どこだろう。あのせんぱいはどこだろう。

………

 ふらふらと綾部は学園内をうろつく。あの綾部が自由時間に穴を掘ってないことに滝夜叉丸は目を見開いた。自由時間でなくとも授業中ですら掘っているような喜八郎が。

(珍しいこともあるものだ。)

 滝夜叉丸はその時、その一言で綾部喜八郎の奇行を片付けた。

………

 せんぱい、せんぱい。

………

 あれ、喜八郎が久々知先輩と一緒だ。そう三木ヱ門は思った。その通りに綾部は久々知にべったりと張り付いていた。そこは図書室の角で、図書委員で当番だった怪士丸も少し不思議そうにしていた。

………

 せんぱい、もう少しでせんぱいは。

………

「喜八郎が?」
「ああ、珍しい光景だと思って」

 滝夜叉丸くんと三木ヱ門くんがそう情報交換をしていて、ああなるほどと思った。それにしても兵助くんがそんな簡単に近づけるなんてと思う。でも、何となく喜八郎くんと兵助くんは似てるから警戒心みたいなものがあまり湧かなかったのかもしれないね。

「二人ともーはやくご飯食べちゃおうよー」
「それも、そうですねタカ丸さん」
「おばちゃんA定食ひとつ」
「はいよー」

 お昼を食べていると食堂に入ってくる二人の人影。あれは。

「喜八郎、と久々知先輩…?」
「おばちゃんB定食をお願いします」
「わたしもB定食でお願いします。せんぱい、おとうふさしあげますね」
「ありがとう綾部」

 三木ヱ門くんと滝夜叉丸くんが目を見開く。多分兵助くんと喜八郎くんが仲良さげだからだろうなあ。

 二人は定食を持って空いている机に向かう。先に喜八郎くんが座って、それから兵助くんが座る。マイペースな喜八郎くんらしいし、兵助くんは気にしない性格だもんね。滝夜叉丸くんは先輩より先に座るなんて!って顔をしてるけど。

 食べ出した二人に集まる視線。でも二人は気にしてないみたいだ。ふと、喜八郎くんが兵助くんをじっと見る。兵助くんは綺麗な動作で食事をしていた動作を止めて、喜八郎くんに話しかける。

「どうした?」
「せんぱい」

 喜八郎くんが兵助くんに近づいて。

………

 わたしのものになるのでしょうね。

………

 口元を舐めた。

「「〜!!」」
「どうした喜八郎?」
「…おとうふがついてました」

 うん。兵助くんの口元に豆腐ついてなかったよね。ただ舐めたかったんだねえ。

「たたたたタカ丸さん、あああ」
「落ち着いてー三木ヱ門くんー」
「き、喜八郎が、く、久々知先輩の、頬を?頬を?!」
「頬っていうか口元だよねー滝夜叉丸くんー」

 動揺して箸を落とした上に言葉にならない言葉を発している滝夜叉丸くんや三木ヱ門くんとその他大勢を生温かく見ていると、それを全く気にしてない兵助くんはこういった。

「そうか、ありがとう」

 兵助くん…





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