※久々知が尾浜を勘ちゃん呼び

勘ちゃんはお祭りが好きで、お菓子が好きだ。饅頭や大福、煎餅、飴。苦手なお菓子が無いのだろうかと思うのがバカらしく思うくらい、勘ちゃんはお菓子が好きだ。

「でもね、勘ちゃん」
「うん…」
「今回は反省しよう」

勘ちゃんは落ち込んで頷いた。そして頬を摩る。そう、勘ちゃんは虫歯になったのだ。

「食べ過ぎなんだよ」
「美味しいから…」
「お菓子のせいにするのは良くない」
「それはわかってるけどさー」

勘ちゃんはそう言いながら煎餅に手を伸ばす。甘いものではないからと大目に見て何も言わないでいると、勘ちゃんは伸ばした手を途中で止めて手を戻した。いい子だね勘ちゃん。

「あーお菓子を食べたい」
「しばらくの我慢だな。治ってから思う存分食べればいい」
「そうなんだけどさー」

勘ちゃんはそう言うとゴロゴロと部屋の床を転がる。前に一のはの有名三人組がやってたなそれ。

「ねえー兵助はお菓子食べたく無いの」
「あんまり食べたくならないな」
「えー」
「おやつを食べたくなったら高野豆腐だし…豆腐美味しい」

自覚済みでうっとりと言うと、俺の豆腐に対する愛を知る勘ちゃんは生暖かい眼差しを向けてきた。豆腐美味しい。

「兵助は相変わらず豆腐好きだね。俺はお菓子食べたくなるなあ」
「人それぞれとはまさにこの事だな。とりあえず早く治るといいね」
「まったくだよ!」

そう言った勘ちゃんはまたゴロゴロし始めた。多分お菓子への欲求を紛らわす為だろう。

「ところで兵助。書物を捲る手が止まってるよ」
「ちょっと勘ちゃんの行動を考えてた」
「だってー」

不貞腐れる勘ちゃんに、俺は溜息を吐いて言う。

「あんまりにも食べたいなら少しぐらいはいいんじゃないか。歯磨きちゃんとするなら」
「そうだね!じゃあ秘蔵の饅頭があるんだ!兵助も食べよう!」
「いや秘蔵って何。何で俺も食べるの」
「一人で食べるより二人の方が美味しいっていうじゃん」

さあさあと、勘に勧められるままに秘蔵の饅頭とやらを手に取る。どう見ても普通の饅頭だが、さっきスルーされたということはツッコんではならないのだろう。

「いただきまーす」
「いただきます」

饅頭を一口食べると、口内に広がる甘み。久しぶりの甘味に、たまには良いなと思うのだった。





甘味不足少年に付き合う
(美味しいなあ、もう一個食べたいなあ)
(勘ちゃん…)
(流石に冗談だよ!食べてて痛いし!)
(痛みが無くても虫歯なんだから控えるべきだから)


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