を見た。
 思わず走る。村の外、林の傍らに、金色の鳥が血塗れになって落ちていた。小さな鳥だ。カーヴェはさっと鞄から清潔な布を取り出して、包む。血も体もまだ温かい。間に合う。そう直感した。

「っユイ! 今から言うものを用意してくれるかい?」
「はい! レールタさん、お任せください!」
 カーヴェはユイと二人で住む小さな家で、金色の小鳥の救命活動を行った。
 金色の小鳥の容体が安定したのは二日後だった。出血は比較的早くに止まったが、血が足りなかったのだ。何とかして栄養のある果物の搾り汁などを与えて、まだ子どもと言っても大差ない金色の小鳥の世話をした。
 その間、カーヴェはうたた寝はすれど、本格的に寝ることはなかった。ユイが何度も変わりましょうかと提案したが、これはカーヴェがエゴで助けたのだからと言い聞かせた。つまり、自然の摂理に反したのだ。カーヴェはそれを受け止めなければならない。

 そして、容体が落ち着くと、カーヴェは二時間ほどではあるが、まとまった睡眠をとった。
「レールタさん」
「っ! チィ様か」
「はい。ユイから話を聞きました。今、粥を作っています。ろくに食べていらっしゃらないでしょう」
 チィは若い娘だが、異国で呪術や魔術や神学を学んだらしい。普段から何をするでもなく本を読み耽るチィだが、村の長としての発言権があるのはチィだった。
「金の小鳥はただの鳥ではありませんでしょう」
「そうだろうね」
「レールタさん。あなたは自然の摂理に反しました。そのことはエゴであり罪であり、罰が下る行いです」
「そうだね」
「ですから、この家を金の小鳥の住処になさい。金の小鳥が道に迷い、家を忘れても、レールタさんが導くのです」
「それは、」
「いいですか。レールタさんはいつか元の場所に戻るおひとです。では金の小鳥は? 現時点では何とも判断できません。わたくしが思うに。今のレールタさんへの罰として最適なのは、金の小鳥に住処を与えることです。わかりますね」
「これは僕だけの罪ではない、と」
「鳥は自由に飛ぶものです。そのためだけに、ありとあらゆるものを犠牲にした種です。骨は脆く、羽は軽く、腕も歯も失った。種によって変わりますが、大抵の鳥はそうでしょう」
「そうだね」
「この住処を鳥籠になさい。レールタさんと金の小鳥がもう一度飛ぶために、ここに居なさい。互いを認識した罪と、その罰をお受けなさい。とはいえ、別に帰る家がここになればいいだけなので、普段通りの生活ですが」
 くつくつと男のようにチィが笑うと、おゆうはんですよとユイが顔を出したのだった。ああ、本当にここの人たちは優しい。

 チィは夕飯を食べることなく、自分の家に戻った。チィは伴侶がいる。チィは若い女で、伴侶もまた若い女だ。名前はキナだった。キナは優れた狩人である。この村では生涯の伴侶となるのに性別も年齢も関係なかった。また伴侶ではなくとも、身を寄せ合って同じ家に暮らす人々がいた。そういう場所なのだ。

「レールタさん、金の小鳥さんは何をお食べになるのでしょう? 果物にしますか?」
「そうしようか。僕が用意するよ。ユイにも仕事があるだろう」
「もう、お粥のために山菜の漬物を出すぐらいですよお」
 そう言いつつもユイはテキパキと数種類の漬物を取り出して小分けする。カーヴェは蜜柑の皮を剥いて甘皮まで取ってやる。
 そうして小皿に乗せると、机の上に置いた。
 金の小鳥を寝かせている籠を見る。ふかふかの綿の上に白い清潔な布を敷き、金の小鳥を寝かせていた。その小鳥が目を開いた。ぱちん、と小鳥は瞬きをする。
「おや、起きたんだね。ごはんにしようか」
 カーヴェが慎重に籠を運ぶ。ユイが、まあと笑った。
 カーヴェが蜜柑の実を崩し、粒を金の小鳥に差し出した。小鳥はしばし迷ってから、ぱくりと食べた。こくんと飲み込んだ。嚥下能力は大丈夫そうだ。そんなカーヴェは安堵しながら言う。
「食べたいだけお食べ。金の小鳥、君の名前は何なのだろうね」
 その言葉に、小鳥は首を傾げた。
「我はショウと云う」
「そう、ショウ……ショウ君?」
「いま、小鳥さん、しゃべりましたね?!」
「我が口を聞けぬと何故決めつけた」
「お喋りしたことなかったからですよお?!」
「落ち着こう、ユイ。レンゲを落とすよ」
「もう! レールタさんは落ち着きすぎです。ええと、ショウさんでいいですかね」
「混乱してるよ。あー、ショウ君はどうしてここに?」
「我はただ璃月を見ていた」
「おやくめとかありますか? お仕事とか。わたしならこの家の維持です。レールタさんなら教師です」
「我は、」
 そこでショウの言葉が詰まる。カーヴェはすぐに分かった。
「記憶が混濁しているね」
「それは、レールタさんと同じですね」
「僕もこの村の近くで倒れるに至った経緯が分からないんだ。ショウ君も同じかもしれない」
「我は、やることがある。だが、それすらも記憶に薄い」
「困りましたね。またチィ様のところに行って相談しないと、です!」
「とりあえず、ショウ君はこの蜜柑を好きなだけ食べよう。ほら、どうぞ」
「自分で食べられる」
「絶対にむりですよ。体の大きさがむちゃです」
「……」
「不満そうだね。でも今は僕の手から食べてほしい。まだ怪我が完全には癒えていないのだから」
「……」
 ぱくり。ショウはまた蜜柑の粒を食べた。

 夜になるとユイとカーヴェは別の部屋で眠る。
 それはユイが望んだことであり、そもそもユイはカーヴェより早くに起きて早くに寝る習慣があったからだ。生活リズムが違うなら別の部屋の方が効率が良いです、とはユイの持論だった。
 カーヴェはすぐ近くにショウが乗る籠を置く。ショウは、我は眠くないと言いつつも、そこから無理に動こうとはしなかった。
「ショウ君は寝られそうかい」
「起きたばかりだ。眠くなるわけがない」
「それもそうだね。だったら、僕は眠るから、何かあったらすぐに呼んでおくれ。僕は飛び起きるから」
「親鳥のつもりか?」
「うーん、親鳥? 僕は人間だからよく分からないな。ただショウ君が心配なだけさ」
 おやすみ、そう言うとカーヴェは蝋燭の灯りを消した。


・・・


 次の日。カーヴェは籠を持って教室に向かった。ショウは周囲をキョロキョロと見ている。教室では既に数名が学習していた。全員が、カーヴェに気がつくと、おはようございますと挨拶をした。
「今日からショウ君も一緒に居るけど、気にせずに学んで欲しいな」
「我は邪魔か?」
「そうじゃないよ。ああほら、アマネ、ショウ君を見てたら勉強の時間が消えてしまうよ」
「はあい」
 少女のアマネはせっせと算盤を用いた計算に戻る。教室の奥で丸くなって寝ているのはミドという青年で、猫耳と尻尾を持つ。彼は午前中はこの教室が一番日向ぼっこに良い事を知っているのだ。双子の男児であるハクとコクは、ハクは植物の図鑑を紙にまとめて、コクは昆虫の図鑑を紙にまとめている。今日の学習は三名である。午後になるとまた変わるだろう。
 ショウはしばらくそれらを眺めてから、ぽすんと座った。足はだいぶ良くなったようである。カーヴェは安心した。そして自分の学習のために、カーヴェもまた璃月の書物を手にしたのだった。

 昼食の時間になると、ユイがおひるごはんですよと、教室にいる皆に声をかける。子供達はユイから笹に包まれた団子を受け取ると、好きな場所で食べようと散り散りになる。寝ていたミドも、団子を二人分受け取って、どこかへ向かった。仲の良いヒジリという青年の元に向かうのだろう。
「レールタさんはこちらの団子をどうぞ! ショウさんは今日は柚子にしますか? よく熟れてるので美味しいですよ!」
「柚子?」
「果汁を飲ませたことがあるよ。ひとつもらえるかい」
「はあい」
 ユイがよく熟れた柚子をカーヴェに渡す。カーヴェはショウから少し離れた場所で皮を剥き、薄皮を取り、実をほぐす。そして手に乗せて差し出した。
「どうぞ、お食べ」
「……そこまでされずとも食べられる」
「まだ皮が剥けそうにありませんよお」
「……」
 つんつんぱくぱく。ショウは小さな嘴で、カーヴェの手から柚子を食べた。

 午後の教室には老人のサノマエと、幼女のメメが学習に来た。サノマエもメメもカーヴェとショウに挨拶をして、勉強を始める。メメにはカーヴェがつきっきりとなる。まだ字が読めないのだ。それでもメメは耳が良く、聞き取りが得意であったので、勉強自体はできる。
 そうしてつきっきりになっていると、メメがくすくすと笑った。
「どうしたんだい?」
「ことりさん、おめめがするどい!」
「ショウだ」
「ふふ、しょうさんはレールタさんがすきなのね!」
「知らん」
「メメ、ちゃんとわかるもん!」
「ほら、メメ。次の問題に行こうか」
「はーい」
 臍を曲げたショウに、カーヴェは軽く頭を撫でてから、メメの学びを助けた。

 幼女のメメが疲れて眠った頃。老人のサノマエがさてねえと口を開いた。
「早めにショウさんをチィ様のところに連れて来な。今夜ならチィ様が夜更かしするはずさ」
「そうですね。サノマエさんは夜警ですか?」
「そうだなァ。ナカラと、このジジイが夜警だろう。まあ、今日は暇だな。何せキナ様が帰ってくる」
「だったらユイ達が忙しいね」
「若いもんは皆して肉を捌かねえとなあ。保存食作りをしねェと、冬の準備はいくらあっても足りねェさ。ま、賑やかだよ。賑やかなら、外の獣達も襲って来ねえ。悪意を持つ奴らも酒を飲んで寝るだろさ」
「今晩はチィ様の家に行きます」
「キナ様にも久々に挨拶しといでなァ」
 そうして午後の授業は終わった。

 夕方になるまでカーヴェは少し眠る。ショウもまた昼寝したようだ。カーヴェが目覚めると村は騒がしい。微かな血のにおいがしたが、嫌悪感がないのは、それだけ、捌いた人間に技術があり、捌かれた獣に苦痛がなかったことを意味する。ショウは不機嫌だったが、カーヴェはゆっくりと身なりを整えて、長老屋敷を訪ねた。

 屋敷にはチィがいる。何やら書き付けている。
「肉の分配です。ユイはたまに見誤りますから」
「僕はまだ何も言ってないよ」
「大きな独り言です。何かご用ですか」
「ショウ君が目覚めたんだ。様子を見てほしい」
「……ああ、ショウという名ですか。それはまた、難儀な。まあいいですけれど」
 チィは立ち上がり、スタスタと近寄ってくる。チィはタンクトップにスラックス、上着として肩に長い着物を羽織っている。動くだけで落ちないように、ビーズで作った紐がくくり付けてあった。このビーズ細工はチィの伴侶であるキナが作った物らしい。獣に育てられたキナが、唯一できる手芸がビーズ細工なのだ。
「ショウさん、あなたはどこまで記憶がありますか」
「……話す必要性が無い」
「分かりました。では、質問を変えます。名前は正しいですね」
「それは質問ではないだろう」
「なるほど、ではもう一つ。変化は唐突です。狭い籠からは降りていたほうがいい」
 そこでチィがスッと窓を見た。よっと、若い女性が入ってくる。キナだ。
「チィちゃんただいまー」
「おかえり、キナさん」
「また、変わった子だねー。風だよー」
「そうでしたか」
「どっかに目が落ちてるなあ。探しておくねー」
「お願いします」
「あとね、できれば星さんは鳥さんを籠から出してー、うーん。まだまだ飛べないねー。でもすぐ変わるよー。変わったら、切り替えができるかもねー村の中ならー」
「便利ですね」
「んー、寝てる時が一番怖いからー布団の上で寝た方がいいよー同衾っていうんだっけー?」
「キナさん、それはまだ考えてないと思いますよ」
「子どもだもんねーよしよしー」
「我に触るな」
「おおー爪がでかいー、大きくなるよー。"くいで"は少ないだろうねー戦うのが手っ取り早いかなーまだ怪我してるからだめだよー」
「我から手を離せ小娘」
「おおーボクけっこう背が高いのにー?」
 キナはにこにこと笑っている。確かにキナは男性並みに背が高い。全体的にふわふわとしているのに、力も動きも、村の誰よりも秀でた狩人だ。
 一方のチィは細身で背は低めの女性だ。だが、それを感じさせない威厳のある村の長である。
「とりあえず、籠はやめるとして、ショウ君をどうやって連れて歩こうか」
「肩に掴まれるのでは? 少し痛いですが」
「保護に、なめした皮を使っても良いけどねー。でもこの鳥さんなら痛くないように調節できるよー、ほら、鳥さん、できるよねー?」
「……子供扱いはやめろ」
「ええと、僕の腕とかでもいいんだよ。籠はダメらしいから……」
「手を出せ」
「はい」
 ショウがちょんとカーヴェの手に乗る。そして爪で少し手のひらを引っ掻いて、強さを確認してから、言う。
「肩に乗せろ」
「構わないよ」
 カーヴェが肩に手を寄せると、ショウが乗った。掴むので少しだけ爪が痛いが、気にならない程度だった。チィとキナが優しい顔をしていた。
「それなら平気でしょう」
「ちゃんと、寝る時も籠の外ねー」
「わかったよ」
「……」
「ショウ君、機嫌直しておくれ。この二人は村の長なんだから」
「どちらも嫌いだ」
 チィがくつくつと笑い、キナはアハハと笑った。

 かくして、その日の夕飯はモツ鍋であった。モツは足が速い。村人総出で大鍋で作ったそれを食べた。なお、ショウはよく熟れた蜜柑である。肉に興味はあまりないようだ。カーヴェもそこまで好むわけではないので、スープで栄養だけでもと飲んだのだった。

 風呂に入り、眠るためにユイが敷いてくれた布団に潜る。ショウは籠ではなく、カーヴェの枕元に座った。
「寒くないかな」
「夏だ」
「それもそうだね。僕は寝るよ、おやすみ、ショウ君」
「……」
 カーヴェは蝋燭を消した。


・・・


 翌日。カーヴェは、くあ、と起きる。そして、横を見て、ギョッとした。
「ええっ?!」
「ん……うるさい……」
「こ、声がショウ君だ?!」
 そこには三歳程度の男児がいた。
 駆けつけたユイも驚いていた。とりあえずショウはなぜか体に合わない大きな服を着ていたので、体に合ったシャツとズボンを着させる。靴なども合わせた。そして、カーヴェはショウを抱えて長老屋敷に駆け込んだ。
「チィ様! ショウ君が人間になったんだけど?!」
「……ああ、思ったより早かったですね。良かったです。世話が楽になりますよ」
「うるさい小娘」
「チィちゃんーなにー? あー鳥さんだー」
 ふらふらとキナが寄ってくる。そしてうりうりと男児のショウの頭を撫でると、ぽんぽんと叩いた。
「ほらこれー」
「あっそれ、」
「……我の神の目か」
「一晩探したんだよーねむいー」
「キナさんは休んでてください。さて、神の目を身につけてくださいね。ええと、レールタさんは草で、ショウさんは風ですか。神の目とは面白いですね」
「持っていないのか」
「私たちは基本的に持ってませんよ。授かっても、身につけはしません。ここはそういう村ですから」
「訳が分からない」
「外の方からすれば然うでしょう。では、ショウさんは引き続き、レールタさんと共に居てください。また成長しますから」
「えっ成長?!」
「レールタ、うるさい」
「キナさんが大体ええと、どのくらいだったか。とりあえず、もっと成長するはずです」
「ど、どうして? なんで?!」
「そういうもの、としか。まあ、元々はそちらの体だったのが、命を繋ぎ止めるために縮んでいただけでしょうに」
「そんな話聞いてないよ?!」
「聞かれなかったので」
「おい、小娘。我はどうしたらさっさと元の大きさになる?」
「伝えるべきではありません。そもそも、体に負担がある筈ですから、急に成長しようとしないでください。あと、必ずレールタさんと一緒にいてください」
「さっきから同じことばかりだ」
「繰り返すだけ価値のある言葉ということです」
 チィはそう言うと、朝食を食べて仕事に戻りなさいと微笑んだ。

 かくして、ユイが待つ家に戻ると、カーヴェとショウは朝食を食べた。ユイが二人のために用意したのは粥と果物だ。どうせなら、同じ物を食べたほうが良いのではとユイなりに考えたらしい。粥と果物は、ユイの中では胃腸が弱くても食べられる物、ということらしい。

「にしても、ショウさんはチィ様とキナ様がお嫌いなんですね」
「あれらは気に食わん」
「わたしはどうですか?」
「果物の見極めがうまい」
「ではレールタさんは?」
「……知らぬ」
「そうなのかい?」
「……」
 むすっとするショウにカーヴェは困り、ユイはくすくすと笑った。
「では今日もお仕事に行ってらっしゃいませ。わたしも村の仕事を手伝うので!」
「うん。じゃあ後はよろしくね。行こうか、ショウ君」
「歩ける」
「分かったよ」
 そうしてカーヴェとショウは教室に向かった。

 教室には猫耳青年のミドが昼寝していて、ハクとコクの双子の男児が勉強していた。遅れてカオルとハナという女性たちもやって来る。
 四名の生徒達を見ながら、授業が始まった。なお、その前にショウが小鳥から男児になった話もしたが、そんなこともあるよね、という反応であった。ここの村民達は本当に優しく、寛容である。

 授業が終わると、昼食を食べて、午後は散策をしようとカーヴェは決めた。ショウが外を気にしていたからである。
 とてとてと歩くショウに合わせて、カーヴェは昼食の団子を手に歩く。チィとキナの居る長老屋敷には近寄らず、村民たちの家を一つずつ訪ねては、カーヴェが挨拶をする。ショウは彼らをじっと見て観察していた。なお、ショウは相手が誰であれ、名乗ることだけは忘れなかった。
「そろそろお昼にしようか」
「我は向こうに行く」
「一緒に行こうね」
「我は子どもではない」
「体が小さくなってるんだっけ? うーん、でも今は小さいから一人は危ないよ」
「お前も一緒だ」
「あ、そこは決定しているんだね」
 ショウと並んで村の奥にある水路近くに行く。小魚が泳ぐ水路は澄んでいる。野菜を洗ったりするんだよ。カーヴェが伝えると、飲めるんだなとショウは目を細めていた。
「記憶が少しずつ戻っている気がする」
「そうなんだね」
「お前は違うのか」
「僕は村の近くで倒れてたこととか、その前後の記憶がないだけだね」
「なら、名は覚えているか」
 ショウがじっとカーヴェを見上げていた。その目に、カーヴェは、苦笑する。
「覚えているけど、伝えるのは何だか戸惑うな」
「何故だ」
「そのうち伝えるよ。僕に覚悟がないだけさ」
 目は真っ直ぐだ。視線は雄弁だ。小さなショウの視線はカーヴェの器を見極めようとしていた。

 水路の近くで魚を見ながら団子を食べる。食べ終わった頃に村人のタニという男性がやって来て、団子を包んでいた笹を回収してくれた。なお、タニ自身は、野菜を洗いに来たようだ。
 野菜洗い場は少し場所が高くなっている。なのでカーヴェがショウを抱き上げて、二人で覗き込んだ。
「トマトとキュウリと、ナス。あとはウリかな?」
「やたらと色がついている」
「今年は野菜の色艶がいいよな! 元気になるから二人ともたくさん食えよ!!」
「うるさい」
「はは、タニは何でもやっているね」
「ん? ああ、休んでるのは性に合わないだけだぜ? にしてもレールタさんもショウさんも細いからクスもメメも心配してんだ」
「誰だそれは」
「クスはタニの奥さんで、メメはタニとクスの娘さんだよ。メメには鳥の時に会ったね」
「ああ……」
 ショウはカーヴェの腕の中で遠い目をした。タニはニカッと笑う。
「ま、たくさん食って寝りゃいいさ!」
「違いないね」
「……ん」
 そうしてタニと別れて、カーヴェは家へと戻った。

 家の前に青年が二人居た。一人は猫耳と尻尾のあるミドで、もう一人は村の唯一の医者であるヒジリだ。
「レールタさん! ショウさんに異常があったなら医者である俺に連絡をください!!」
「あ、ごめんね」
「どうせ俺は頼りにならないですけど、医者はこの村に俺だけだし……」
「この医者は大丈夫なのか?」
「腕は確かだよ。僕の怪我もこの人が治したんだ」
「ヒジリ、二人が困ってるよ」
「俺なんかさあ、もうさあ」
「ヒジリが医者なんだから、がんばろーよ。あとヒジリの出す痛み止めはよく効くし」
「痛み止め?」
 カーヴェがきょとんとすると、ヒジリが説明した。
「それだけ急に体が変わってるんです。痛みがある筈なんですよ」
「……ショウ君、体、痛い?」
「別にこのぐらいは、」
「痛いんだね?!」
「平気だ」
「とりあえず触診するから家の中に入らせてください」
「オレは外で待ってるよー」
 ミドを外に、ヒジリとカーヴェとショウが家に入る。ユイは外出中らしい。ヒジリが布団を広げて、カーヴェがショウを寝かせた。
「膝と肘だけ確認します。ここ、どう?」
「別に」
「こっちは?」
「何も」
「……なるほど。チィ先輩を呼びますか」
「あんなのは嫌だ」
「俺も嫌ですけど?? チィ先輩めっちゃ怖いですし!」
「落ち着いて、ヒジリ」
「うう。反対側もみますね」
 そうして触診を終えると、ヒジリは青い錠剤を数えて小袋に入れた。
「毎朝、一錠、飲んでください。痛み止めです」
「要らぬ」
「レールタさんお願いします」
「分かったよ」
「……」
「あのですね、ショウさんはどうやら痛みに耐性があるようですが、普通なら起き上がれないぐらいに痛いと思います。だから、薬を一錠ぐらいなら飲んでください。怪しくてどうしても飲みたくないのなら、それはそれで良いです。俺は医者です。この痛みは成長痛のようなものなので、死にはしません。命に別状が無いのなら、これ以上強くは言いません。では、俺は失礼します」
「あ、うん。またね」
「……」
 ヒジリがミドと立ち去るのを足音で知る。布団の上のショウは、むう、と、不満そうだ。カーヴェは仕方ないなあと苦笑する。
「とりあえず、明日の朝から飲んでみようか」
「……」
 とても不満そうである。

 カーヴェが教室に置く教科書の整理をしていると、ユイが夕飯の支度に戻ってきた。ショウはぐっすりと寝ている。幼い体は体力が少ないのだろう。
 ユイは蕎麦打ちをする。夏ですからねと言っていた。
「素麺があれば煮麺にしたんですけど、冷たいお蕎麦にしましょう」
「助かるよ。料理名がひとつもわからないけど」
「レールタさんはちゃんとショウさんを見ててくださいね。私はおそばを作るので!」
 テキパキと蕎麦打ちをするユイの音でショウが起きる。カーヴェは額の汗を手拭いでぽんぽんと拭った。
「夕飯前に起こすから、寝てていいよ」
「むう……」
「僕ならここに居るから、辛かったら言ってね」
「……なら名を」
「それはまた今度」
「……」
 ジト目のショウにカーヴェは苦笑した。

 夕飯はざる蕎麦であった。麺類は食べやすいですからとユイは満足そうである。カーヴェは食べやすかったし、ショウもわりと食べていた。

 風呂に入ろうとして、そういえばとカーヴェは口にした。
「ショウくん、お風呂入るよ」
「ひとりでできる」
「流石に無理だろ。危ない」
「……」
「お二人でさーっと入って来てくださあい」
「あ、おい!」
「よし、行こうか」
 かくして、風呂は遂行された。

 布団に入る前にしっかりと髪を乾かした。ユイはもう部屋に入って寝てしまっている。カーヴェは布団に入った。枕元にショウが座っている。
「入らないのかい?」
「別にいい」
「おいで」
「何故だ」
「僕がショウ君を甘やかしたいからかな」
「……親鳥のつもりか」
「いや、だから僕は人間だから分からないし、そもそもショウ君も今は人間じゃないか」
「わかった」
 ショウはそろそろと布団に入る。そして、カーヴェの胸元にぴたりと額を寄せるので、その小さな頭を撫でる。撫で終わると、カーヴェは蝋燭の火を消したのだった。


・・・


 朝である。
「うぐっ」
「ん、成長したな」
「ショウ君これ何歳ぐらいかな……十歳ぐらい?」
「知らん」
「流石に体が痛くないかい?」
「……」
「薬、飲もうか」
「……」
 そうしてまた成長したショウの大きさに合う夏服を選んだのだった。

 朝食は卵焼きと白飯と味噌汁だ。ユイは成長しましたねえとショウを見ている。ショウは無言で食べている。どうやら腹を満たすことを優先したらしい。
 カーヴェも少しずつ食べる。それをちらと横目でショウが見た。
「どうしたんだい?」
「……少食なのか?」
「いや、そんな事はないよ。普通の量を食べるかな。一口が小さいだけ」
「そうなのか」
「んー、年齢は十歳ぐらいですか?」
「知らん」
「とりあえずチィ様のところには報告に行ってくださいね! あとヒジリさんから貰ったお薬はちゃんと飲んでください! お水はこちらです!」
 とんっとユイは水の入った湯呑みを置いたのだった。
 ユイが皿を片付けて洗い物をする間に、カーヴェが錠剤をひとつ取り出す。はい、と手のひらに乗せて渡そうとすると、ショウがやや動きを止めた。
「ショウ君?」
 そして、ショウの顔が手に近づいた。ぱくりと錠剤を口に含み、べろりと手のひらを舐める。そして、湯呑みの水で流し込んだ。
「……ん??」
「飲んだぞ」
「そうだね?」
 今なんか起きたな。カーヴェは現実逃避した。ショウはやや満足そうであった。

 そして嫌がるショウを引っ張って、カーヴェは長老屋敷に来ていた。
「いや、早いですね」
「我の成長について何か知っているだろう」
「そう言われましても。言ったら実行しますよね」
「当然だ」
「ならば、言えません。急激な成長は大きな苦痛を伴います。ヒジリから話は聞きました。相当痛むはずです。今だって、ヒジリの痛み止めが無ければろくに動けない筈ですから」
「それでも早く本来の役目を、」
「だからこそです。貴方を失うことは許されません」
「何を知っているつもりだ」
「何も。私は私の知る範囲しか知りません。それこそが私の見解、見識、了見です」
「話にならん」
「でしょうね。キナさん」
「なにー?」
 奥からキナがやって来る。そして、ショウに駆け寄った。
「わー! 鳥さんだいぶ大きくなったー!」
「持ち上げるな! 回すな!」
「チィちゃん、お散歩行って来るねー」
「行ってらっしゃい、お昼までには帰って来てくださいね」
「はーい」
「離せ!」
 そうしてキナとショウが屋敷から出ていく。さて、とチィは言った。
「ショウさんの成長についてですが」
「えっ、教えてくれるのかい?」
「まあ、本人が気がついてそうなので。あなたに判断を任せようかと」
「どういうことかな?」
 簡単な話です。チィは言う。
「あなたと触れることで、ショウさんの成長が促されます。夜、特に暗いと成長しやすいかと。なので、寝て起きたら、とても成長しているわけです」
「それはどういう仕組みなんだい?」
「分かりません。ただ、人間の生命力とは存外、凄まじいものです。それを吸っているとしたら、あなたの命が危ないですね」
「そうなんだ?!」
「ショウさんの記憶が完成した時、ショウさんが成長し切るでしょう。その時にどうなるのか。分かりますね」
「ショウ君が村を去る、かな」
「そうです。元来、ショウさんはこの村の人間ではありませんから。それはあなたも同じですけれど」
「そうだね。じゃあ僕も質問をしていいかい?」
「どうぞ」
 チィに、カーヴェは問うた。
「名前は重要かな」
「なるほど」
 彼女は息を吐く。
「ショウさんに言われましたか」
「うん」
「では、あなたは何と?」
「覚悟がない、と」
「合っています。それに、名前を伝えなくとも、ショウさんは成長し切ります。だから、名前は、」
「うん」
「あなたがこの村を出てから、またショウさんと会いたいか、どうか、という話になります」
 じっと、チィの目がカーヴェを見る。カーヴェはだったらと言うのだ。
「ずるい大人になってしまったね」
「あなたの望み通りに」
 微笑みは、お互い様である。

「ただいまー団子をもらってきたよーたべよー」
「キナさんお帰りなさい。食べましょうか」
「僕らも食べよう。ショウ君、おいで」
「……あいつら嫌いだ」
「まあまあ。ほら、ユイの団子美味しいね」
「むう」


・・・


「えっレールタさんがお料理を?!」
「というかお菓子かな」
「構いませんが、材料の種類がそんなにたくさんなくて、ええと、必要なものを教えていただけますか?!」
「じゃあ……」
 そんな二人の様子をショウは椅子の上でじっと見ていた。
 場所はカーヴェとショウが寝泊まりしている家のキッチンだ。ユイがカーヴェの手伝いをする。
「レールタさんはお料理なさるんですねえ」
「まあ、家事は生活力だからね」
「それはそうですね。わたしも生きていくために家事を学びましたから」
「その手のことがこの村で出来ないのはチィ様だけかな?」
「いえ、チィ様は出来ますよ。出来ないのはキナ様です。キナ様は肉の解体は出来ても、その、味付けなどが適当なので……」
「料理は科学なんだけどな」
「キナ様は本能で生きてらっしゃいますから。チィ様は忙しいので流石に家事全てを行えませんが、たまにキナ様に教えながら団子汁などを作っていますよ。こういうのがお役目で、お仕事の差ですねえ。男女差ではなく、チィ様が長として振る舞う以上致し方ないですし、うーん。チィ様、本当は家事が好きな方なので。書類仕事とか一番嫌いな筈です」
「へえ、そうなんだね」
「でもチィ様がそれでもなるべく家にいて、書類仕事をしているのは、キナ様を家で出迎えたいからです。それが、あのお二人の愛情の形ですので」
「なるほど」
 その時、ショウが言った。
「あの二人は伴侶なのか」
「あれっお気づきになりませんでしたか?!」
「知らなかった」
「まあ、僕も最初は気がつかなかったけど、二人で話している時はチィ様の声がとても柔らかいよ」
「そうなのか。同性でもいいのか」
「少なくとも、この村で同性であるが故に何か問題が起きたことはありませんよ?」
「世継ぎはどうする?」
「養子を迎えればいいだけでは? そもそも、この村は世襲制はありませんし」
「……そうか」
「チィ様が長になられたのは、まだお二方には分からないと思いますが、チィ様がものすごく愛情深いからです」
「愛情?」
「はい。チィ様は冷酷な判断も出来る方です。時には冷たく見えます。実際、言葉が刺々しいことも多いです。ですが、チィ様は炎のように清浄で、炎のように天を目指し、炎のように熱い愛情を村民に向けてくださいます。愛の方なのです」
「そうは見えない」
「僕からも分からないな」
「そうですとも。でも、分からなくても良いのです。チィ様は他人に理解を求める方ではありませんから」
「それは、」
「チィ様は博愛というには愛が偏っていて、偏愛というには対象が多すぎる。普段は冷酷に見えても、その心根はずっと深い愛が根付いていらっしゃいます」
「博愛と偏愛?」
「なるほど」
「?」
「レールタさんならきっと、チィ様のお気持ちが分かるでしょう。ショウさんは、案外キナ様の方が分かりやすいかもしれませんね」
「どこがだ」
「キナ様は本能と直感が鋭い方です。それでいて、チィ様を伴侶に選んだのです。本能は、子を成すという女性の性質も含みます。キナ様は本能に逆らってでも、チィ様を選んだ。これは、キナ様にとって、初めてのことだったのだろうと思います」
「本能……」
「生々しいね」
「はい。でも、キナ様にとっては現実はあまりに生々しい。チィ様の存在はキナ様の、安らぎの形、そのもの、なのです」
 素晴らしい関係ですよね。ユイはそう笑った。

 さて、お菓子が出来上がったわけだが。
「クッキーだよ」
「くっきー」
「美味しそうですね!」
「ショウ君はクッキー食べたことあるかい?」
「見たことはある」
「じゃあ食べてごらん。ちょうどお八つ時だからいいだろう、ユイ」
「勿論です!」
 ショウがじっとクッキーを見ている。丸い湯呑みで作った円形のクッキーだ。カーヴェは一つ手にとって、はい、とショウに渡した。つもりだった。
「あ、」
 ぱく、とショウはカーヴェの手から食べた。大きなクッキーなので、少しずつ齧っていく。カーヴェは手を動かせず、そのまま固まった。
 最後にカーヴェの指先についたかけらを舐め取って、ショウは言った。
「甘い」
「……そうだね」
 ユイはそれを見て、刷り込みですかねと首を傾げていた。


・・・


 そして、夕飯の後に風呂となり、ショウが一人で風呂に入っている間に、先に入っていたカーヴェはユイと布団を敷いた。
「予備を長老屋敷から持ってきておいて良かったです。しかも天気が良かったので干しました! ふかふかでおひさまの匂いがしますよ!」
「良かった。ショウ君もきっと喜ぶよ」
「はいっ!」
 ユイは楽しそうにしている。カーヴェは二つの布団が間を開けて並んだ寝室に、目を伏せた。

 早寝のユイが自室で寝た頃。ようやくショウが風呂から上がってきた。髪を乾かしていなかったので、カーヴェがぽんぽんとタオルで水気を拭き取っていく。ショウは目を伏せていた。カーヴェは、綺麗な髪だねと声をかける。返事はない。

「こっちがショウ君の布団だよ」
「……」
「僕は向こうで寝るから、何かあったら呼んでおくれ。僕はすぐに起きるから」
 よっとカーヴェが布団に入った。ふわふわとおひさの匂いがする。季節が夏ではあるが、この村はそこまで気温が高くならないので、夜は少し肌寒い。温かい布団は有り難かった。
 ショウは無言だ。カーヴェは背を向けて目を閉じる。
「おやすみ、ショウ君」
 ふっと、蝋燭の火が消えた。カーヴェは何もしていない。ただ、いつもカーヴェが蝋燭を消すように、ショウもまた消しただけだ。その筈だ。カーヴェはゆっくりと呼吸する。ひとつ、ふたつ、みっつ。ゆっくりと、体の力を抜くように。
 だが、とさりと布団が持ち上げられ、誰かが背中に引っ付いて、布団をまた被る。誰かも何もない。ショウしかいないのだから。
「何故、今日になって我と共に寝ない」
「だってもう一人で寝れるだろうに」
「我はずっと一人で寝れる」
「そう言っていたね」
「何故、我を見ない」
「もう眠たくて」
「嘘だ」
 ショウの未発達な手が伸びる。心臓の辺りに触れられた。
「嘘を言うな」
「ごめんね」
「謝るな」
「ごめん」
「我を成長させたくないのか。だったら、」
 その先を、カーヴェは言わせたくなかった。
「成長はした方がいい。でも、急激な変化は痛みを伴うんだろう? だったら、昼間に触れるだけでいいじゃないか」
「夜の方が効率がいい」
「でも、その分、痛い筈だよ」
「我は痛みなど慣れている」
「慣れなくていいんだよ、そういうものは」
 する、と腕が引いた。カーヴェが安堵すると、背中から熱が離れて、ふわ、と布団が持ち上がった。
 肩に手を当てられ、仰向けに体勢が変わった。体勢が変わったのはショウもだ。彼は、カーヴェの上に覆い被さっていた。また、少し成長していた。たったこれだけの時間で、である。
「痛いだろうに」
「痛くはない」
「顔が苦しそうだよ」
「これは違う。痛みではない」
「そんなことはないさ」
「誤魔化すな」
「それは」
「逃げるな」
「逃げては、ない」
「我を助けたのはお前だ」

─「レールタさん。あなたは自然の摂理に反しました。そのことはエゴであり罪であり、罰が下る行いです」
─「ですから、この家を金の小鳥の住処になさい。金の小鳥が道に迷い、家を忘れても、レールタさんが導くのです」
─「いいですか。レールタさんはいつか元の場所に戻るおひとです。では金の小鳥は? 現時点では何とも判断できません。わたくしが思うに。今のレールタさんへの罰として最適なのは、金の小鳥に住処を与えることです。わかりますね」
─「これは僕だけの罪ではない、と」
─「鳥は自由に飛ぶものです。そのためだけに、ありとあらゆるものを犠牲にした種です。骨は脆く、羽は軽く、腕も歯も失った。種によって変わりますが、大抵の鳥はそうでしょう」
─「この住処を鳥籠になさい。レールタさんと金の小鳥がもう一度飛ぶために、ここに居なさい。互いを認識した罪と、その罰をお受けなさい。とはいえ、別に帰る家がここになればいいだけなので、普段通りの生活ですが」

「罪であり、罰である」
 回想を経て、カーヴェは言うしかなかった。
「やっぱり、僕が悪かったんだよ」
 ショウはただ、正面からカーヴェを抱きしめた。痛いぐらいに、強く、強く。早く寝ればいい。カーヴェは思う。きっと、この夜が最後なのだ、と。


・・・


 早朝。カーヴェは目を覚ました。枕元に、少年が立っている。大きくなったな。カーヴェは思う。最初に着ていた大きな服が、きちんとその身に合っていた。
 体を起こして、寒気がした。今朝は冷えている。早朝、森の中の村はよく冷える。
「……」
 ショウはカーヴェを見下ろしていた。その顔は影となって分かりにくい。だが、カーヴェは別に良かった。
「行くんだね」
「……」
「気をつけて」
「……」
「痛みに強いからって無茶はいけないよ」
「……名を、何と言う」
「覚える必要はないさ」
 だってね、ショウ君。
「僕らは出会うべきじゃなかったんだから」
 ショウはその言葉で唇を噛み締め、背を向けて走った。家を出ていく。カーヴェは布団の上で、ただ、祈った。
 罪も罰も、この心の痛みで浄化されますように。
 カーヴェの胸は重く、痛く、苦しかった。涙が一筋、ぽとんと落ちた。


・・・


『ねえ、鳥さんー』
『何だ、我を降ろせ』
『だめだよー逃げちゃうでしょー』
『当然だ』
『あのねー、鳥さんに教えてあげるー』
『何だ』
『もう知ってるでしょー? 鳥さんは、星さんと触れ合ってるとねー成長するのー』
『それは、分かっているが』
『あとねー、夜は効率がいいみたいー』
『寝て起きたら体が大きく変わっているからな』
『そもそもどうして成長してると思うー?』
『そんなもの分からないだろう。元素辺りだ』
『違うよー』
『何だ』
『この村がゆめのなかだからだよー』
『夢の中?』
『ボクがそう呼んでるだけーこの村はねー普通は入れないのー』
『そんな気はしていたが』
『この村に来た外の人は、ここから出ると全部忘れるのーまるで泡みたい、ええと、』
『泡沫(うたかた)』
『そうーうたかた、うたかたのゆめ。ボクらはここから出れなくてー外と繋がってても、ボクら結局うたかただねー』
『そうか』
『外から来た人はー外に戻ったら全部忘れてー無かったことになるよー』
『……』
『あのねー絶対にチィちゃんは嫌がるから、ボクが言うのー』
『は?』
『名前だよー名前だけが、記憶を固定する。鳥さんの名前を、星さんは知ってる。そうだねー?』
『ショウは、我の名の一つだ』
『で、星さんの名前はここじゃ誰も呼んでないねー、鳥さんは知ってるー?』
『知らない。以前、聞こうとしたら断られた』
『ふふー、やっぱり星さんはチィちゃんと似てるー』
『似てないだろう』
『チィちゃんも星さんも、ただ、ボクや鳥さんに幸せになってほしいんだよー馬鹿みたいだよねー』
『どういう意味だ』
『だってさー、ボクらの幸せは、チィちゃんや星さんあってのものだもんー』
『……』
『甲斐甲斐しく世話してさー、一生懸命お話ししてくれてさー、家に帰ったらただいまとおかえりを言えてさー当たり前みたいに隣にいるくせに。当たり前みたいに名前を呼ぶくせに』
『……』
『"あなた"が幸せならそれでいいって本気で思ってる。それが、チィちゃんと星さんの答えなんだよー』
『……そんなもの、』
『そう、いらない。だから、ボクは絶対にチィちゃんの所に帰る。チィちゃんに触れる。チィちゃんに嫌がられても、絶対に離さない。チィちゃんが怖いと言っても、その体を暴く』
『暴漢か?』
『さあねー? でも、チィちゃんは嫌とも怖いとも言ったこと無いけどー』
『惚気か』
『そう。だからねー鳥さん』
『……』
『絶対に忘れないように、頑張って。泡沫の夢のこと、忘れないで。きっと、星さんは答えてくれないけど、それでも、泡沫であっても、夢であっても、きっと、何かが残ってるから』
『希望か』
『望みを薄めたものを希望って言うらしいねー』
『……』
『もう、時間はない。鳥さん、どうか、忘れないように頑張ってねー』
『何故そこまで我に言う』
『そりゃあ、ボクはちょっとだけ、鳥さんの気持ちが分かったつもりでいるからさー』


─「チィ様が長になられたのは、まだお二方には分からないと思いますが、チィ様がものすごく愛情深いからです」
─「はい。チィ様は冷酷な判断も出来る方です。時には冷たく見えます。実際、言葉が刺々しいことも多いです。ですが、チィ様は炎のように清浄で、炎のように天を目指し、炎のように熱い愛情を村民に向けてくださいます。愛の方なのです」
─「そうですとも。でも、分からなくても良いのです。チィ様は他人に理解を求める方ではありませんから」
─「チィ様は博愛というには愛が偏っていて、偏愛というには対象が多すぎる。普段は冷酷に見えても、その心根はずっと深い愛が根付いていらっしゃいます」
─「レールタさんならきっと、チィ様のお気持ちが分かるでしょう。ショウさんは、案外キナ様の方が分かりやすいかもしれませんね」
─「キナ様は本能と直感が鋭い方です。それでいて、チィ様を伴侶に選んだのです。本能は、子を成すという女性の性質も含みます。キナ様は本能に逆らってでも、チィ様を選んだ。これは、キナ様にとって、初めてのことだったのだろうと思います」
─「本能……」
─「生々しいね」
─「はい。でも、キナ様にとっては現実はあまりに生々しい。チィ様の存在はキナ様の、安らぎの形、そのもの、なのです」


・・・


 そうだった。あの星はそのまま、ショウの安らぎの形をしていた。


・・・


 カーヴェは起きた。スメールシティ、カーヴェの自室だった。ずきん、と、頭が痛い。
「起きたか」
「あー、アルハイゼンか。僕はどのくらい寝てた?」
「一週間だな」
「は?! そんなに?!」
「あれだけの大怪我で一週間なら驚異的なスピードだがな。他人を守って怪我したんだろう」
「そうだけど! ああもう、夢まで見た」
「ほう」
「小さな子を育てた夢だったよ」
「親になったか」
「夢の中でな!! ごほっ」
「まだ熱がある。寝ておけ」
「というか、何でビマリスタンじゃなくて自室なんだ?」
「君が嫌がったからだ。ティナリが異常だからとここに運ぶよう指示した」
「うわ、全然記憶にないな」
「ティナリは丁度今日様子を見に来る。それまで寝ろ」
「分かった分かった」
 カーヴェは息を吐いて、ベッドに体を沈める。大丈夫。大丈夫。あれは夢だったのだ。長い長い夢だった。
「ショウ君、さようなら」
 君は本当に優しい子だったよ。


・・・


「ショウー!」
「何だ」
「やった来てくれた!」
 旅人が笑う。パイモンがくるくると嬉しそうにしていた。
「今日はスメールだからね、甘いもの食べよう!」
「我でいいのか」
「もちろん! というか、俺だけだと甘すぎて全部食べれないから、誰か必要だったんだよね」
「そうか」
「オイラはぜーんぶ食べちまうからな!」
「パイモンはよく食べる非常食だからね」
「非常食じゃないぞ!」
 ショウは周りを見た。スメールは初めて来た。そんな新鮮な反応に、旅人は笑う。
「ここはスメールシティだよ。カーヴェと待ち合わせしてるんだ!」
「カーヴェとは誰だ?」
「えっと、まだ実装されてない人」
「……?」
「本来ならまだ好き勝手会えなくてさー戦闘にもまだ連れて行けなくて。でも、住んでる街の中でお茶ぐらいはしたい。俺はカーヴェと仲良くなりたいの!」
「何故そこまで必死になるんだ」
「だって、カーヴェに一目惚れしたんだよね」
「ひとめぼれ?」
「カーヴェは男の人なんだけどね、表情豊かでさ、すっごく綺麗で。オーバーリアクションなんだけど、可愛いんだ」
「……?」
「旅人ー! ショウがついて来れてないぞ!」
「あ、ごめん! とにかく! 今日は絶対にたくさん喋って好感度上げるんだ! ショウは俺の安定剤!」
「安定剤?」
「好きな人と二人きりに耐えられない」
「オイラは?」
「非常食」
「何でだよー!」
 旅人がこっちだよと歩く。ショウはついて行く。そして、旅人がここがプスパカフェで、待ち合わせ場所だと言う。カーヴェという人を探す旅人を放置して、ショウは周囲を見た。
 そこに、一際目立つ、金色の髪があった。
 赤い衣を着ている。見慣れない耳飾りをしている。でも、あの髪は。
「あ、いた。カーヴェ!」
 振り返った、その目の真紅は。
「っあ、」
 がたんっとその人は走った。旅人が待ってと慌てている。ショウは、すぐに"彼"の手を捕まえた。
「見つけた」
「人違いです」
「違わないだろう」
「僕には何のことだか」
「痩せたか」
「別に。君には関係ないさ」
 胸に痛みが走る。否、痛みではない。これは、苦しさだ。胸が締め付けられる。また、彼はショウと向き合わない。それだけ、信用がないのか。それだけ、忘れて欲しかったのか。それだけ、ショウに捧げた愛は、この青年にとってその程度のものだったのか。
 そんなもの、許せる筈が無い。
「名を教えろ」
「言わないよ」
「我はショウだ」
「だったら何」
 あの時の話を思い出す。そうだ。あの女は本能に逆らった。運命に逆らった。相手がどう思おうと、自分と相手の幸せのために、相手が傷つこうとも、手離さなかった。
「お前は我の"安らぎの形"だ」
 ああ、と彼は肩を震わせた。背中を揺らした。嗚咽が、聞こえる。腕を離すと地面に崩れ落ちるように座り込む。
「なんで覚えてるんだよ、僕は何か悪いことをしたの? 罪は浄化されず、今もなお罰は続くということなの?」
 教えて。
「僕はただ、ショウ君に元の世界で元のように生きてほしかっただけなのに」
 拒絶のそれは、あまりにも純粋な、欲の無い、愛の言葉だった。
「カーヴェというのか」
 返ってくるのは嗚咽のみ。それでも良かった。だって、ショウはこの広い世界で見つけたのだから。

 たった一人、その手から自分に食料を与え、生かし、世話し、笑いかけ、痛み一つで騒ぐ。ショウの親鳥のつもりではなく、自分たちは人間の形をしていると言ったひとだ。

「カーヴェ、こちらを向け」
「僕は、ショウ君の足枷になりたくない。もう、鳥籠の中じゃないんだから」
「我は人間の形をしているんだろう」
「そうだよ。だから、好きなところに行って」
「我はそれでもカーヴェの元に帰る」
「無茶を言わないでくれ。僕はショウ君のことを何も知らないけれど、ただの人じゃないことは、もう分かるから。分かるから、やめてほしい。離れてほしい。それが、ショウ君の幸せで、僕の幸せだから」
「我の話をしよう」
「っ! しなくていい!」
 耳を塞ぐ。だから、その両手を掴んで、剥がして、肩を掴んで、こちらを無理矢理、向かせた。真紅の目から、ぼろぼろと涙が溢れていた。
「っあ、う」
 正面から抱きしめたその人は、ただの人間で。何よりも、献身的な、本物の"安らぎの形'をしていた。


・・・


【おまけ】


「ちょっと待って知り合いなの?」
「色々あった」
「僕、目元が痛いから帰っていいかな」
「じゃあもうアルハイゼンの家に行きたい。ショウも喋ろう」
「オイラは何か食べたいぞ!!」
「作り置きのクッキーがあるから、パイモンにはそれを、」
「駄目だ」
「な、なんでだよお!!」
「……クッキーならいくらでも作るよ」
「そうか」

「で、何故君が泣き腫らした目で帰ってきたんだ」
「僕が悪いんだよ。いつも通りにな!!」
「開き直るな。で、旅人達は俺の家に何か用か」
「カーヴェとデートの約束してたのに泣き始めたから、お家デートしたいなって!」
「帰れ」
「我はカーヴェと話すことが山ほどある」
「誰か知らんが病み上がりの人間を泣かせた者たちを信用できる訳がないだろう」
「病み上がりとは何のことだ?」
「アルハイゼンっ!! 君はまた! 余計なことを言うな! っこほ」
「おい、また熱が上がったのか」
「は?」
「あれ、もしかして風邪?」
「いや、ティナリは違うと言っていた。エネルギーが不足してるとかどうの、と。俺も調べてはいる。早く回復しないと働けないからな。カーヴェが」
「うるさいなっ! 僕は部屋に戻って寝る! それでいいだろう!」
「我も行こう」
「却下だ。そこに座れ、問い質すべき事があると見える」
「知らん。カーヴェ、我も行く」
「ショウ君は来なくていいんだって!」
「え、本当にショウはカーヴェと何があったの……?」
「クッキーどこだあ?」


・・・


【名前付きモブ一覧】

ユイ:少女。家事全般が得意。カーヴェの世話係。幼い割に聡明。
チィ:若い娘。村の長老役。チィ様と呼ばれている。キナが伴侶。読書好きの学者。情を切り捨て、取引に強い。村の住民には比較的優しい。キナにだけは特別な姿を見せる。キナとタニとモリは幼馴染。
キナ:若い娘。腕のいい狩人。キナ様と呼ばれている。チィが伴侶。獣に育てられた。間延びした口調に反して、とても鋭い。常に真実を見ている。チィが居なければ獣として朽ちていたらしい。チィとタニとモリは幼馴染。
カオル:若い娘。キナの妹。人間に育てられた。村の交易を管理している。明るく元気に振る舞うが、本質は尽くしたがり。キナを姉として慕っている。ハナが親友。
ハナ:若い娘。チィの一人目の妹。村の交易を管理している。明るく元気に振る舞うが、本質はオカン。世話好き。チィの事を姉として慕い、妹のアマネが苦手。カオルは親友。
アマネ:少女。チィの二番目の妹。チィの右腕。チィを慕い、ハナが苦手。理数系が得意。キナが苦手。
ミド:青年。よく寝ている。猫耳と尻尾がある。大体の仕事ができる。天才肌。ヒジリが親友? キナを先輩と呼ぶ。
ヒジリ:青年。医者。ミドが親友? チィを先輩と呼ぶ。天才肌でプライドが高いくせに自分をダメ人間だと思い込んでいる。
タニ:男性。妻(クス)と娘(メメ/幼女/耳が良い)がいる。チィとキナとモリは幼馴染。片手剣で戦える。
モリ:男性。大怪我をして療養中。チィとキナとタニは幼馴染。チィに正面から意見を言える唯一の人間。妻はいないが、村に迷い込んだ双子の男児(ハクとコク)を養子として迎えている。
ナカラ:初老の男性。とても元気。村の警備担当。
サノマエ:老いた男性。足が悪いが、じっと周囲をよく見るのが得意。夜目が効く。

- ナノ -