アルカヴェ/新約02/掌編


 あいしてる。

 愛とは呪いである。旅人は思う。愛とは、都合の良い意味呪いであり、他人を拘束する大義名分として扱われる。だから不思議だった。
「アルハイゼンはカーヴェを愛してないの?」
 家事をするカーヴェの周りをパイモンが飛んでいる。
 アルハイゼンは本を読む手を止めて、言った。
「愛したところで、あれはどうにもならない」
「そうだろうけど、大義名分にはなるよ」
「そんなものを利用するつもりはないし、必要もない」
「どうして?」
「すでにあれは呪われている」
 あれは肉親に呪われたままだ。アルハイゼンの刺々しい言葉に、なるほどねと旅人は苦笑した。
「すきなんだ」
「そう見えるか」
 アルハイゼンは視線を本に戻した。

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