アルカヴェ/脱ぎ捨てたヒールのかかとが欠けていた。/掌編
診断メーカーよりタイトルお借りしました。


 カーヴェがヒールのついた靴を履いていた。
「贈り物だぞ」
 ふふんと、カーヴェはその小さな靴を履いている。
「意外と歩きやすいな」
 バレリーナのように、爪先立ちで。彼はふらふらりと歩いていく。
「なあアルハイゼン、明日は晴れるかな」
 とんとん、ぱ。彼はくるりと振り返る。
 アルハイゼンはただ、閲覧だけを許されている。
 だとしても、黙っているのがアルハイゼンではないのだ。
「その靴は君には小さすぎる」
 腕を捻り上げて、転んだ男の足を掴む。
 カーヴェは目を丸くして、それからわなわなと振るえて、怒り出そうとしていた。
 だが、アルハイゼンは許さない。
 虚飾は、無意味だ。
「早く脱ぎ捨てろ」
 アルハイゼンはそう言いながら、靴を掴んで投げ捨てた。かつん、と落ちたヒールは、最初から欠けていた。

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