twst友情/ヴィル+ルーク/習作/嘘を言わない


 いつも誰よりも自分に厳しくて、誰もが認める美貌を手にしている。ルークはいつも思う。ヴィルは本当に美しい。輝かんばかりの太陽とも、正義の味方とも違う。自分を律して、他者にも厳しい。そこが、ヴィルの強みだから。
「ルーク」
 ヴィルたちを裏切ったようなあの日を、エースたちは嫌うけど、ヴィルは態度を変えなかった。むしろ、少しだけ会話が増えた。
「どうしたんだい、毒の君」
「ミネラルウォーター、要るかしら?」
「毒の君が宣伝していたやつだね! 勿論だとも!」
「相変わらずチェックしてるのね。ネージュバージョンのCMも見たでしょうね?」
「ウィ! 勿論!」
「それならいいわ」
 ヴィルはそのまま、走ってくるわと寮を出て行った。ルークはひらひらと手を振って見送ると、寮長不在のポムフィオーレ寮を仕切るべく、たったかと歩き出す。
 彼ならば、完璧に寮を仕切るだろう。ルークはその期待に答えねばならない。

 そういえば、ヴィルは問いかけたっけ。

──ロイヤルソードアカデミーに通いたいと思ったことはないの?

 ネージュという光を見つめるならば、同じカレッジのほうが勝手が良かったかもしれない。ネージュとプライベートの関わりを持てたかもしれない。だが、ルークにとってネージュは画面越しだからこそ、良いのだ。
 だって目の前にしたら冷静になれない。いつか慣れる? そうかもしれない。だけれど。
 輝きを輝きのままにするのは、好きを好きでいるための選択だ。ルークは己の中のネージュの輝きを留めるために、ナイトレイブンカレッジに通えてよかったと思う。
 難しい話ではないと、思う。それに、ルークはナイトレイブンカレッジに通えたことで、ヴィルという存在を知ることができた。厳しいばかりではない彼を、画面越しでは知ることができなかった。
 ヴィルのことは、カレッジに通う前は何も知らなかった。精々、とびきり美しい悪役というだけ。でも、それだけじゃなかった。それを、知ることができた。
 ネージュの輝きはただ、崇拝したくて。ヴィルの美しさは、カレッジで共に生活する中で知らなきゃ分からなかった。知ろうとすること、それが、カレッジに通う中で得たものだ。

──ルーク。

 ヴィルの凛とした声がする。ルークはそれを聞きながら、カレッジで生活する。
 決して、ヴィルを貶めたいわけではないし、ネージュへの崇拝は本物だ。だから、だからこそ。ルークは嘘だけは言わない。ただ、二人の偉大なる少年に素直でありたいと思うのだ。

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