アルカヴェ/にょたゆり/希望/掌編/朝から晩までと同じ二人です。


 カーヴェの美しさを、アルハイゼンは言葉にしない。言葉にしたら、定義したら、それは壊れ物になってしまう。敢えて言葉にしないこの愛を、目の前のいとしい女性は分かってくれるだろうか。
 否、分からなくていい。ただ、カーヴェとアルハイゼンが寄り添って生きていくことに、これは何の意味もない。
 カーヴェはアルハイゼンの唯一無二であり、アルハイゼンはカーヴェの唯一無二だ。そう願っている。希うアルハイゼンをカーヴェは笑うだろう。
 いつか、純白のドレスを着て、結婚式を挙げよう。アルハイゼンが言えないことだった。同性婚が許されないから、ではない。カーヴェにとってアルハイゼンとの、この関係は、永遠ではないのだ。
 カーヴェはいつかこの鳥の巣のような家から羽ばたいて行く。それをアルハイゼンも望んでいる。その上で、カーヴェが戻って来た時が、頃合いだろう。
 果実はきっとこれ以上なく熟れていて、アルハイゼンの大きな柔い手が触れるだけで、ぐしゅりと崩れる。そんな、とっておきの果実だ。
「カーヴェ」
 すっかり寝入っているその人。同じベッドで、ただ寝ただけの夜。アルハイゼンはたまに目を覚まして、カーヴェがここに居ることを確認する。
 本当は、アルハイゼンだって限界なのだ。いとしいひとには、本当は一緒にいて欲しい。この美しいひとを外に出したくない。男たちの目に晒されると思うと、全員の頭を切り落としたくなる。
「すきだ」
 すき、大好き。カーヴェ。俺のいちばん。
「一番にさせてくれ」
 君の一番も、俺であってほしいんだ。

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