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 魔女裁判殺人事件・承
魔女裁判殺人事件・承


 誰かが警察を呼ぶ前にと、コナンが走る。まずは目の前で事件が起きた金と黒の二人組だ。
「こんにちは!」
「うん? こんにちは」
「こんにちは。ねえ、あの事故現場は見ないほうがいいよ。警察なら俺たちが呼ぶから」
「えっと、少し話を聞いてもいい?」
「うはは、肝が座っているな! 話してみるといい」
「ちょっと……」
 則宗が笑顔になる。加州は迷惑そうに眉をひそめた。
「お兄さんたちのお名前は?」
「福岡則宗だ。こっちの坊主は加賀清光」
「よろしくね」
「ボクは江戸川コナンだよ! で、二人から見て何が起きたかな」
 コナンの質問に、清光が不快そうにしかめっ面になる。
「二人から見ても何も……事故でしょ? 足場の鉄パイプで……あんまり言いたくないね」
「見事に串刺しだったな。全く憧れないが」
「そっか!」
 教えてくれてありがとうと、コナンは一旦則宗たちから離れた。あまり機嫌の良い様子ではない。まあ、人が目の前で死んだらそうもなるだろう。

 次に、赤い髪にスーツの人へと駆け寄る。
「こんにちは!」
「ああ、こんにちは。僕に何か用か?」
 アルトの声。意外と高い声をしているな。コナンはすぐに問いかける。
「ちょっとだけ聞きたいことがあるんだ。お兄さんたちの名前を聞いてもいい?」
「僕はジェイド=アマリリス。亡くなったのは高川音糸だな」
「二人はなんのお仕事をしてるの?」
「僕は英国の商社勤めだな。音糸は看護師らしい」
「仲良しなの?」
「いや、面識はほぼ無い」
「喫茶店に一緒に入ったのに?」
 コナンの問いかけに、アマリリスはよく知っているなと小首を傾げた。
「ああそうだな。だが、別段特別な話はしなかった」
「ふうん。じゃあお兄さんから見て、どう思う?」
「どうも何も、この程度で……」
 そうして目を細めたアマリリスに、コナンは待つ。そして、アマリリスは口にした。
「この程度で、死ぬならそれ迄だ」
「え?」
 いや、何でもない。アマリリスはにっこりと笑った。まるで仮面のような笑顔だった。

 通りがかりに、落ちてきた足場の鉄パイプをよく見る。どうやらネジが外れたり劣化などではなく、パイプの途中から何かにねじ切られた様子である。とてもじゃないが、人技には見えなかった。

 泉と雪と細雪は、何やら気が立っている。張り詰めた空気が漂う三人だったが、コナンは臆することなく話しかける。
 もちろん、蘭と灰原の無事は目視で確認している。
「まさか、こんなことになるとは、おもいませんでしたね」
 きょうこうすぎます。細雪の証言に、コナンは首を傾げた。
「心当たりがあるの?」
「ぼくたちは、このために、きましたからね」
「どういうこと?」
 コナンの問いかけに、細雪は代表して宣言する。
「ばけもの、がいます。それも、とびっきりの、こころもたぬばけものです」
 化け物。コナンは口の中でその単語を転がした。


・・・


「大包平、鶴丸」
「何だ」
「何だい」
「時間遡行軍と歴史修正主義者の姿は気配はあるか?」
「全く無いな」
「同じく。どうやらこれは俺たちが首を突っ込む事件じゃないが……巻き込まれたな」
「やっぱ、そうだよな」
 ここで帰還したっていいが、それはあんまりにも無責任だろう。獅子王は告げる。
「コナン君の命を守り、手伝いをする事。いいな」
「勿論だ!」
「当然だな」
 良しと獅子王はコナンに駆け寄った。

 蝉の声がする。季節は夏。燃えるような夕暮れが近づいていた。



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