キバ→(←)ネズ/大晦日/今年も大変お世話になりました。皆様良いお年をお迎えください!


 はあ、と白い息が溢れる。大晦日の寒い日だ。こんな日に外で待ち合わせなくても良かったのではないだろうか。そう思いつつも、ネズはスパイクタウンの外で立っていた。
「ネズーっ!」
 走り、がばっと抱きついてきた男に、離せともがけば、ひらりと腕が外れた。
「寒くね? ネズすっげえ冷えてんじゃん」
「おまえが外で待ち合わせにしたんじゃないですか」
「でもここまで冷えさせるとはさあ」
 指を掴んで、はあと息を吹きかけられた。じわりと温かったような気がした。
「じゃあネズの家行くかー」
 なお、マリィは現チャンピオンの家で年越しとなっている。マリィも大きくなったことだし、悪い話ではないと送り出したし、チャンピオンのご家族とお食べなさいとお菓子も渡していた。
「妹ちゃんは?」
「チャンピオンと過ごしますよ」
「えっ、オレさま聞いてない!」
「……言いませんでしたっけ?」
 あれとネズは首を傾ける。確かに、言わなかったかもしれない。キバナと過ごす為の準備にドタバタとしていたので、言い忘れていた気がしてきた。
「なー、もう、まじかあ」
 まさかそんなことになるとは。キバナはその場にずるずると座り込んだ。どうしたんですかとネズが問いかけると、だってさあとキバナはもごもごと口籠りながら言った。
「ほんとに、ネズと二人っきりって、オレさま全然心の準備できてない……」
「心の準備なんているんですか?」
「いるって! 好きな人と二人っきりだぞ?!」
「……好きな人?」
 あ、とキバナが口を開けた。初耳の情報に、ネズは、うんと頷いた。
「今なら聞かなかったことにしてあげますよ」
「無理があるだろ?!」
「まあ、友人カッコカリとして年越ししましょうね」
「うわー、配慮ありがとな……」
 告白はまた今度で。そう早口で述べたキバナに、まずは家に行きますかとネズはくっくっと笑った。

 家に着くと、BGM代わりにテレビの特番を流す。挙動不審なキバナは放置して、夕飯をさっさと食べてしまいますかねとネズはカレーを温め始めた。
「おまえのことなんで、カウントダウンに行くかと思いました」
 素直に意見を述べれば、ネズは行きたくないだろうなってとキバナは視線を彷徨かせた。
「別に、カウントダウンに必ず行きたいわけじゃなかったし」
「おれと過ごしたかったと」
「そーだけど、そうなんだけど!」
「いい加減、機嫌を直しなさい」
「しばらく動揺してると思うからそっとしておいて、あ、いや、やっぱ話しかけて。一人は寂しい」
「おまえって末っ子なんですか?」
「へ? なんで?」
「いや、甘え上手だと思いましてねえ」
 ハンバーグカレーはお好きですかと、ネズは笑った。キバナはぐるぐると頭を抱えながらも、うん好きと答えた。

 あと、カレーはポケモンたちにも振る舞うのだから、ポケモンを出しなさいとネズはほかほかのカレーを盛り付け始めたのだった。

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