リドトレ/真っ赤なトルテのために2
※全てのPSを読んだわけではありません。
※捏造を多分に含みます。
※これは二次創作です。


 トレイの仕事は寮長の補佐と、キッチンの番人だ。
 前者は副寮長として、後者はどうしても譲れなかったものだ。トレイはそれなりに味に拘りがある。あまり人には言わないが。なにせ、気に入らなければユニーク魔法をひとかけすればいいものだからだ。
「頑固だねー」
 ケイトが呆れ顔をする。仕方ないだろう。トレイは丁寧にアイシングクッキーを作る。これは、なんでもない日のパーティの試作だ。審査員はリドルと、たまたま居合わせたケイトである。
「何でも美味しいって食べるでしょ」
「そうだな」
「意味無くない?」
「美味しいか不味いかが客観的に分かるのは偉大だぞ」
「わあ、ノンブレス。頑固だねえ」
 どうせそのハートはリドルに、でしょう。ケイトが呆れきってそのようなことを言うと、勿論とトレイは笑って返した。

 アイシングクッキーを仕上げて、紅茶を淹れる。ケイトにも分けて、味見をしてもらってから、寮長の部屋へと向かった。
 今なら、真面目なリドルは自室で小テスト対策中だろう。疲れた脳には糖分を。それを見越してのクッキー作りでもあった。
「リドル、俺だが」
 ノックをして声をかけると、今開けようと、声がした。

 素直に待てば、リドルが扉を開く。赤い髪、銀色の目。透明さを覚える肌は、まるで彼がお人形かのように見せる。

 まあ、トレイにとってはお人形以前に、大切な幼馴染で、こいびと、なのだが。
「クッキーと紅茶かい?」
「ああ、アイシングクッキーとアールグレイを淹れたんだ」
 味見を頼む。そう苦笑して見せれば、構わないよとリドルは快く自室にトレイを招いてくれた。

「ボクより適任がいるんだろう」
 アイシングクッキーとアールグレイを口にして、リドルは言う。何だそのことか。トレイはまた苦笑した。
「リドルの口から聞きたいんだ」
「ボクはトレイの作るものなら何でも好きだよ」
「それがいいんだ。いつもの味を、誰よりも分かっているだろう」
「むう」
 リドルが拗ねるように眉を寄せると、シワになるぞとトレイは指で眉間を撫でた。指先まで優しく、リドルに触れる手だ。
「紅茶が渋くなる前に食べ終えてくれ。仕込みがあるんだ」
「それもいいけれど、副寮長宛ての書類を届けておいたからね。お忘れないように」
「はい、寮長」
 トレイがクスリと笑うと、リドルはまた、むうと眉を寄せたのだった。

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