アルカヴェ/新約07/掌編


 仮令(たとい)、世界が僕を必要としなくても。

 夢を見ているみたいだ。カーヴェはふわふわと意識が浮くのを感じる。酒を飲んで、それで?
 ソファに沈む。誰かが僕を見ている。
「ここで寝たら風邪をひくぞ」
 そんなのどうでもいい。ただ、現実を忘れて、何も考えず、ぼうやり、とする時間が欲しい。
「君は君が思うより考える頭を持っているよ」
 そんなもの、いらない。たとえ、仮令(たとえ)、僕が本当に賢いならば。きっと母さんも父さんも幸せになれたのに。
「ぼくなんか、が」
 その先は言えなかった。柔らかな何かが僕の口を塞いでいた。なんだろう。
「カーヴェ、君は、俺の大切な……」
 ああ、意識が落ちていく。
 おやすみ、世界。僕はまだ、愚者のままだ。

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