リドトレ/真っ赤なトルテのために/習作
※全てのPSを読んだわけではありません。
※捏造を多分に含みます。
※これは二次創作です。


 ハーツラビュル寮の森の中。鬱蒼としたその奥に、生徒が寄り付かない古びた小屋がある。物好きな歴代のハーツラビュル生たちが集めた園芸用品を置いたそこには、乾燥中のハーブなども吊るしてあった。

 トレイはその小屋の中で種の仕分けをしている。せっせと収穫した種を小分けにして、袋詰にすると、スパイスにする分やどこそこに蒔くなどラベル付けしていく。

 これは誰でもできる雑務のうちに入るだろう。副寮長であるトレイの仕事ではないかもしれないが、トレイは自分が使うハーブ、スパイスの管理も、きちんと見ておきたいと常々思っている。この小さな雑務によって、トレイの城(キッチン)は保たれるのだから。

「トレイは居るかい」

 キィと、木製の扉が開かれる。ノックも無しに、珍しい客人だ。トレイは目を丸くした。
「リドルか、どうしたんだ?」
「今日のトルテに使うベリーが届いたよ」
「そうか。それだけなのか?」
「その通りさ」
 ここはたまに来ると良いものだね。リドルは目を細める。銀色の目が、歪んだガラスの光を受けて柔らかく輝く。トレイは彼のそんな目が好きだった。愛おしいと、言葉にするような目だ。
「トレイ?」
 どうしたんだい。リドルがトレイを見ていた。椅子に座るトレイとリドルの目線はほぼ並んでいる。これもまた、珍しいことだ。珍しい尽くしで、今日の占いは当たりだったかもな何て思った。そんなもの見ていないし、知らないけれど。
「折角だから早くお使いよ。果物は鮮度が命だとトレイが言っていただろう?」
「物によるだろうな」
「む、そうなのかい?」
 ただ、今の時期のベリーなら鮮度が命かもしれないな。トレイは答えてから、残りの種を大きな袋にしまった。この仕分けはまた明日になりそうだ。
「なあ、リドル。夜は寝るべきだろう」
「まあ、そうだろうね」
「夜更しの許可は降りるか?」
「そんなことをしたら明日に響くから、却下だよ。明日はトレイがいないとね」
「毎日のことじゃないか。耳にタコができるぐらいに聞いたな」
「勿論。今日も明日も明後日も、トレイが必要だからね」
 だってとリドルは胸を張る。
「トレイはハーツラビュルの立派な副寮長だからさ」
「普通の男だって、言っているだろう」
「トレイがそう言っても、事実は変わらないさ。ボクの手の届かないところを、トレイは確実に拾い上げるのだからね」
「頑固だな」
「お互い様、だろう」
 さあ、キッチンに行こうか。リドルが微笑むので、トレイは、トルテを作るのは俺なんだがなと苦笑した。

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