フェアリス/宝石と植物ときれいなもの3/鬼灯(弟)+オリビン中心


 コバルトスピネルが宝石を集めていた。何をしているんだろう。鬼灯が近づくと、彼女はすぐに気がついた。
「あ、鬼灯の弟!」
「うん、おはよう。何してるんだい」
「宝石を集めてるの。魔力があるし、魔法に使えるし、何より」
「何より?」
「綺麗だから!」
「あ、そう……確かに綺麗だね。君みたいだ」
「まあ、鉱物だもの」
「そうだね」
 コバルトスピネルが集めた石はどれも青い。ターコイズもあるなと眺めていると、あれと気がついた。
「これ、エメラルド?」
「そうだよ。オリビンに渡そうと思って」
「へえ」
 アイツにねえ。鬼灯が不思議そうにするので、彼も宝石が好きだよとコバルトスピネルは笑った。
「特に緑色が深いものが好きみたいだよ」
「そうなんだ」
「彼もやっぱり鉱物だもの。エメラルドとなれば、自分自身みたいなものだし」
「よく分からないな」
「鬼灯の弟も植物見てて思わない?」
「ああ、そう言われると、思わなくもないかな」
「だよね!」
 コバルトスピネルはにこりと笑うと、宝石を箱に丁寧に仕舞い始めた。手伝うのも野暮なほど真剣なので、鬼灯はじゃあねとその場を去った。
 リリエの森は今日も妖精たちで賑やかだ。ワカメことウーディーがどうしたら風呂がいっぱいのスフィアを用意してもらえるかと悩んでいる。付き合いの良い桜餅があれこれと案を出していて、楽しそうだ。
 いつものスフィアに戻ると、紅茶の香りがする。あれとリビング部分を覗くと、オリビンとシネレアが紅茶とチョコレートを楽しんでいた。シネレアが先に鬼灯に気がついた。
「鬼灯の弟かい」
「そうだよ。シネレアは何しに来たの」
「見ての通りだけど」
「ティータイムだね」
 オリビンがくすくすと笑う。どうやら仲の良い妖精と会えて上機嫌らしい。
 僕の前では、そこまで笑わないのに。鬼灯がむっとすると、オリビンはキョトンとした。
「どうしたんだい」
「いや、なんでも」
「そうかな?」
「そうだよ」
 鬼灯はアトリエスペースに入って画材を手にカンバスに向かった。
 夕方まで篭っていると、流石に腹が減ってくる。キッチンスペースに何か無いかなとアトリエを出ると、オリビンがリビングでアップルパイを大皿に移していた。
「焼きたてのアップルパイだよ」
「そんなことできたの」
「得意な妖精がさっき作ったからとお裾分けしてくれたんだ。食べるだろう」
「うん」
「トナカイ達も呼ぼう」
「いいんじゃない?」
 オリビンがスフィアの奥に行く。トナカイ達を呼びにいったのだろう。鬼灯はアップルパイの1ピースを手掴みして、パクリと食べた。
「これが」
 オリビンの手作りだったらなあ、なんて。目の裏には、コバルトスピネルが言っていた、深い緑のエメラルドが浮かんだのだった。

- ナノ -