フェアリースフィア/優しくて甘くて/オリビン+シネレア+トナカイ/成年体+成年体+幼年体を想定しています。/弊スフィア設定です。弊スフィアで、シネレアがオリビンにチョコレートを勧めてる写真が撮れたので、そこから妄想しました。全てのストーリーは読めてません。習作です。二次創作です。


 一人で居る事に寂しさはなく。穏やかに、時間が過ぎていく。
 ただ、魔法使いが作ったスフィアは決して一人用ではなかった。
「オリビン、何してるべ?」
「トナカイかい? 私は飲み物を作っているけれど」
「苔はあるべか?」
「ああ、そっちの戸棚に仕舞ってある筈だよ」
「高い位置だと届かないべ! オリビン頼むべ!」
「うん、移動させておくよ」
 戸棚から取り出した苔をナイフで分けて、一部をトナカイに渡す。トナカイは嬉しそうに笑顔でオリビンに礼を言うと、ぴょんぴょん跳ねるかのように上機嫌で暖炉の前にある長椅子に向かった。
 それを見送ってから、オリビンはさてととカフェオレを一口飲むと、時計を見た。そろそろ、彼が出てくるだろう。
「……はあ」
 ため息。オリビンが振り返ると、フラフラとしたシネレアがいた。
「おはよう、シネレア」
「……おはよう。甘いものある?」
「お前のチョコレートなら、新しいものを魔法使いが運んできたよ」
「魔法使いも暇だね」
「スフィアを管理してくれているだろう」
「そうだけど……マメすぎるし」
「お前用のアトリエも設けてくれたじゃないか」
「それはそうなんだけどさ。少し、ボクには勿体無い」
「リビングでウンウン唸るお前にトナカイが心配していたけどね」
「それは悪かったよ」
「まあ、集中できる環境ってやつが必要なら、アトリエはいい案だと思うね」
「オリビンは何か用意してもらったかい?」
「私は鏡だよ」
「ふうん」
「小さいけれど、個人のスペースを貰ってるからね、魔法使いの心遣いが嬉しいかな」
「そのわりによくキッチンに居るよね」
「そうかい?」
「そうだよ」
 はあ。シネレアはまた息を吐いた。オリビンはそのため息の意味が分からず、首を傾げた。
 シネレアのことだから、きっと執筆について悩んでいるのだろう。私には分からない話だな。オリビンはカフェオレをまた一口飲んだ。
「まあいいや。チョコレートはどこ?」
「いつもの棚だね」
「ああ、あそこか」
 ごそごそと棚の高い位置に手を伸ばし、チョコレートの箱を手にした。
「オリビンも食べる?」
「一粒ぐらいなら」
「味見程度に、って?」
「私は甘味にこだわりが無いからね、お前のチョコレートを貰うのは気が引けるよ」
「キミにしては控えめだね」
「そうかい?」
「うん、とても」
 シネレアは箱を開き、チョコレートを一粒手にすると、ほらと差し出した。オリビンはそれを見て、長い髪を抑えながら、そっと食む。離れ、咀嚼し、飲み込む。
「甘いなあ」
「嫌い?」
「嫌いではないけれど、私はカフェオレでいいよ」
「そう? まあいいけど」
 じゃあリビングに行こうかな。シネレアがキッチンを離れるので、オリビンは、ストーブ前の長椅子にトナカイが居る筈だよと、伝えたのだった。

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