フェアリースフィア/和菓子わーるど!/オリビン+桜(兄)/成年体+幼年体を想定しています。/弊スフィア設定です。全てのストーリーは読めてません。二次創作です。


 暖かな陽射しの中。日溜りで、桜色が座り込んでいる。
「ああ、桜。ここに居たのか。何をしているんだい」
 オリビンが声をかけると、桜はいや何と口にした。
「花が咲いていたんだ」
 そっと見つめる先を確認すれば、そこには小さな白い花が揺れていた。
「花か。綺麗だね。すずらんかな」
「鈴蘭か、良い名だ」
 桜は小さな手でそっと鈴蘭を撫でる。オリビンはその、花を手折らない姿勢に好感を覚えた。自分は花の妖精ではないが、美しいものを美しく存在させることについては、少し煩い自覚がある。
「桜は花が好きなのかい」
「特には思わん。ただ、拙者には声無きものが必要だ」
「たまには静かに居たいわけか」
「そうとも言う。して、オリビンは何故拙者の元に?」
 立ち上がり、くるりと桜が振り返る。それがねと、オリビンは困り顔になった。
「和菓子というものを頂いたのだけど、私は得意ではなくてね。桜には馴染みがあると魔法使いから聞いたから」
「虚無作りから? ふむ……食べ合わせの問題だろう」
「食べ合わせ?」
 きょとんとするオリビンに、どんな食べ物でもあるだろうと桜は言う。
「和菓子は、緑茶や抹茶なぞが合う。紅茶や珈琲は比較的合わん」
「そうなのかい」
 ふうむと首を傾げたオリビンに、話を早く進めようと、桜は両手を伸ばした。
「和菓子を見せてみろ。良い茶を見繕おう」
「それは助かるよ。ありがとう」
「ふん」
 オリビンはそっと桜と手を繋ぐ。だが、身長差があったので、オリビンはそのまま桜を抱き上げた。縦抱きにすると、桜の顔がよく見える。彼も綺麗な妖精だ。特に、外見だけなら儚さすら感じる美しさは、オリビンには無いものだった。確実な美こそが、オリビンという妖精なのだから。
 きらきらとした光の中で、桜の目がオリビンに釘付けになる。
「オリビンは美しいな」
「おや、ありがとう」
 桜がぺたぺたとオリビンの頬を触った。そしてじっと目を覗き込む。そして、満足そうに微笑んだ。
「緑色の目というのも、悪くない」
「お前の桜の色もきれいだよ」
「当然だ」
 桜はそっとオリビンのまぶたを撫でて、では向かおうとオリビンを急かした。オリビンは勿論さと、和菓子のあるスフィアへ向かったのだった。

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