キバ→←ネズ/たくさん食べて愛してね/友達以上恋人未満/告白していないけど互いの気持ちは知っている二人


 ネズは細い。むしろガリガリだ。骨と皮じゃないのかとすら思う。わずかに肉を感じる尻から太もも辺りが、若干の人間感を醸し出している。いやほんと細すぎる。肌色が白を通り越して青みを帯びているのは日の下に置いておけば何とかなる気がするが、あの細さは努力無しには解決しない。
 ということで、とキバナはネズを飯に連れて行くことにした。

「何がどいうことなんですかね」
「いいだろ別に。ほら、ここのバーガーうまいぜ!」
「ええ、まあ、うまいですけど」
 もぐもぐと存外小さな口でハンバーガーを食べるネズを眺めながら自分も食べる。場所はナックルシティのとあるハンバーガーショップだ。最近出来た店だが、なかなか奥深い味をしている。リピート決定だとキバナは気に入った。
「この前はパブで、今回はバーガーショップ……おれに物を食わせてそんなに楽しいんですか」
「おう、楽しいぜ」
「わかんねーです」
 ネズは出されたものはと丁寧に食べ終わると、ふうと息を吐いてからグラスの炭酸水を飲んだ。なお、キバナは味わいつつもさっさと食べ終えていた。一口が違いすぎるのだ。仕方ない。
「じゃあこれからどこに連れて行こうってんですかね」
「うーん、日光浴にワイルドエリアとかどうだ?」
「あそこは日光浴どころではないでしょう」
「オレさまもそう思う。だからオレさまの家とかどう?」
 構いませんよ。ネズは面倒そうに応えた。よっぽど腹が膨れたのか、眠たそうにあくびまでしている。気を許されているなと、キバナは腹の奥がむずむずとした。喜びで頬が緩みそうだ。

 キバナの自宅には、すでにネズの為の日用品が置かれている。残念ながら、ネズが置いていったものではないが、まあいいのだ。キバナは自分一人きりではないこの部屋の暮らしが好きだ。
「おまえは本当に欲深いのに、大切なものを見落としがちですねえ」
「ん? そうかあ?」
 ソファでうつらうつらしながら寝ぼけ眼に言うネズに、キバナは自分用のブラックティーを用意しながら言う。スマホロトムがしゅんしゅんと動いて、タイマーをセットしてくれた。
「おれがほしいくせにそうとは言わないんですから」
「まあなあ」
 おれだって、とネズは寝落ち寸前に口にした。
「おまえだったらとおもえるのに」
 そのまま夢の世界に旅立ったネズにブランケットを掛けて、キバナはお前こそと微笑んだ。
「オマエこそ、オレさまが大好きなのにな」
 互いに一番大切なことは伝えないまま過ごすのは、どうしようもなく大人らしくずるいのに、こんなに心地良いのだから、やはり、大人とは良いものだ。キバナはそう結論付けて、さてとタイマーを止め、ブラックティーを飲みながらSNSのチェックを始めたのだった。

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