キバネズ/朝模様/チェックメイト手前の関係/マリィちゃんもいる/まだ付き合ってない二人です


 朝日だ。のそりと起き上がる。いつの間にか隣で眠っていた大男を無視して髪を束ねると、軽く着替えてエプロンを纏う。

 目玉焼きにカリカリのベーコン。ふかふかのホットケーキにそれらをのせてやっていると、タチフサグマが起きてきたので、カラマネロを起こしてもらって新しいポケモンフーズの封を切った。
 ざかざかとポケモンフーズを用意し、モーモーミルクをコップに注ぐ。マリィが起きてきた。足音を頼りに顔を上げれば、おはようと眠たげに目をこするので、傷つきますよと止めた。
「モルペコと顔を洗って来なさい」
「ん、いこ、モルペコ」
 ふらふらと洗面台に向かったマリィを確認してから、よっこらせとベッドルームに向かう。

 ぐーすか寝こけているキバナの隣にはボールから飛び出してそのまま寝たらしきフライゴンがいた。現在の彼の手持ちはとボールを確認してから、起きなさいとキバナに声をかける。ぱちりと、すんなり目が開く。
「ん、あ、ネズだ」
「おはようございます。また缶詰してたんでしょう」
「んー、なんか論文が終わんねーの」
「ここに来たからには一通りの区切りがついたんでは?」
「仕上げがまだ。もうちょい寝たい」
「寝すぎは体に悪いってんです。起きろ」
 ネズが冷たい。そんな不評をかいながら、ネズはキバナをリビングに連れ出す。すっかり定位置となった席に座らせたら、ボールで確認の取れたキバナのポケモンたちにフーズを配る。
「パートナーたちの飯とかは皆にやってもらってたんだけどさ」
「おまえ自身の世話は置いてけぼりですか」
「そーなんだよなあ」
 そう言いつつもぺろりとホットケーキとミルクを食べ終えたキバナに、相変わらずの健康優良児だと舌を巻く。ネズがキバナのような無茶をしたらしばらくはゼリー飲料頼りだ。
「マリィちゃんは?」
「洗面台です。帰りますか?」
「おう、帰るかー。マリィちゃんも世話になったーありがとなー」
「おまえ、まさかマリィに家の鍵を開けてもらったんですか」
「だってネズもう寝てたし」
「深夜に起こすならおれにしなさい」
「マリィちゃん起きてたもん」
「マリィー! 夜ふかしは程々にしなさい!」
「そこでダメって言えないのがネズだよなあ」
 じゃあ帰るわ。キバナはそう言って立ち上がる。フライゴン達をボールに戻し、シャワーと飯とベッドありがとなとネズに声をかけた。
「おまえがちゃんと寝るならそれぐらい平気です。それよりも早くジムトレーナー達を論文地獄から開放させなさい」
「研究発表が近いんだってーほんとにさあ」
 またなとキバナは最後にネズの額にキスをして帰った。

 ぱたぱたとマリィがリビングに顔を出す。どうやらメイクまでしていたらしい。気合いの入った姿に、お出かけですかとネズが問いかけると、トーナメント戦に呼ばれたと嬉しそうに語った。
「久々のスタジアムやけん。目一杯戦って今度こそ勝たんと!」
「それは心強いですねえ」
 それで、とマリィは首を傾げた。
「キバナさんとはいつ結婚すると?」
「いつも何も、まだお付き合いすらしてませんからね?」
 またそう言う。マリィは呆れた顔でホットケーキを口にした。
「早く言わんと誰かに取られるち」
「お互いに落ち着くまでは無理ですね」
「アニキは落ち着いた?」
「そうですよ。あいつ待ちです」
「そりゃ、研究発表とかってやつに気合いが入るはずやね」
 あーあ、早くアニキとキバナさんが家族にならないかなあ。マリィがホットケーキを食べ終えて食器を片付けながらぼやくので、マリィにそこまで言わせるキバナは凄いですねえなんて白々しいことをネズは言うのだった。

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