x光年先の輝き/スメール男子会中心/カーヴェ受け/他キャラもたくさん出て来ます/だいたい男の子/小ネタまとめです。
※何ちゃって現代日本パロというか学パロ
※年齢操作。捏造と捏造と捏造と幻覚。
※カーヴェ主人公の恋愛ゲームみたいになった。おかしいな。現時点でルートがいくつか見える。おかしいな。
※途中から開き直ってシナリオ書く気持ちで書きました。なので途中から雰囲気が変わります。
※そのうちR18要素が出てくるかもしれません。


・・・

中学時代


1.導入
「ティナリ、どうしよう」
「何を悩んでるの?」
「僕、家から追い出されることになったんだけどさ」
「最初からクライマックスじゃないか。いや元々ネグレクトだったよね」
「大家さんが庇いきれなくなったとかで、警察とか諸々がやってきて。そして今、僕は十四歳だ」
「と、なると孤児院とかに入る……?」
「かもしれない。ただ、親戚筋が僕を引き取りたいって言ってて」
「その親戚って知り合いなの?」
「全く知らないけど、僕の情報を見たら引き取るって突然言い出したって」
「それさあ」
「ネグレクトはもういいよ。でも性的虐待は嫌だ」
「どっちもアウトだからね」
「どうしよう。僕このままだと本当に合法的に売られる形になる」
「言い方。とりあえず避難しようよ」
「どこに?」
「……アルハイゼンのところ行こっか」
「なんで??」

2.導入2
「ということなんだけど」
「僕としてはアルハイゼンの家で引き取れないかなって」
「俺は知らん」
「だよな」
「ただ、家族がもうそれを知っている」
「なんて??」
「元々、俺からカーヴェの家の事情を話してある。万が一のことがあれば、俺たち家族で引き取ると話は既にまとまっている」
「んんん??」
「両親は今は仕事だ。お祖母様が奥にいるから話に行くぞ」
「えっ」
「僕からもお願いしたいから会いたいな」
「構わん」
「おい何だこの騒ぎは。隣まで聞こえて来たぞ」
「あ、セノ」
「セノ、一緒に来て。ご挨拶しようよ」
「ああ、なるほど。やっとアルハイゼンの家族に引き取られることになったのか」
「待って」

3.翌日、昼食
「アルハイゼンの家族、心が広すぎないか? ご両親、僕の法的な手続き全部終わらせて帰って来たぞ」
「俺に言うな」
「用意周到というか、外堀は既に埋まってたね」
「だから、やっと、だと思ってたんだが。近所にネグレクトの噂を流したのもアルハイゼンの家だろう」
「知らんな」
「アルバイト代は貯金しなさいって言われちゃったし」
「普通はアルバイト出来る年齢でも無いんだよね」
「俺は今すぐやめた方がいいと思う。法的にアウトだ」
「でも、十四歳でも働けるのはあそこぐらいだし」
「違法なんだよ、分かる?」
「でもアルハイゼン達に金銭面でこれ以上迷惑をかけたくないんだ」
「俺は気にしない。家族も納得している。闇バイトは止めろ」
「というかちょっとやめられないっていうか」
「そもそもどこで何のバイトしてるか聞いてもいい?」
「えっと、その、喫茶店で働いてる。マスターと僕の二人で切り盛りしてて、マスターもうお爺さんだから、僕がいなかったらあの喫茶店が潰れてしまう。それは、悲しいだろ」
「闇じゃん」
「むしろそれは、カーヴェがまともなアルバイターを探して交代したほうがいいんじゃないか。ただの喫茶店なんだろう」
「仲良くなった常連さんとかいるし……」
「……君、それは本当に喫茶店なんだな?」
「本当に真面目に喫茶店だ!!」

4.高校
「高校どうするの?」
「「「七神高」」」
「あれ、僕も七神学校の高等部の予定なんだけど……ていうかアルハイゼンもそのつもりなんだね?」
「カーヴェが行くからな」
「何で理由が僕なのさ。僕はもう推薦で決まってる」
「僕は一般で行くよ」
「俺も一般だな。アルハイゼンは今から主張しておけば推薦になるだろう。その方が話が早そうだ」
「ああ。そのつもりだ」
「ところで七神高って全寮制男子校だよね」
「ああ」
「そう、だな」
「それがどうかしたのかい?」
「カーヴェのことは僕らで守るからね」
「ティナリ、落ち着いてくれ。僕は男だ」
「つい先日、人身売買と性的虐待に遭いそうになっていたのにどの口が言っているんだ」
「アルハイゼンは何を不機嫌になってるんだ……? 七神高は特待生制度が充実してて、学費とか諸々が無料になるから、つい。喫茶店の常連さんの中に職員だって人がいたから、制度は詳しく教えてくれたよ」
「ねえ本当にただの喫茶店なの?」


・・・


 アルハイゼンの家は学者の家系である。優秀な学者を輩出する家に、カーヴェは戸惑ったが、ご両親もお祖母様もカーヴェの事情をよく汲み取ってくれた。七神高への進学についても、特待生に選ばれる為に無茶しないようにと、念押しされた。
 そうして、カーヴェはアルハイゼンの家で初めて手作りの温かいご飯を食べ、温かい湯船につかり、ふかふかの布団で寝た。何もかも初めてだったことを、最初の朝食の席でお祖母様に話したら、お祖母様は優しく微笑んでくれた。


・・・


 喫茶店のバイトは毎日入れてある。いつものように喫茶店に入り、白いシャツと黒いスラックス、黒いエプロンを身に纏う。靴も黒で、革靴だ。これが制服なのだ。このバイトは制服を支給してくれたことも、続けた理由である。マスターには高校進学と共にバイトを辞めることを伝えた。マスターは大丈夫だよと微笑んでくれた。
 からん、今日もお客さんが来る。
「いらっしゃいませ! 今日はお一人ですか?」
「ああ、そうだな。コーヒーを頼む」
「はい!」
 カーヴェは席に案内して、注文をメモし、カウンターに乗せる。
「鍾離さん、随分前に教えていただいた七神高ですが、推薦が決まったんです」
「それは良かった。優秀な生徒が入るのは良いことだ」
「高校から編入だと浮きますか?」
「確かに初等部からあるが、内部進学はそこまで多くない。高等部からの生徒はわりと多い。一つ気になるのは」
「気になること、ですか?」
「寮は基本的に相部屋だ。その相部屋相手とうまくいくといいんだが……。相部屋の組み合わせは一介の教師では決められん。理事長が全て決めている」
「僕はたぶん、誰とでも大丈夫です」
「そうか。にしても、喫茶店で会えるのはもう少しの期間だな。学校で会えるのを楽しみにしているぞ」
「ありがとうございます」


・・・

高校時代

七神学校高等部(カーヴェ/ティナリ/セノ/一年生)

1.新入生代表
「カーヴェ、新入生代表になったの?! 僕ら知らなくて入学式でビックリしたんだけど?!」
「うん。それぐらいはやらないと」
「俺とティナリは相部屋になった。カーヴェの相部屋の相手はどんな奴なんだ?」
「それが、なんか遅れて入学するとかで」
「……アルハイゼンとか?」
「ティナリ。日本に飛び級は認められていない」
「冗談だよ。彼ならやりそうだけど」
「本当に誰なんだろうなあって思ってるよ」

2.部活
「部活とかはどうする? 僕は科学部で園芸委員会を希望するけど」
「俺は風紀委員会だな。部活は、決めていない。サッカー部から何故か話が来ているが」
「僕は美術部と、文化委員会かな」
「文化委員会って確か文化祭とか合唱コンクールとかの運営をやるんだっけ?」
「そうらしいよ」
「得意そう」
「ティナリの希望も君らしいよ」
「む、部活のことを考えなければ」
「焦ることはないけどね」

3.クラス割り
「ティナリもセノもクラス違うかあ」
「おはよう。ねえ、隣いい?」
「あ、うん。構わないよ。席はこれからくじ引きかな」
「そうかもね。俺はタルタリヤ! 家族からはアヤックスって呼ばれてるよ」
「ニックネームかな? 僕はカーヴェ。クラスメイトとしてよろしく」
「よろしく。新入生代表の挨拶してたよね。すっごい注目されてたのに、よく喋れるなと思った」
「ええと、タルタリヤはそういうの苦手なのかい?」
「あ、名前は適当でいいよ。えっと、嫌いじゃないけど、好きでもないかな。注目されるなら、大人しく人前で喋るより、競技で注目されたいよ」
「競技?」
「うん。弓道部希望なんだ」
「へえ、僕は美術部希望だよ。運動部もいいよね。観戦するのが好きだな」
「なら試合がある時は教えてあげる! 見に来てね」
「ふふ、ありがとう」

4.美術部
「人数が少ないけど、成績がとんでもないな……」
「やあ」
「わあっ! 鍾離さん?! あ、鍾離先生」
「二人の時は以前と同じで構わないぞ? 俺は美術部の顧問だ」
「そうなんですか?! 知ってる人がいて、良かったです。ええと、後ろの子は?」
「高等部一年生のショウだ。写真部なんだが、現在の写真部はこの子だけだからな。美術部と共に活動すればいいのではないか、と」
「そうなんですね。こんにちは、僕はカーヴェ。同じ一年生だよ。クラスはA組」
「……ショウだ。クラスはB組。現像などは暗室でやる。部室は、ここから少し遠い」
「そっか。好きなようにすればいいと思う。美術部と写真部で共同で活動するなら合宿とかかな」
「それは面白そうだな」
「……」

5.文化委員会
「あの、文化委員会を希望しに来たんですけど」
「ああ、新入生代表の……」
「カーヴェです。えっと、君は?」
「神里綾人です。同じ一年生ですよ。クラスはC組です。よろしくお願いしますね」
「うん、よろしく」

6.五月になりまして。
「あれ、貴方が相部屋の人かい?」
「僕はディルック。あなたは?」
「僕はカーヴェ。この部屋の住民かな。えっと共用スペースも部屋も一応掃除はしてたから、埃とかは大丈夫だと思うよ」
「そうなんだ。ありがとう」
「うん。じゃあ僕はこっちの部屋だから。あ、僕の友人が二人ほどやって来ることがよくあるんだ。うるさくしないように気をつけるね」
「構わないよ。ところでカーヴェのクラスは?」
「A組。ディルックは?」
「A組だよ」
「なら一緒だ! もしかして相部屋ってクラスが同じな人が多いのかな。僕の友人たちはB組で、相部屋なんだよ」
「そうなんだね」


・・・


 それは唐突であった。
「好きです」
「……は?」
 5月の終わり。カーヴェは見知らぬ先輩から告白を受けていた。もちろん、ここは男子校である。

「カーヴェ!!」
「ティナリ、落ち着いて」
「大丈夫? 怪我はない?」
「平気だよ」
「セノは今、先輩と話し合い(物理)に行ったからね」
「だめだそれ! セノはサッカー部員だぞ?!」
「大丈夫。風紀委員会としての活動だから」
「いや風紀の乱れは起きてないから」
「カーヴェが心配なんだよ、もう」
「そこまで?」
 カーヴェとティナリが、カーヴェの寮の共用スペースで話していると、こつんと人が入って来た。赤い髪、ディルックだ。
「ええと、ご友人かな?」
「うん。ティナリだよ。彼はディルックで、相部屋の相手」
「ディルックって、剣道部で、生徒会の副会長の?」
「え、そうなのかい?」
「うん、そうだよ。別に言いふらすことではないから、言わなかったんだ」
 ディルックが微笑むので、ティナリもカーヴェも、まあ確かにと納得した。
「とりあえず今回の件はきちんと断ったんだね?」
「うん。セノが動いたなら絶対大丈夫なんだろうに」
「分かってるけど……!」
「セノって風紀委員会の?」
「そうだよ。知り合いかい」
「生徒会は風紀委員会と会うことがよくあるからね」
「ふうん」
 カーヴェがそういうものかと頷くと、ティナリはとにかくと口にした。
「カーヴェは綺麗なんだから気をつけて!」
「ティナリも可愛いのに」
「僕はいいんだよ。強いから」
「何その理由」
 そうして、そろそろ戻らないと、と言ってティナリは部屋に戻って行った。
 ディルックが不思議そうにしている。
「何かあったのかい?」
「あー、まあ少しね。ディルックにトラブルは行かないと思うから」
「トラブル?」
「気にしないでおくれ。夕飯はどうする?」
「今日は特に決めてなかったけど……」
「じゃあ僕が作ろう。ディルックはいつも学食だったね。何か食べたいものはあるかい?」
「特には……?」
「じゃあチャーハンと中華スープ、あとはお茶かな」
「作るんだね」
「ただの節約だよ。一人分増えるぐらいなら平気さ」
「何かお返しできることがあったら言ってね」
「これぐらいなら、いらないよ!」


・・・


 六月。文化祭である。
 カーヴェは、文化祭当日は午前中の受付を担当した。外部からも人が来るので、作業は多い。テキパキと動いていると、見慣れた銀髪がいた。
「アルハイゼン!」
「うるさい。君はずっとここなのか?」
「受付を済ませろよ。午後は見回りがある」
「じゃあそれまで図書室で待っている」
「君、図書室の場所、分かるのかい?」
「地図がある」
「ならいいや。昼食は食べるかい?」
「弁当を持って来た。君の分もある」
「わ、ありがとう! それ、お母様からだろう?」
「そうだ」
「楽しみだな。よし、受付おわり。じゃあまた後で」
「ああ」

 カーヴェが受付で対応していると、外部から女の子がたくさん来るなと思った。男子校なので、出会い目的だろうか。確かに顔の良い人が多い気がする。
 たったと誰かが受付にやって来た。というか、カーヴェに向かって走って来た。
「カーヴェ!」
「うわあ! タルタリヤ?!」
「セノが!」
「え、何?」
「セノがキレてる!」
「何で?」
「えっとコレイって子がナンパされたところを助けたみたいなんだけど、向こうが悪くて」
「ティナリは?」
「彼ももちろんその場にいる。キレてる」
「うわ、すぐ行く。先輩方、少しだけ抜けます!」
 タルタリヤの案内で校舎裏に向かう。

 コレイはカーヴェにとって、知り合いの女の子だ。ティナリとセノが可愛がっている妹分なのである。

 修羅、此処にあり。キレてるお兄ちゃんたちと、怯えるコレイ。目の前には二人の成人男性が正座していた。
「……ロリコンかあ」
「カーヴェ、とりあえずあのナンパ男たちは他の風紀委員会に引き渡すから、セノとティナリをお願い!」
「いいよ」
 カーヴェは走った。

「ティナリ、セノ、落ち着いて!」
「あっカーヴェさんっ来ちゃダメだ!」
「え?」
 ナンパ男が顔を上げて、カーヴェへと振り返った時、だった。
 ドスっ
「は?」
 上から人間が落ちて来た。というか、ナンパ男二人をまとめて踏み潰した。
「カーヴェ、無事か」
「いや、何してるんだアルハイゼン?!」
「緊急事態かと思った。何か問題でも?」
「問題しかない! 暴力はダメだ!!」
「ただ落ちた場所に頭があっただけだ」
「人体の急所って知ってるか?」
「基本だろう」
「確信犯!!」
 なお、ナンパ男は風紀委員会によって回収され、ティナリとセノはコレイとカーヴェとアルハイゼンで学園祭を回ることでなんとか機嫌を直したのだった。

 文化祭の最後は後夜祭だ。カーヴェは受付と見回りがあったので、この時間は用事がない。外部の人間はもう帰っている。
 別れ際にアルハイゼンが心配そうだったので、大丈夫だとカーヴェは笑って頭を撫でたのだった。

 夜の屋上。カーヴェが柵越しに校庭を眺めていると、扉が開いた。
「あれ、ここにいたの?」
「あ、タルタリヤ。ここは屋上だけど」
「立ち入り禁止じゃん」
「僕は文化委員会だから、今日はここに居てもいいって。ついでに見回りかな」
「ええ? 俺、怒られる?」
「いいよ別に。安全上、入っちゃいけないってだけなんだからね。それに、ここからなら花火がよく見えるんじゃないかい?」
「花火って凄いよね。本気で上がるの?」
「うん。今年からだって。ちゃんと文化委員会が職人に依頼したんだよ。先輩方がやってた」
「すごいな……ただの学校の文化祭なのに」
「そうだね」
 校庭にはキャンプファイアーが設置してある。あれを定刻で消したら、花火が上がる。
 カーヴェは打ち上げ花火を見たことがない。たとえ学校の規模だとしても、楽しみだった。そんなカーヴェの隣で、タルタリヤは初夏の夜風を浴びていた。
「そういや、六月はジューンブライドだっけ」
「ああ、六月に結婚すると幸せになるんだっけ? ロマンがあっていいよね」
「カーヴェは誰かから指輪もらうの?」
「ごめん何の話?」
 あ、と、タルタリヤは気がついた。
「俺、内部進学組なんだけどさ」
「知ってるけど」
「六月は好きな人とか恋人同士で指輪を贈るんだ」
「……ここ、男子校じゃなかったっけ」
「うん。俺はずっと断ってる。カーヴェは新入生代表やったし、今日の文化祭でも人当たりが良かったから、なんか指輪の申し込みがあるかなと思って」
「特にない。って、だからあの時の、なるほど」
「ん?」
「五月末に知らない先輩から告白されてさ。そっか、六月の指輪があるからあのタイミングだったんだね」
「えっ、告白されたの? うわあ、度胸あるね。カーヴェの周り、ティナリとセノがしっかり守ってるのに」
「あの二人は心配性なだけだよ」
「いや、悪いわけじゃなくて。んー、指輪ほしい?」
「別に興味ないかな」
「贈ろうか?」
「いらない」
「便利なのに」
「例えば?」
「例えば俺とカーヴェが指輪を贈り合うと、親密な関係って認知されるから、告白の類がグッと減る」
「それはタルタリヤが困ってることだよな?」
「あははっバレた!」
 でも、とタルタリヤは海のような目を細めた。カーヴェの手に指を絡め、指先で器用に指の付け根を引っ掻いた。浅く、赤くなる。血は流れていない。
 左手薬指だった。
「いつでも言ってね?」
「いや、頼まないからな?」
 カーヴェは悪戯好きなクラスメイトに呆れたのだった。

 花火を見てから、カーヴェとタルタリヤは屋上を後にした。何となく手が繋がったままだったが、寮棟が近づくと離れていく。カーヴェがじゃあと手を振ると、タルタリヤは笑顔でまた明日と笑っていた。

 寮の部屋に入ると、ディルックはまだ戻って来ていないらしかった。生徒会も運営に関わるので、副会長として何かあるのかもしれない。
 こんこん、とノック音がする。誰だろう。ディルックならばノックしなくともいいのだ。鍵も持っている。だから、カーヴェは扉を開けた。
「え、」
「あれ? 君は?」
 アルハイゼンぐらいの、つまりひとつ歳下ぐらいの男の子が立っていた。制服姿ではない。それに、見かけない姿だった。
「いや、ええと、これ、届け物なんだが」
「ディルックに、かな? 運んでおくよ」
 小箱を受け取る。男の子は視線を彷徨かせた。カーヴェは、どうしたのと声をかける。
「貴方の名前は?」
「僕はカーヴェだよ。君は?」
「ガイアだ。来年、ここに編入するつもりなんだが」
「高等部に、だね。僕は今年がそうだったんだ。排他的な雰囲気はないし、いい学校だと思うよ」
「そうか。ええと、」
「ディルックならいつも普通にしてるけれど、言伝でもあったかな?」
「いや、それはいい。届け物の中に手紙がある。返事はいらない。あと、」
「ん?」
 青い髪の男の子は口を閉じて、何でもないとから笑いをして去って行った。

 共用スペースの机の上に届け物の小箱を置く。ここならディルックがすぐに分かるだろう。

 しかし、指輪か、と左手薬指を触った。変な風習があるものだ。学園という閉ざされた環境だと、そういうこともあるのかもしれない。カーヴェは息を吐いた。タルタリヤが告白で呼び出されているのはよく見る。カーヴェは朝晩を部屋で、昼食をティナリとセノと食べている。だが、昼休みに廊下を苛立ち気味に歩くタルタリヤをよく見ていたのだ。
 顔が良いのは大変だなと思う。カーヴェは自分も告白されたことを棚に上げた。しかし、六月中は気を抜けない気がしてくる。適当な指輪でも買って、チェーンに通してリングペンダントにしておけばいいのだろうか。そもそも、この風習には特別な指輪があるのだろうか。何も分からなかった。

 ガチャと鍵が開く。ディルックだ。
「おかえり、ディルック」
「うん、ただいま。それは?」
「ディルックにだってさ、届けてくれた人がいたよ」
「……ガイアさんかな?」
「そう。来年、ここに編入するって」
「そうか」
 複雑そうなディルックに、ガイアは何も言わないことにした。全く、大変な事情がありそうなものである。カーヴェは自身の境遇を全て棚に上げた。

 風呂に入ったり、乾かしたり。そんな後は寝るだけという頃に、カーヴェは言った。
「そうだ。ディルックは六月の指輪の話って知ってるかい?」
「ああ、それかい? 申し込みがあったとか?」
「いや、特にないけど。今日初めて教えてもらったんだ。指輪を好きな人とか恋人に贈るって聞いたんだけど、何か他に決まりとかあるのかなって」
「詳しい決まりは知らないけれど、贈る指輪はシンプルなものが多いみたいだよ。あと、恋人とか好きな人じゃなくて、大切な人、に贈ることもあると先輩方が言ってたね」
「なるほど。大切な人の方が分かりやすいな」
「贈りたい人がいるのかな」
「今はいないや。来年、アルハイゼンが編入してきたら渡すかも。一応、弟になるから」
「一応?」
「血の繋がりは無いんだ。そもそも、家族になったのは中学二年生の頃。アルハイゼンとそのご家族には感謝しても仕切れないな。合法的に売り飛ばされそうになったところを助けてくれたから」
「いや、待って。それはどういう状況なんだい?」
「世の中って怖いね、ディルック」
「それは、まあ、そうだろうね」
 困惑するディルックに、とりあえずおやすみとカーヴェは自室に戻ったのだった。


・・・


 下駄箱である。封筒があった。カーヴェが手に取ると、ティナリとセノが左右から覗き込んだ。
「これ、今見た方がいいかな」
「中身は察するけどね」
「早めに確認した方がいい」
 はあ、とカーヴェは封筒を開いた。中身は昼休みに温室で会いたいと書いてあった。
「ティナリ、温室ってどこ?」
「案内するよ」
「今日の昼食は外で食べるか」
「二人ともありがとう」
 頭が痛い。カーヴェはため息を吐いた。

 クラスで席に着く。声をかけて来たのはタルタリヤだ。
「暗い顔! 何かあった?」
「呼び出しみたいだね。何の話か知らないけど」
「あー、お察し」
「ティナリとセノが指定の場所まで送ってくれるってさ」
「危機感がすごい。流石じゃん。あの二人がいなかったら、カーヴェの告白もっとヤバかった思う」
「タルタリヤぐらい?」
「あそこのディルック並みかもしれない」
「……僕がなんだい?」
 ディルックがこちらを見た。三人の席は近かった。
「カーヴェが呼び出しだって」
「呼び出し?」
「そう。多分告白だろうね。六月の指輪を渡すなら今のうちに告白して両思いになってから渡すか、その場で告白と一緒に渡すか。ってところ」
「そうか、タルタリヤは内部進学組だったね」
「あ、ディルックも編入だから、あんまり馴染みが無いんだ」
「指輪がどうのとは先輩方から聞いていたけど、告白が多いのはその為か……」
「うわあ忌々しそう!」
「今のディルックの声の低さ、聞いたことないな」
「基本的に優しいもんなあ。二人とも、告白に応える気がないならバッサリ断るんだよ。そりゃもう、はっきりと」
 タルタリヤはこの手なら内部進学組の俺の方が知ってると言いたげだった。そこは自慢しなくていいのにとカーヴェは苦笑する。ディルックは額に手を当てていた。
「変な風習だね」
「僕も思う」
「二人とも、少しは慣れよう」
 そこで、担任がやって来たので、各自が席についたのだった。

 かくして温室である。指輪を見せられて、告白された。カーヴェは好きじゃない、要らない、とすげなく断ったが、相手は縋り付くように続ける。なかなか手を引かないので、もう無理やり立ち去るか、というところで、カーヴェの肩をポンと叩く人がいた。さらに後ろからティナリとセノが走ってくる。
「こんにちは」
「あ、こんにちは、綾人。文化委員会で連絡事項あったかい?」
「はい。合唱コンクールの選曲を今日の夕方にするそうです」
「分かった」
「で、あのお二方は?」
「大切な友人だよ」
 そして強い。
 ティナリの説教と、セノによる捕縛が行われていた。


・・・


 美術部は毎日、何時でも、美術室に出入りできる。成績に響かなければ、どれだけ美術に熱中しても良いとの方針らしい。カーヴェは授業を全て終えて、呼び出しも委員会もなければ、大抵は美術室に夕方までいた。
 からりと扉を開く。すると、ショウがカメラのレンズを持ち込んでいた。
「やあ、ショウ」
「……ああ」
 カーヴェと鍾離の提案で、写真部に必要な機材の一部が美術準備室に置かれた。その道具の中から必要分だけ持って来て、ショウは美術室の広い机でカメラの手入れをしていたのだ。
「コンクールに出るんだっけ」
「そうだ」
「写真は決まったかい?」
「まだだ」
 目を伏せている。ショウこそ美少年だなとカーヴェは思う。だれも触れられないような、鋭い気配をさせる絶世の美少年。そんなイメージだ。
 そういえば、ショウはどんな写真を撮るんだろう。カーヴェは考える。風景、植物、空。あまりにも、ショウのイメージと結びつかない。そもそも、彼の目指す写真はどんなものなのだろう。カーヴェはふわふわと考えた。きっと、美しい少年である彼は、それに見合う美しさを求めるのだろう、と。漠然と、そんなレッテルを貼る。良くないことだが、ショウはあまり喋らないから、カーヴェは彼のことをよく知らなかった。
「カーヴェ」
「ん?」
 扉を開いたまま、まだ入らないカーヴェにカメラが向けられた。
 ぱしゃり。
 目が、合っていた。
「後で現像する」
「うん?」
「あと、合宿の件で美術部の部長と話がまとまった。夏休みにどこかで二泊するらしい。場所はまだ候補を上げてる段階だ。行きたい場所があったら提案してほしい。我は場所はどこでもいいが、」
「が?」
「カーヴェがいない場所では意味がない」
 そしてショウはまたカメラを弄り始めた。カーヴェはぽかんとする。何を、彼は言った。処理が追いつかない。彼がこんなに喋ったのは初めてのことだった。


・・・

【現時点での設定】

七神学校…全寮制男子校。初等部中等部高等部がある。内部進学は全体の半分ぐらい。

カーヴェ…1-A/美術部/文化委員会/一級フラグ建築士
アルハイゼン…カーヴェを家族にした/カーヴェは兄/来年編入
ティナリ…1-B/科学部/園芸委員会
セノ…1-B/サッカー部/風紀委員会

鍾離…美術部と写真部の顧問
タルタリヤ…1-A/弓道部
ショウ…1-B/写真部
綾人…1-C/文化委員会
トーマ…来年編入
ディルック…1-A/剣道部/生徒会副会長
ガイア…来年編入

コレイ…ティナリとセノの妹分。カーヴェも知り合い。アルハイゼンとはあまり関わりがない。実は女子校に通っている。

寮の部屋
カーヴェとディルック
ティナリとセノ

【現時点でありそうなルート】
セノナリコレ+カーヴェ√
アル+カヴェ兄弟√
鍾離√
タルタリヤ√
ショウ√
ディルック√
ガイア√
義兄弟√

- ナノ -