オープニング

オープニング・始まりのゲッシュ


人は、出会いと別れを繰り返す。

繰り返しの中で、人は人として成すべきことを成していく。

あの子は優しい。彼は言った。
あの子はほんとに優しいから、恐いことが多いし、いつも痛い目を見る。
だから癒やしの手を与えよう。その手が形を無くし、血みどろになる前に、本当の愛を手に入れますように。

あの子は強い。彼は言った。
あの子はほんとに強いけど、心に柔い棘を抱いている。
抱く手は血みどろだ。茨を掴むのだから、当たり前だ。
だから菩提樹の花を沈めた産湯に浸そう。その体が必要以上に怪我をしないように。上手く芸を身に着けられるように。そうして怪我をする前に本当の愛を見つけ出せるように。

─ならばあなたは美しいひとね

彼はぱちりと瞬きをした。

自然の体現、ポケモンならざるもの、人を愛したもの、愛されたもの、愛され過ぎたもの。
執着を産んだモノ。
でも、それでも、彼はどうしたって美しい。

僕は唄うよ。

彼は云う。

僕は唄うよ、ほんとうに悲しい歌を唄うよ。

「だって僕は本当にきみたちを愛しているから」

愛の形が自然の法則を捻じ曲げようとも。うたおう。唄おう。讃歌を、英雄譚を、きみたちの"転−生"を。

「さようなら、××。また会う日まで」

幸いにも、僕は永くを生きるから、
いつまでも、きみを待つよ。





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