アルカヴェ/新約04/掌編
やさしさと、いたみ。
死に至る。カーヴェはかひゅ、こひゅ、と呼吸する。うまく呼吸できなくて、アルハイゼンが背中をさすっている。カーヴェにはやる事がある。何度、アルハイゼンに否定されようとも、人を裏切れない。依頼を受けたのは自分だ。自分にしか出来ないから、自分がやるのだ。それが、カーヴェに課された罰だ。
わるいこ、だめなこ、不幸を振り撒いた子。母だけでも幸せに出来ただろうか。
視界が霞む。アルハイゼンがカーヴェを抱き上げた。
「ベッドに行く。安定剤を打つぞ」
「やだ、やめて」
「今の君を放置していたら何をするか分からない」
薬は、カーヴェの精神を麻痺させる。ただの廃人となれというのか。建築デザイナーに、廃人になれと。
「やだ、やめろ、おい、アルハイゼンっ!」
「君は」
アルハイゼンが立ち止まって、じっとカーヴェを見た。その不思議な目が、カーヴェだけを射抜いている。思わず、身体が竦んだ。
こいつには、もう、嫌われているから、僕へ向ける期待なんてないのに。
「もう少し俺のことを考えろ」
「っはあ?!」
意味が分からない。考えているだろう。だから、君は僕が嫌いなんだ。
「きらい、きらいだ!!」
君なんか、君なんか。
「僕を捨てて幸せになれよ!!」
アルハイゼンはただ、凪いだ目で僕を見ていた。