【準備編】03


 翌朝。朝日の眩しさに辰人が起きると、すでに水未は起きていた。
「寝坊だよウィル君!」
「時間の指定なんてなかっただろ」
「市場でもう掘り出し物が売れちゃったみたい」
「市場なんてあったか?」
「夜は閉まってたね!」
「分かるかよ……」
 兎も角、行くよ。水未は笑みを浮かべて、辰人を急かしたのだった。

 宿から出てすぐ、乾燥しきったラテラルタウンの空気はとても熱いと気がついた。6番道路も過酷みたいと水未はぴょんぴょん跳ねる。
「分かったから、跳ねるな」
「ウィル君が遠い目してるから!」
「ああそう……」
 それにしてもと水未はうめいた。
「ラテラルタウンは太陽領みたいだね。ま、仕方ないか」
「他の土地への侵略は?」
「まだみたい。さっすが太陽。強者の自覚があるね」
「小太陽生成プログラムは?」
「現時点ではレーダーに引っかからないよ」
「じゃあいい」
 では、6番道路に向かおう。

 巨大なディグダの遺跡の横を通り、6番道路を通る。灼熱の太陽光と、高低差のある土地を梯子を使ったり、段差を飛び越えたりして進む。ポケモンと遭遇しては水未がバトルをするが、基本は避けて通った。
 さっさとスマホを手に入れたいのだ。水未は非効率的だとむすくれた。
「もー疲れた!」
「これぐらいは水未の疲労になんてならないだろ」
「精神的な問題だよ、ウィル君。あのね、水未は非合理が嫌いなの」
「それで?」
「さっさと通らせて」
「ポケモン避けとかなんかないのか」
「スプレーがあるけど、あれはポケモンのレベルが必要だから……レベリング面倒だよお」
「この先、誰かと戦うときに負けてもいいなら秘奥義で小型化を使ってもいいけど?」
「うぐっ負けるのは水星が許さないよ……仕方ないな」
 ポニータを出し、次からもバトルを頼むねと水未は嫌々告げたのだった。


 6番道路をなんとか進み、ナックルシティの跳ね橋が見えてくる。城塞都市だね。水未はやや機嫌を治したらしかった。
「それで、電化製品はどこで売ってんだ?」
「ええと、メインストリートにあるみたい」
 行こうかウィル君。水未のご機嫌な声に辰人はホッとして、水未の後に続いたのだった。

 ナックルシティの2つ目の跳ね橋を通り、メインストリートに入る。電化製品店に入ると、水未がさっさとスマホを手配した。ロトムをお付けしますかと問われると、水未はきっぱりと要らないと答えた。
「ロトムって何?」
「パソコンにもいたでしょ」
「ああなんか、動いてた」
「電化製品に入り込むポケモンだよ。あたしたちはセキュリティが不安だから付けない」
「ま、ロトムとやらに好かれる自信は無いからな」
「そういうこと!」
 さてはて。こうして辰人と水未は図鑑やマップ付きのスマホを手に入れたのだった。
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