キバネズ/寒い日のこと/口調分かりません/一人称も危うい/習作です/捏造しかない/これは二次創作です
!たぶん剣盾のネタバレ含みます!
!どこからがネタバレかわからないですがこれはクリア後クリア後の人間が書いてます!
薄暗いスパイクタウンの奥、の手前。ステージから少しだけ離れた場所で、キバナはネズを待っていた。はあと息を吐くと白い煙が手を覆った。冬でもライブは変わらず行われるし、むしろ盛り上がるような気がする。キバナはぐんぐんと動くロトムを手に持った。ロトムは機械だが、基本的にはゴーストタイプなので体が熱くはない。入り込んだ機械にもよるが。
暖を取るならネズに抱きつくほうがいい。あの男は平均体温低めだが、ロトムよりは温かい。
コツコツと階段を降りる足音がして、キバナは顔を上げた。階段を降りてきた男、ネズはキバナを見つけると、露骨に嫌そうな顔をした。
「冬にそんな軽装で階段に座ってるとか……信じらんねーですよ」
「呼び鈴鳴らしても出てくれねえじゃん」
「次からは迎えます」
「お、いいのか!」
「冬ですから」
昼でも食べに行くところですが。ネズはそう言ってジャケットを握りしめた。ネズも寒いんだな。キバナは彼も人間だなあなんて考えた。
「ほら」
きゅと手を結べば、びくりとネズが震えた。
「つっっめた! 冷たすぎですよこのっ」
「じゃあ温めてくれよ」
「さっさと飯を食べに行くべきですよ……」
食べれば少しは体温が上がるってもんです。ネズがキバナを引っ張った。スパイクタウンは彼のホームだ。ここの良い店はキバナよりネズの方が詳しい。映える店に連れてってくれよ、なんて茶々を入れれば、腹を満たせればそれでいいですと却下された。
「けちだな」
「ケチで結構です」
その兄らしい顔はキバナのお気に入りのひとつだ。
腹を満たして店から出ると、これからどうするんですと問われた。キバナはそうだなと考えた。
「バトルしようぜ!」
「却下です。もうライブまで時間がねーんですよ」
「ライブ前なのに付き合ってくれたわけか」
「……何ですかその目は」
「べつにー」
キバナが機嫌良く答えると、うげとネズは嫌な顔をした。
「そろそろステージの方行くか?」
「聴くつもりですか」
「当たり前だろ」
お前の歌はいい。キバナが上機嫌に言うと、ネズはそうですかいと顔をそらした。照れているのと、気まずいのと。だが、ネズのライブを見るのは初めてではない。それをネズもよく知っているはずだ。ステージから客席はよく見えるらしいとの噂をキバナは信じている。
「ライブ終わったらステージ裏行ってもいいか?」
「……構いませんけど、変に騒がねーでくださいよ」
「わぁかってるって!」
キバナがそうしてニッと笑うと、ネズは眩しいものを見るような目をしてから、そっと目をそらしたのだった。