ツイステ/カリム+シルバー/花と炭酸/14万打お礼リクエスト企画より。ふじっこ様、リクエストありがとうございました!


 遠巻き、花びらの中、わらう。

 宴というものに、関わったことがなかったと、痛感させられた。シルバーは飲めや歌えや、騒げや踊れの華やかな宴に、目を白黒とさせる。幾分か前に、ジャミルが気を利かせて、料理を取り分けて持ってきてくれていなければ、シルバーはぽかんと立ち尽くしていたことだろう。
「シルバー! 楽しんでるか?」
「カリム、か。俺は……」
「飲み物を持ってくるぜ! サイダーでいいか?」
「酒は遠慮するが」
「全部ジュースだってば」
 すぐにカリムは、置かれていた銀のコップに並々と炭酸水を注いで持ってきた。主従どちらも気遣い性だな。シルバーはコップを受け取って、その冷たさに目を細めた。指先が痛くなるぐらいに冷えている。
「魔法で冷やしてあるんだ」
「そうか」
「宴は夜中まであるから、ゆっくり楽しんでくれよな!」
「そうする」
 淡々としたシルバーに、カリムはそっと目を覗き込む。視線と視線が交差する。丸くて澄んだ目だと、思った。
「シルバーは楽しいか?」
「楽しい、というより、驚いているな」
 茨の谷では、こんな宴は無かったから。シルバーの言葉に、カリムは納得したらしく、そっちは堅苦しいもんなあと笑っていた。
 その、実情を知るような発言に、シルバーはきょとんとする。
「こちらの食事会を知っているのか」
「呼ばれたことはあるぜ。窮屈で堅苦しくて、でも、珍しいジュースと料理が美味かったかな」
 懐かしむような言葉に、確かな喜色が見える。そのことに、シルバーは安堵した。やはり、茨の谷は我が故郷なのだ。
「珍しい、かも、しれないな」
「果物も野菜も、食べる肉も、アジーム家のものとは違ってさ。でも美味くて沢山食べた気がする」
「今でも、懐かしく思ってくれているのか」
「もちろん! なあ、シルバーにとって、熱砂の食事は初めてか?」
「食堂で見かけたものもある」
「大体は初めてってところか。じゃあ解説するぜ」
「いいのか」
 カリムは宴の中心だろう。シルバーの言葉に、カリムはバチンとウインクする。
「お客様を楽しませるのも、お役目だろ」
「お客様、か?」
「しかもあの茨の谷からだ」
 カリムは、不躾にシルバーを見ていた生徒たちとその周囲の寮生たちに目配せをする。すると、すぐに目を逸らされて、シルバーは幾分か呼吸が楽になった。
「流石だな」
「そうか?」
「ああ、とても」
 シルバーの真っ直ぐな称賛に、カリムはくすくすと笑った。
 そして、まずはシルバーの皿にあるメニューの紹介するぜと、カリムは楽しそうにしていた。

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