アルカヴェ/無神04/掌編


 あたたかさ
 は
 さみしさだ


『無神』


 いつもの日常に、カーヴェだけが一石を投じる。
 それをアルハイゼンは受け入れる。その変化が、アルハイゼンの視野になる。欠けた人間同士がぶつかる事で、新たな境地が拓かれる。
 開─拓。
 それをアルハイゼンは好ましく思う。ただ、相手がカーヴェだからこそ、である。自分の認めた、同じレベルの人物だからこそ。
 酒場で寝ていたカーヴェを抱いて、夜のスメールシティを歩く。カーヴェはノートをしっかりと握っていた。酒場のマスターが渡したらしい。落書きで埋めてくれよ。そう言われた。残念ながら、アルハイゼンはそのノートは家に着き次第燃やすつもりだが。
 家に着くと鍵を使って帰宅する。リビングを通り抜け、寝室に入る。アルハイゼンのベッドに寝かせて、寝るのに邪魔そうなアクセサリーを取る。そして、アルハイゼンは上着を抜いで、そのままベッドに横になる。カーヴェを抱きすくめるように引き寄せて、すうっと息を吸う。胸いっぱいにカーヴェの匂いがする。カーヴェはいつも、しっとりとした夜露のような匂いがするのだ。香油はスメールローズ等の華やかなものを好んでいるので、この夜露のような匂いは、カーヴェ自身のにおいかもしれない。
「……ん、あるはいぜん?」
「まだ寝ていていい」
「ん、いいこ、いいこ、僕のかわいいアルハイゼン」
「ああ、君の俺だ」
 寝ぼけたカーヴェはへにゃりと笑って、アルハイゼンの胸に擦り寄る。より密着して、すうすうと寝た。その安らかな様子に、アルハイゼンは仕方ないなと抱きしめて、眠った。

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