キバネズ/霧の国/口調分かりません/一人称も危うい/捏造しかない/これは二次創作です


!たぶん剣盾のネタバレ含みます!
!どこからがネタバレかわからないですがこれはクリア後クリア後の人間が書いてます!


 眠たい目を擦って起き上がる。朝方、普段ならまだ眠っている時間に起きると、マリィが起きる前にネズは身支度を整えて、書き置きとマリィの分の朝食だけを残して家を出た。

 スパイクタウンには濃い霧が漂っていた。ガラルは霧の国だと旅行者が言っていたような気がする。ネズはスパイクタウンにやってきてくれた数少ない旅行者達を思った。
「ネズ!」
 声をかけられて振り返れば、ひらひらと手を振る男がいた。キバナだった。
「もう来ていたんですか」
「久々にバトルするんだぜ? そりゃ気合い入るだろ!」
「はあ……物好きですねえ」
 では外に行きますか。ネズの提案に、キバナはスパイクタウン内のコートでもいいのではと不思議がった。大騒ぎになるってんでしょう。ネズはエール団の存在を示唆した。悪くはないが、キバナとのこのバトルは公式戦でもない。たまには静かな環境でバトルしたっていいはずだ。

 ネズとキバナはスパイクタウンの外に出た。霧は濃い。これでは下手したら前が見えないのではないか。晴れるまで待とうとネズが提案すると、キバナは快く了承した。
 道端に二人で立ち、ぽつぽつと会話する。濃い霧が二人をうまく隠し、辺りに人が集まることはなかった。
「あまり霧が濃いと困りますねえ」
「ホントにな。電車は止まってるみたいだしよ」
「タクシーも飛べねえでしょう」
「そーなんだよ。スパイクタウンが近くて良かったぜ」
「キバナはいつこっちに来たんですか」
「んー、一時間前ぐらい?」
「はあ?! あなた今、冬ですよ?!」
「温めてくれるんだろ?」
「それはバトルで、って言ってんでしょうが!」
「抱きついてもいいか?」
「聞いてます? あ、ちょっ!」
 キバナにがばりと後ろから抱きつかれて、このっとネズが暴れる。だが細い彼にキバナの腕はびくともしない。体格差を思い知らされたネズはがくりと抵抗をやめた。無理なものは無理である。
「お、もういいのか?」
「もう、好きにしてくだせえよ。霧が晴れるまでです」
「やった」
 後ろから抱きすくめられ、ネズは濃い霧が無ければ大問題だなと考える。ジムリーダーを退いた己はともかく、現役ジムリーダーで注目を浴びやすいこの男のことだ。直ぐにネット上にアップロードされて大騒ぎだろう。
「なんかオレさまのこと忘れてねえ?」
「うるせーです。現実逃避ぐらいさせやがれですよ」
「なんだそりゃ」
 ネズは複雑だなあ何て言われて、おまえこそとネズは返した。複雑で分かりにくいのはお互い様だろう。大人になってしまったな。ネズは息を吐いた。抱く腕に力が込もる。
「引っ付き過ぎです」
「今ならいいだろ」
「たとえ霧が濃くてもここは外なんですけどねえ」
「しーらない」
 ああ、温い。落ち着いたキバナの声に震えはない。背中の体も、回された腕も、ぽかぽかと温かくなってきた。もういいのでは。ネズがそう言いかけると、キバナはまだと腕に力を込めた。
「霧はまだ濃いだろー」
「はあ……」
「あ、考えること放棄したな!」
「もう好きにしやがれですよ……」
 霧が晴れるまであと数分だろう。ネズはぼんやりとミルク色の景色を眺めていたのだった。

- ナノ -