きみへの理解2/カーヴェ受け/性別は男性で、性自認が女性で、性的趣向が男性のカーヴェくん/能力はサポート特化と捏造しました。武器すら持ってないよ。持てないよ。自己犠牲型博愛要素含みます/旅人(蛍)、パイモン、アルハイゼン、タルタリヤ、鍾離、綾人、綾華、トーマ、雷電
ルームメイト組が仲良しです(notCP)
誰落ちか私が知りたい(わからん)
※現時点のカーヴェはわりとマジで何も知らない。
※アルハイゼンが恋愛感情ではなくカーヴェの後方父親面してます。
※女性陣からは総愛され(友情)です。初期値からカンストしてる。


[newpage]


 タルタリヤは旅人から緊急だと呼び出された。何事なのだろう。あの胆力のある旅人が緊急などというのはかなり違和感がある。とりあえずすぐに仕事を切り上げて、待ち合わせとしてして指定された瑠月港に向かうと、すぐに旅人が駆け寄ってきた。パイモンも慌てているようだ。
「タルタリヤ! 来てくれてありがとう。璃月には詳しいよね?」
「相棒、急だね。何なの?」
「探してほしい人がいるの。金色の髪と赤い目の人。珍しい色味だから、見ればすぐわかると思う。じゃあ私は他の人にも声をかけてくるから!」
「え、ちょ、人探しはいいけどその人はどの辺りにいるの?」
「璃月港の外だと思う!」
 そう言って、旅人は走って行ってしまった。ええ、とタルタリヤは呆れと困惑の顔をそのまま表情に出した。あと面倒事に巻き込まれた気がする、と、ため息を吐いた。
「全く、後で戦ってもらわなきゃ」
 タルタリヤはまずは装備変えようと簡単に整えに向かった。

 璃月港の外。魔物が蔓延るそこをタルタリヤはトントンと歩く。しかしフィールドは広い。目当ての人物を見つけることは難しいだろう。特徴として聞いたのは金髪と赤い目というだけだ。どうやって見つけろというのか。タルタリヤは道中で魔物を倒すこともなく、適当に歩く。雑魚に構う気分ではない。あとで旅人に戦って貰えばいいのだ。
 そうして歩くことしばらく。朝だったのが昼となり、八つ時になった頃だ。ふっと、違和感を感じた。隠れるように、そっと歩き、木の影に潜む。
 それは小さな魔物たちだった。彼らは群れている。ほんの雑魚も雑魚だ。放っておいても、自然に淘汰される可能性が高い。
 そんな小さな魔物たちの中心に、人がいた。光を浴びてきらきらと輝く金色の髪。小さな魔物たちを見るために伏せられた目はルビーのように赤い。服装は赤っぽく、華麗である。骨格からすると、成人男性ではあるようだ。旅人の探し人、だろう。
 だがタルタリヤは動けなかった。その人が不意に立ち上がり、小さな魔物たちが彼の後ろに控えるように、下がったからだ。
 遠くからそれが現れる。巨体の猪、だろうか。最早動物ではなく、魔物そのものである。その巨体の魔物は体の至る所に怪我があり、ぼたぼたと赤黒い血を流していた。
 手負いの獣は、異常に強い。その上、猪という生き物は、強く硬い筋肉が多く、攻撃が通りにくい。確実に、弱点である眉間に強烈な一撃を当てることが、素早い討伐の基本である。
 だが、男性は魔獣を見て、武器も持たずに近寄っていく。何しているのか。タルタリヤは驚きで動けなかった。無謀すぎる。そもそも、男性からは戦闘に向く気配がしない。強者の気配がしないのだ。
 それでも、男性は止まらない。やがて手負の獣に両腕を差し出した。その両手が、柔らかそうで、爪先まで整った美しい両手が、獣の肌に触れた。
 何か、言った。唇が動いたのがわかった。すると、男性はルビーの目を閉じる。周囲の元素力がぐうんと動くのを、肌で感じた。何かが起こる。タルタリヤが息を潜めると、巨体の手負いの獣の、その足元から芽吹いた蔦が巻き付いていった。それは決して手負いの獣を拘束できるような太い蔦ではない。あまりに細く、柔らかそうなそれが、幾つも獣の肌を撫でるように包んでいく。やがて、蔦で覆われた獣が出来上がる。手負いの獣は動かない。男性もまた、目を閉じたまま動かない。
 静寂。
 しかし次の瞬間、蔦がぱっと輝いて、消えた。すると、そこには手負いの獣はいなかった。巨体ではないが、大きな獣がそこにいた。ふわふわとした美しい毛、頭部には角が生えていた。
 男性が目を開く。ルビーの目が角のある獣を見る。獣はそっと傅いた。角を男性に向けて、静かになる獣に対して、男性はそっとその場に座った。
 そして、手のひらを獣に向ける。ふわり、微かな草元素の反応。手には朝露に濡れた花が乗っていた。あれは何の花だっけ。少し、疑問に思う。
 角の獣は戸惑うように顔を上げる。そして、花を男性の手の上から食べる。食べ終えると、角を自ら男性の体に数度擦り付けた。男性は優しく微笑んで動かず、受け止めている。角の獣は満足すると、すっと四つ足で立ち、ふわりと浮いて、空へと駆けて行った。
 タルタリヤは何だあれと思って目を凝らそうとして、ぱき、と音を立ててしまった。
 すぐに小さな魔物たちが散り散りに消えていく。男性が気がついて、タルタリヤを見た。その宝石のようなルビーの目が丸く開いて、困った顔で笑った。
「そこに居るのは誰かな?」
 タルタリヤは気まずさを覚えながら、木陰から出た。
「あー、」
「んん? どうかしたのかい?」
「えーっと、相棒が」
「相棒?」
「いや、旅人! 旅人が貴方を探してたよ」
 嗚呼と、男性は納得したらしい。
「彼女か。黙って出てきてしまったから、慌ててるんだろうね。伝言ありがとう、すぐ戻るよ」
「貴方は旅人の居場所がわかるの?」
「いや全く分からない。でも、すぐに見つかりそうじゃないか?」
 微笑む男性に、タルタリヤは息を吐く。つまり、何の手がかりもなく、この人は広い璃月で旅人を探そうというのだろう。無茶である。さらに言うなら。
「で、貴方は戦えるの?」
 分かりきった質問をすると、男性は苦笑した。
「戦えないね」
 ああもう。タルタリヤは頭痛がした。この男性はダメだ。旅人の元に連れて行かねばならない。
「俺が連れてくから」
「でも、」
「この辺の雑魚相手から貴方を守ることはできるから。とにかく、相棒が焦って探してたんだから」
「あー、焦らせてしまったのか」
「心配してるみたいだったね」
「そこまでか。困ったな。彼女に心配をかけるつもりは無かったんだが」
「じゃあ戦えもしないのに単独行動はやめてね。行くよ」
「うん。ついていくよ」
 男性は素直にタルタリヤに近寄ってくる。あまりにも無防備で、素直で、疑わない。タルタリヤが彼を騙していたらどうするんだろう。また頭痛がした。大人だが、守らねばならないと思ってしまう。弟のような子どもを見ているような気さえした。
 タルタリヤが歩き出すと、男性もついてくる。ふわふわと歩く男性に意識を向けながら、タルタリヤはさっさと歩いたのだった。厄介そうな人である。

 璃月港に着くと、旅人に一報を入れる。すると、すぐに駆けつけた。
「カーヴェ、無事?!」
「わっ、落ち着いてくれ!」
「怪我は? 何もない?」
「大丈夫。怪我は無いよ」
 男性こと、カーヴェと呼ばれた彼は抱きついてきた旅人の頭をそっと撫でている。カーヴェは確かに男性だが、こうして改めて見ると顔も体も、隅々まで美しく整っていて、ふと一瞬見ただけなら性別が分からなくなりそうだった。美しい金色の髪も、男性にしては長い。
「で、相棒。連れてきた俺への報酬は?」
「あ、タルタリヤ。カーヴェを助けてくれてありがとう」
「いや俺は連れてきただけだよ」
 カーヴェはパチパチと瞬きしている。旅人はすぐに気がついて、言った。
「カーヴェ、彼はタルタリヤね。タルタリヤ、こっちはカーヴェ」
「僕はカーヴェ。タルタリヤ君、助けてくれてありがとう」
「俺はタルタリヤね。助けてないよ。ただ案内しただけ」
「魔物から守ってくれただろうに」
「戦闘なんて無かったじゃん」
 ジト目のタルタリヤに、カーヴェはそれでもだよと苦笑する。その一方で、旅人はタルタリヤが不満なのが分かったらしい。
「タルタリヤ、今度戦おう。それが報酬ね」
「いいよ。今からじゃダメなの?」
「カーヴェを送って来なきゃ」
「僕なら大丈夫だよ。というか戦うって何だい?」
「気にしないで。あと、カーヴェの大丈夫は大丈夫じゃないって知ってるんだからね。早く帰ろう。じゃあ、タルタリヤまたね」
「え、ちょっ」
 そのまま旅人はカーヴェの手をしっかりと握り、ワープした。なお、パイモンも消えていることだろう。おそらくどこかで食事でもしていたのだろうが。無銭飲食を旅人が許すはずがないので、モラは支払ってある俺と思われる。
 しかし、放置された。タルタリヤは呆れてしまう。旅人のカーヴェへの反応は過保護としか思えない。だが、カーヴェは過保護の扱いを受けるに相応しい程に美しく、綺麗で、疑うことを知らないような人だった。どうしようもない不満に、ああもうとタルタリヤは肩を落とした。
 そんなタルタリヤに声をかける人がいた。
「公子殿、どうかしたのか?」
「あ、先生」
 鍾離がきょとんと立っていた。

 鍾離に茶に誘われて、団子屋でおやつを食べる。そういえば腹が減っていた。食べていないので当然である。
「そういえばさあ、先生」
「何だ?」
「なんかふわふわしてて、角のある獣、知ってる?」
「うん?」
「あー、あと、空飛んでた。四つ足でさ」
 そこまで言うと、鍾離はそれならと言った。
「麒麟かもしれんな」
「麒麟?」
「古い生き物だ。魔物、獣、それらより、もっと古くから生きるものだ。神や仙に近い」
「はあ」
「単独行動を好み、警戒心が強く、人前には全く出てこない。そもそも孤独の中で生きるものだ」
「ふうん」
「姿を見たのなら幸運だったな。麒麟はその姿を見るだけで幸福を呼ぶものだ」
 鍾離はそう言って茶を啜った。タルタリヤはあの生き物が、と違和感しかない。だって、手負いの獣に化けていて、それでいてカーヴェが触れることに抵抗しなかった。
「なんかさあ、人が手負いの獣に触れたら麒麟とやらになって、人に傅いて、なんか花っぽいものを人の手から食べて。で、角をその人に擦り付けてから飛んでったんだよね。あんなのが幸福を呼ぶの?」
「んん?」
 タルタリヤの説明に、鍾離が首を傾げた。どうにもおかしい反応だ。
「いくつか疑問があるが、」
「うん」
「手負いの獣に化けていたのは、実際に怪我をしていた可能性がある」
「でも麒麟の姿には怪我なかったよ」
「ではその人物が怪我を治したのかもしれないな。とても人技とは思えないが」
「そうなの?」
 次に、と鍾離は言う。
「麒麟が人に傅くことは無い等しい。そもそも孤独であり、孤高な生き物だ。人間には最大の警戒をする筈だからな」
「ええ?」
「さらに手ずから花を食べた、となると。確かに麒麟は花を食べるだろうが、その辺りに自生する普通の花は食べない。人の手で与えられたものを食べるなど論外だ」
「はあ?」
 そして、と鍾離は極め付けに言う。
「麒麟にとってその角は神聖なものだ。自分が認めた人間に触らせる許可を与えて、眷属となる許可を与えても、自ら人間に擦り付けることは無い。それはつまり、自分が人間の眷属や配下になることを望んでいると伝えることになるからな」
「ちょっとよく分かんない」
「俺も分からないのだが、それは確かに人間だったのか?」
 不思議そうな顔に、タルタリヤは思い出す。確かに余りにも危機感のない男性ではあった。でも、カーヴェは、旅人の頭を優しく撫でた彼は、確かに人間だと思う。少なくとも、目の前の自称凡人よりずっと人間らしかった。
「人間だよ」
 タルタリヤの返事に、不思議なこともあるものだなと、鍾離は茶を飲んでいた。


[newpage]


 後日、しっかり旅人と戦った。場所はモンドの草原だ。自由の国なら邪魔するものがないからと、一日かかりで戦う。タルタリヤはもちろん強敵と戦うのが好きだが、旅人も大概戦うことが好きだと思う。戦いの最中に笑みを浮かべることはないが、常に真っ直ぐに相手を捕える。その目が大変好ましい。タルタリヤは先日の人探しの報酬と、最近の書類仕事の鬱憤を晴らすべく、全力を尽くした。

 そうするとクタクタに疲れてしまうわけで。双方が、帰ろうかと言い出した頃には汗をかいて息も切れていた。
「きみたち、終わったかいー?」
 は、とタルタリヤが振り返る。旅人もポカンとしている。聞き覚えのありすぎる声だ。こちらに手を振る人物が遠目に見える。
「カーヴェ?! なんでここにいるの?!」
「いや、モンド城内で依頼品を納品したら、旅人が少年と外に駆けて行って帰って来ないと聞いてね。こんな時間に女の子を出歩かせるのはダメだろう?」
「いや、そうじゃなくて!」
 旅人は慌てている。
「どうして家から出てるの?!」
「仕事だったからね」
「なんで外にいるの?!」
「いや、納品があったから」
「自宅で安静に待機じゃないの?!」
「仕事はするよ」
「そうじゃなくて!!」
 すごい。旅人が押されている。なお二人で走り寄ったところ、カーヴェは焚き火のそばにいて、隣ではパイモンがすやすやと寝ていた。ええ、何これ。
「とりあえず、休憩したらモンド城に戻って、宿に行こう」
「ワープ……」
「こんな時間に僕を送ろうとしないの。これでも大人なんだから頼っておくれ」
「ううー、パイモン……」
「寝てるよ?」
「非常食……」
「いくら可愛くても食べちゃダメだからね」
 そうじゃないんだよなあ。タルタリヤは息を吐いた。カーヴェは今度はタルタリヤに体を向けた。
「タルタリヤ君もほら、こっちに座って。あーあ、汗をかいて。こんなになるまで何をしていたんだい?」
 カーヴェが真っ白なハンカチでタルタリヤの額の汗をぽんぽんと優しく拭いた。ここだけ見れば大人だが、タルタリヤは彼がろくに戦えないことを知っている。とても不満である。
「戦ってただけだよ」
「戦い?」
「そう、戦闘。手合わせ?」
「また物騒だね。若いなあ」
「カーヴェさんは老人ってわけじゃないじゃん」
「だけど君たちよりは大人だからね」
 くすくすと笑う。暗い夜の中、焚き火で照らされたカーヴェは宝石のように輝いている。本当に美しい人だ。でも、宝石というにはあまりに弱い。何と表せばいいのだろう。
「さ、二人とも、軽く食べよう。その様子だと、ろくに食べてないんだろう。携帯食料ならあるよ」
「私が調理しようか?」
「いや、調理済みだから」
 カーヴェが鞄から包みを取り出す。そして、小箱にふわと手を被せると、一瞬、輝いた。元素力だ。それが鍵だったようで、小箱がある程度大きくなる。カーヴェがそのまま開くと、中にはサンドイッチがあった。
「モンドならサンドイッチかなと」
「いや何それ?!」
「タルタリヤ君はサンドイッチを知らないのかい?」
「そんなわけないでしょ?! いや、えっ携帯食料ってそんなのだっけ?!」
「ああ、これは知り合いの学者が開発したやつだよ。まだ発売許可は出てないけど、安全性は保証できるから」
「どんな学者?!」
「僕もよく分からない。本当に、申請とか、書類とか、その許可とか、どう降りてるんだろうね」
 カーヴェは本気で不思議そうだった。これは何も知らないようだ。旅人も遠い目をしていた。

 ひとまず、サンドイッチと飲み水を受け取り、食べる。美味しいので、困る。謎の技術力である。その学者とはなんだ。博士ではないことは確かだなとタルタリヤは思った。
 旅人ももぐもぐと無言で食べている。そんな二人をカーヴェは微笑ましそうに見てから、箱を閉じて、再び元素力を注いで小さくすると、鞄に仕舞った。パイモンを撫でているカーヴェを横目に、タルタリヤはサンドイッチを食べ終えた。旅人も食べ終えている。
「じゃあ行こうか。とりあえず二人はもう武器を仕舞うこと」
「えっ」
「何で?」
「二人とも疲れ切ってるだろう? とにかく仕舞って。帰るだけなんだから戦闘は無しだよ」
 でも、と旅人は渋る。タルタリヤとしても納得はできない。いくら何でも、戦えないカーヴェに、武器を仕舞ってついていくことはできない。二人の思いに、カーヴェは強情だなあと言った。
「僕はこれでも大人だから、処世術ぐらいあるよ」
「処世術って問題なの?」
 旅人の疑問に、カーヴェは優しい顔をしていた。
「ほら、仕舞って。すぐ分かるから」
 分かる、とは。
 カーヴェは鞄を肩にかけて、パイモンを抱き抱える。普段飛び回る彼女はまだ寝ていた。
 ふわふわとカーヴェが歩く。その後ろを、武器を持たずに旅人とタルタリヤは続いた。
 歩き出してすぐに、分かった。魔物たちの気配がしない。否、気配はする。でも敵対してこない。横を通っても、ヒルチャールでも、カーヴェと、カーヴェに続く旅人とタルタリヤを見ることすらしなかった。こちらは気配を消してはない。ただ、何事もなく、通り過ぎることを彼らは許容していた。
 カーヴェはパイモンを片手で抱え、手を軽く振る。ふわりと、光る花が現れた。鈴蘭に似ているが、それより大きい。それを道を照らす明かりとして、ふわふわと歩いていく。
 かくして、三人はひとつも争いが起こることなくモンド城内へと戻った。
「で、二人は宿をどこにとってるんだい?」
「とってないよ。タルタリヤは?」
「俺は忘れてた」
「いや、君たち……ああもう、僕がとってる宿に行こう」
 呆れた顔をしたカーヴェは、すぐに気を取り直して宿へと向かった。
 路地にある小さな宿では主人らしき若夫婦がカーヴェと旅人とタルタリヤを出迎えた。そして、カーヴェは帰りが遅くなったことを詫びてから、部屋に空きがあるか聞いていた。
 かくして。
「とても申し訳ないけど、僕が予約してる部屋と、あと空き部屋がひとつだったんだよね」
 部屋割りどうする?
 カーヴェは眉を下げていた。

 旅人はカーヴェと同じ部屋がいいと言ったが、カーヴェはいや僕は男性だしとなり、かといってタルタリヤと旅人が同じ部屋に、というのは宿の主人である若夫婦が了承せず。
 つまり、カーヴェとタルタリヤ、旅人とパイモンに分かれた。簡単に言うと、男女で分かれたわけである。

 寝るしかない。シャワーを浴びて、即寝る。タルタリヤは息を吐いた。カーヴェは知り合い同士が良かったかなと申し訳なさそうだが、いくら仲が良くて相棒と認識していても、異性と同じ部屋はダメだろうとタルタリヤは常識的に思った。たぶん。常識として。
 タルタリヤはカーヴェに声をかけてからシャワーを浴びて、カーヴェと交代する。髪を乾かして、荷物を整理した。万が一、仕事の連絡が来たらどうしようかなと思ったが、あの危機感皆無の大人ことカーヴェなら平気だろう。
 しかし何で魔物に敵対されずに城まで帰れたのか。ついでに言うなら先日の麒麟も、おかしな話である。個人的に麒麟について調べてみたが、鍾離の説明を証明することしかできなかった。つまり鍾離は正しいことを説明したのだ。だったら、今日のことも踏まえた上で、カーヴェがおかしい。
 何者なんだかと思っていると、カーヴェが髪を乾かしてからベッドに戻っていた。ベッドに座る音で察して、気がつかなかったと思わず振り返ると、真っ白な背中が見えた。
「えっ」
 声が漏れた。いや、裸ではない。服は着ている。ただ、襟ぐりが広いとかそういう問題ではないほどに、背中が露出するような服だった。軽装、というか。
「どうかしたのかい?」
 カーヴェが振り返る。胸元もぱっくりと開いている。体は薄い。肌はスネージナヤの大地が晴れた日の雪みたいに白い。滑らかで、傷のひとつもない。
 確かに、同性ではある。だが、カーヴェのルビーの目と整った顔立ち、長めの美しい金髪と合わせて、どうにも、あまりにも、目に毒であった。
「……薄着すぎない?」
 なんとかオブラートに包んで言うと、カーヴェはそうかなと首を傾げていた。自覚がない。この人はどうやって生きてきたんだ。というかどんな場所に住んでたんだ。
 タルタリヤはとりあえず顔を逸らす。カーヴェは不思議そうにしていたが、特に何も言わず、先に寝るよとベッドに潜り込んでいた。シーツの音がやけに大きく聞こえる。いや、何。何なの。
「ああもう……」
 たすけて相棒。


[newpage]


 カーヴェは普通に寝て、普通に起きた。夢を見た。しんしんと、雪が深い場所に立つ夢だった。

 朝日の中で、タルタリヤ少年はまだ寝ている。いや、青年かもしれない。ただ、若い子だなと思う。カーヴェはさくさくと着替えてから、声をかけた。
「タルタリヤ君、そろそろ起きないと朝食を食べ損ねるよ」
「う……」
「低血圧なのかい? 大丈夫?」
 ちょっと寝起きのルームメイトを思い出す。あれはめちゃくちゃ鋭く睨んでくるが、寝ている時は幼く見える。後輩だなと思う瞬間である。それはそれとして、起こさねばならないので起こすが。ルームメイトの場合は普通に仕事がある。目の前のタルタリヤ少年に関しては朝食を食べ損ねる。子どもに食事は大切である。カーヴェは家族が身近ではなかったが、そのぐらいの認識はあった。
「タルタリヤ君」
 肩をトントンと叩く。揺さぶる。うん。起きない。何やら眉間に皺を寄せている。揺さぶられたら、そりゃそうなる。指でくいくいと眉間の皺を伸ばした。緩んだ。幼いな。
「ほら、起きて」
 また肩を叩く。ぺしぺしと叩いていると、ゆるゆると目が開いた。青い目だ。深い海のような、それでいて、降り積もった雪の底のようである。
「っ!!」
「あ、急に起きて大丈夫かい?」
「平気。え、朝?」
「うん。早くしないと朝食、食べ損ねるよ。起きたなら、僕は先に食堂に行くね。一階だから」
「わかった……」
「また寝ないようにね」
「大丈夫」
 タルタリヤはのろのろと動き始めた。それを見て、カーヴェは弟ってこんな感じかなあと思いつつ、食堂に向かった。

 食堂にはもう旅人とパイモンがいた。パイモンはすでに料理を注文していて、朝の挨拶とメニューを教えてくれた。なお、パイモンとは定期的にお菓子類を渡す仲になっていた。もちろん作ったのがカーヴェであることは秘密だが、旅人が知っているので大丈夫だろう。
「で、カーヴェはどうやってアルハイゼンの監視を抜け出してきたの?」
 旅人の質問に、それかとカーヴェは言った。
「本当に、ただ仕事の納品に来ただけだよ。そもそも、行きはアルハイゼンが一緒だった」
「過保護だね」
「あいつもモンドに用事があったらしいから。でも書類を騎士団に渡したらすぐ帰ったよ。僕は旅人に送ってもらえとか何とか」
「あれ、私は信頼されたの?」
「ワープポイント」
「えっと、私への信頼じゃなくて、ワープポイントへの信頼」
「多分ね。ロリコンかと聞いたら怒ってたし」
「それはそうだよ」
「人間としてダメだからありそうだろ」
「むしろ恋愛とかするの?」
「ああ、恋愛感情が理解できないって言いそうだな。不合理とか、時間の無駄とか、手間が増えるとか、言いそう」
「分かる。カーヴェは仲がいいね」
「付き合いが長いだけだよ」
「アルハイゼンってカーヴェの保護者って感じがするよね」
「あっちが後輩なんだけど」
「でもカーヴェが無茶したら家の中に居させたりするのに」
「僕だって、普通に家事も仕事もするけど」
「言ってたね。本当に動いて大丈夫?」
「うん。ただ瑠月で知らない子の怪我を治したら元素力を使いすぎただけだからね。まあ、元素を使わなければ自然に回復するよ」
「寝なくていいの?」
「そこまで酷かったら流石に仕事も家事もしないからね」
「ううーん」
 そうこうしていると、タルタリヤが来たので、朝食を頼んだ。そして、すぐに運ばれてきたモンド式の朝食を食べ始めたのだった。なお、パイモンはずっと食べている。あまりにも食べる。流石である。
 旅人が各国の話をするのを聞きながら、食べる。肉などを小さく切って食べるのは癖である。これはスメールの、というか教令院の学者はわりとこれである。その上で、時間がない時は栄養の取れる飲み物だけで済ませたりする。カーヴェもそうだった。とにかく旅人の話に相槌を打ちながら、少しずつ食べた。これはアルハイゼンも同じ癖があるよなあとしみじみ思う。スメール学者あるあるかもしれない。
「そういえば渡したペンダント、つけてる?」
「ああ、つけてるよ」
 上着の下にあるペンダントを取り出す。旅人からの贈り物であるルビーのペンダントである。炎元素がどれぐらい含まれてるのかと、専門であるはずの同期の学者に見せたら頭を抱えられたし、カーヴェ自身の目利きからしても頭を抱えた代物だ。
 石の大きさは小さい方だが、石として純度が高く、宝石として価値が高く、カットの技術も高く、炎元素がたっぷり含まれていた。
 決して炎元素攻撃が使えるようになるわけではないが、カーヴェの元素力が万が一に尽きた際は躊躇いなく使えと同期から言われた。また、説明を求められたのでルームメイトにも同期の出した結果を説明したところ、同じ結論が返ってきた。
 カーヴェとしては、純粋に、少女である旅人からの贈り物として荷が重かった。大丈夫なのか。貢ぎ癖でもあるのか。
「うわすご」
 タルタリヤは価値をすぐに察したらしく、声が漏れていた。目利きができるというより、炎元素を感じたのかもしれない。神の目持ちだから、ありえる。あと、若いので。なお、旅人はにこにこと至極満足そうである。うん。満足ならいいよ、もう。カーヴェは上着の下にペンダントを仕舞った。
「これからどうするんだい?」
「私はカーヴェを送るよ。タルタリヤは?」
「適当に帰るから平気」
「そう?」
 そうして、宿の前でタルタリヤと別れて、カーヴェは旅人にしっかりと手を掴まれてワープした。もちろん、パイモンは旅人の腕の中である。


[newpage]


 カーヴェはルームメイトが決めた療養期間を終えて、元素力がしっかり戻ってから、また仕事にと駆け回っていた。だいたいスメール国内だが、他国からも依頼は来る。主に卒業後に各地に散った学者仲間や、教令院在籍の学者からのひっそりとした依頼である。大きな仕事はしばらくやめてねと、ティナリに言われたのだ。定期的に四人で会っているが、ティナリとは二人で会うことも多い。最近はコレイの話題が多く、家庭教師でもしようかと提案したところだ。コレイの返事待ちである。
 かくして、小さな仕事をせっせとこなし、人助けに精を出し、酒場で酒を飲み、ルームメイトに回収される日々である。流石に毎日は飲んでいないが。

 で、今回はまた、不思議な依頼が入った。
「稲妻ですか?」
 依頼人の稲妻の少女は頷いた。腰には雷の神の目がある。どうやら武人らしい。
「奉公先で離れ屋敷を建てることになりまして。ぜひ、名高い建築家であるカーヴェ様へと私が判断いたしました」
「普通の建築家だと思っておくれ。ええと、君はどうして僕を知ってるのかな」
「兄が教令院の出です」
「なるほど。稲妻で、後輩か。確かにいたな」
「はい。良くしていただいたと繰り返し言っていましたし、何より、私自身、カーヴェ様の作品を見ていて」
「ああもういいから、依頼は受けるよ。で、奉公先とはどこかな?」
「神里家になります」

 カーヴェは稲妻行きが決定した。図面などはスメールで描くと行ったが、測量や打ち合わせを考えると屋敷に来てほしいとのことである。部屋は用意しますと奉公の少女は言った。幼いが凛としっかりしていた。稲妻の屋敷はいくつか担当したことがあるし、研究もそれなりにしたことがある。なので、まあ問題ないだろうと、帰宅し、ルームメイトに言った。
「稲妻で仕事があるから」
「旅人ならスメールを走り回っている」
「すぐに彼女を移動に使うな」
 ワープポイント扱いは酷いと思う。

 荷物をまとめる。それなりに滞在することになるだろうから、生活用品はある程度向こうで買わねばならない。向こうで買えそうにないものを過去の記憶から導き出して、鞄に詰めた。スメール学者仲間提供の鞄は見た目のわりに荷物が入るし、なんならいくら詰めても軽い。どうなってるんだ。魔術関係だとセノは言っていた。怖い。

 かくして、翌日。奉公人の少女と待ち合わせて、稲妻へと向かった。なお、少女の名前は琴代というらしい。あと移動中にカーヴェ様なる呼び方はやめてもらった。おそらく同僚になるので、上下関係に厳しい稲妻ではかなり浮いてしまう。

 で、時間がかかるが安全優先の移動を経て、久しぶりの稲妻である。カーヴェは風景をしっかりと脳に焼き付けながら、琴代の案内に続いた。
 待って。カーヴェは思った。
「いや、神里家って」
「はい」
「僕はよく知らないけど、なんか、規模が大きくないかな」
「社奉行なので……」
 遠目に見た屋敷に、こそこそと話す。ちなみに琴代とはだいぶ打ち解けた上に、姉様と呼ばれかけている。それはあの、大変まずいので、やめてほしい。精神的に。カーヴェの性自認は女性なので胃が痛い。隠してるんだぞ。

 琴代の案内で門を通る。どうやら話は通っているらしく、奉公人の人たちは温かく迎えてくれた。
 どうやら当主などの重要な方々は忙しいらしい。カーヴェにはすぐに面会してほしいと、琴代たちに頼まれたが、カーヴェは忙しいのなら手の空いた時でいいからと断る。ただ、屋敷の敷地を歩くことと、建設予定地を見せてほしいとは頼んだ。
 人伝に許可を得たカーヴェは昼間の日差しの中で、道具を手に歩いた。道具とは言うが、メモと筆記具だけである。カーヴェは測量なら道具を使わずともできる。同期からは信じられない目で見られるものである。何故。あと暗算も大体できるので、計算用紙も必要ない。やはり異常な目で見られる。だが別にカーヴェとしては特技とは思っていない。頭の中にある建築物のイメージを図面になるべく早く落とし込むには、必須の技能だからだ。別に、出来ない人間を責めることはしないが。むしろ何なら教えるし、手伝う。
 ふんふんと見ていく。離れ屋敷の敷地はそれなりに大きい。まあ、製図が終わって大工に指示すれば帰ることになるだろう。稲妻式の図面は理解している。丁寧に書き込めば、大工が分からなくなることは何一つないだろう。あと、稲妻の大工の腕はいい。カーヴェはその点をとても気に入っている。
 かりかりとメモしていると、あれと声をかけられた。
 振り返ると、明るい髪色の少年が立っていた。カーヴェより黄色味を帯びた、金髪である。神の目を持っている。そして、出迎えてくれた奉公人の中にはいなかった。ならば位があるのだろう。
 少年は眉を下げた。
「ええと、どちら様ですか?」
「建築家のカーヴェです。依頼を受けて来ました。敷地内を歩く許可と、建設予定地の測量の許可は得ていますが、話は届いていませんか?」
「あれっ男性?!」
「ん? ああ、稲妻では少し紛らわしい格好ですかね」
「いやあの、ええと、ごめんなさい! 話は聞いてます。若とお嬢はまだ面会は出来そうになくて、その、部屋の用意は」
「部屋ならどこでも。最低限、製図台が置ければ大丈夫ですよ」
「そういうわけにはいかなくて! いや、まっ、て、くださいっ」
「うん?」
 少年の動揺が大きい。女性に間違えられるのは正直マイノリティとして怖いが、カーヴェ自身の服装の色味は稲妻のはっきりした服装の色味とは違って分かりにくいかもしれない。稲妻の男性服と女性服って大分違うよなとカーヴェは思う。カーヴェの赤い上着の色味は明るいので、稲妻なら女性服に見えるかもしれない。服を調達する時には気をつけよう。
 カーヴェがとりあえず測量に加えて、匂い、地面の状態などの普通ならば関係ないようなことまでカリカリとメモする。整えられた敷地は、きっと、この家の人々が好むものだ。ならば、それを壊すような建物はいけない。見た目の問題だけではない。使う材料や採用する建築技術に関わる、とカーヴェは思う。今回は異国なので気軽に来ることも出来ないので、指示は迷うようなものではいけないのだ。
 満足すると、振り返る。先ほどの少年はどうしたかなと思ってると三名になっていた。
 増えてる。


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 トーマは焦った。異国の建築家に離れ屋敷の依頼することになったとは知っているし、簡単に依頼を受け入れられたとは手紙で聞いていたし、それに到着の一報もあったし、許可についても話はあった。あったが。
 あまりにも美人であった。モンド人ではないとは思う。モンドとも、稲妻とも、全く系統の違う美人であり、それでありつつ男性だった。混乱ここに極まれり。
 ということで、トーマは若こと綾人とお嬢の綾華が今いる筈の部屋に向かった。

 何を焦るのか、というと。トーマはあの異国の建築家を奉公人の皆さんと同じ部屋でいいのかという話をしたかった。いやあれはダメそうでは。食事は口に合うのか。ていうか稲妻の言葉が滑らかすぎてビビる。服とかどうするんだ。
「若、お嬢、っ!」
「どうしたんだい」
「あら?」
 トーマの要領を得ない話に、綾人と綾華はとりあえず異国の建築家がいる場所に向かった。あまりの慌てぶりに違和感があったからだ。

 かくして、トーマは異国の建築家が立っていた場所がよく見える廊下に案内した。異国の建築家は小さなメモ用紙にペンを走らせている。その音は途切れない。
 初夏の風、青々とした木々の葉。整えられた、敷地の中。その後ろ姿はしゃんと伸びていて、完成された絵画のようであった。
 やがて、ペンの音が止まった。異国の建築家が振り返る。柘榴石のような目。金色の髪はトーマより黄色味が強い。長めの髪は結ぶことなく、細い三つ編みと赤いピンで留めていて。鮮やかな赤い上着と金色の装飾品は華麗であり、大きな耳飾りが小さな顔を引き立てる。そう、何より、目鼻立ちが整っていた。成人男性ではあるが、白い肌と傷もそばかすもひとつもない肌が合わさることで、中性的に見えた。美しくて、綺麗。そして驚いていた顔が、微笑んだ。まるで花が咲くようだった。
「当主の方々でしょうか? 建築家のカーヴェです。依頼を受けて参りました」
 お時間は大丈夫でしょうかと、彼は丁寧に言った。

 綾人と綾華とトーマとカーヴェはとりあえず客間に移動した。異国の建築家ことカーヴェは、正座を苦痛とは思わないらしく、すぐに打ち合わせを始めた。
 カーヴェの説明は分かりやすい。綾人と綾華の要望を丁寧に拾い上げていく。いや、そもそもは綾人しか対応する予定はなかったし、トーマが同席する予定もなかった。トーマはカーヴェの扱いを綾人に相談したかっただけだ。
 そして、綾華はというと、カーヴェを一目見て大層気に入ったのである。
 その勢いは凄かった。持ち前の社交力ではなく、キラキラと目を輝かせてカーヴェに走り寄ったのだから。
 なお、カーヴェは特に気にすることなく、綾華に対して、一人の姫君として穏やかに接していた。
 また、カーヴェはどうやら稲妻に詳しいらしく、トーマ、綾人、綾華の三名とのやり取りはとてもスムーズであった。
 打ち合わせは程なく終わる。一度、絵に起こして、また打ち合わせをお願いしますとカーヴェは言っていた。
「あの、」
「どうかされましたか?」
「カーヴェ様に少しお願いがありまして」
「僕はただの建築家ですよ」
「いえ! そうではなく、装飾品にお詳しいのではありませんか?」
「一通りの目利きは出来ますが、専門の方ほどでは」
「ぜひ見てほしいものがあるんです! こちらへ!」
「はい」
 カーヴェは失礼しますと、挨拶してから、稀に見るほど楽しそうな綾華に続いた。いや打ち解けている。トーマはぽかんとした。何が綾華の琴線に触れたかは不明だが、あれはまるで。
「姉妹のようだね」
 綾人が言う。トーマとしても同じであった。どうにも、異性として互いを見ているようには見えない。カーヴェが綾華を見る目はとても柔らかく、温かいものだった。依頼として、仕事として、だけではなく、綾華を優しく見守るものだ。
「トーマの心配事だけれど」
「あ、はい」
「離れの部屋を用意しよう。多分、綾華が気軽に訪ねたいだろうから」
「確かに」
 そう納得して、トーマは綾人の前から下がり、指示に向かった。

 そして綾人はやや考えたのちに、執務室へ向かった。

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