キバネズ/もう一回


 青空だ。今日のナックルシティは快晴です。スマホロトムに撮ってもらって、スパイクタウンの恋人に送る。こちらも晴れてますよ。窓越しの快晴の写真が送られてきた。
「キバナさま、サインが必要な書類があるのですが」
「お、なになに?」
 キバナはくるりと事務机に向き直った。

 夕方。事務室を閉めて、各自が家路につく。今日はスパイクタウンに帰ろうか。キバナとネズの家はナックルシティとスパイクタウンにそれぞれあって、時と場合により使い分けていた。
 早めに帰れることだし、スパイクタウンまで帰ろうか。キバナは良しと決めた。

 帰る旨をネズに送れば、早いですねと言いながらも夕食を作っておきますねと返信が来た。どうやら今日は一日家に籠もって作曲でもしていたのだろう。いつもと変わらぬネズのルーティンに、夕食作りが含まれたことが嬉しかった。以前なら、ろくに食事を取らなかったからだ。

 スパイクタウンに入ると、マリィとすれ違った。マリィはワイルドエリアで泊まってくるったいと、彼女は頼もしく言って立ち去った。成長は嬉しいが、ワイルドエリアに泊まるのはあまりオススメしない。キバナは無理するなよと声をかけた。

 ネズとマリィの家に入ると、古びた家具の匂いをかき消すような、スパイスたっぷりのカレーの匂いがした。
 ひょこりとタチフサグマが顔を出す。ただいまと言えば、ぐまぐまと嬉しそうに笑っていた。

「帰ったんですね」
「おう、ただいま」
「おかえりなさい。手洗いうがいをしたら夕飯ですよ」
「何カレー?」
「たまごカレーです」
「いいね」
 ポケモン達にもカレーを用意しているネズを手伝うべく、手洗いうがいと着替えを済ませて、キッチンに入る。なお、キッチンに入る前にキバナは手持ちのポケモンを出しておいた。

 大鍋で作ったカレーをあっという間に配ると、夕食となった。今日の何でもない出来事を話しながら食べれば時間はあっという間に過ぎて、キバナは先にシャワーを浴びた。ネズは湯船にゆったり浸かりたいらしく、ハーブの束を用意していた。

 ネズが風呂に入っている間、ポケじゃらしなどでパートナー達と遊ぶ。皆が健やかそうで、キバナはホッとした。今日は一日事務作業だったので、ポケモンたちはきっと物足りなかったことだろう。明日は休日なので、バトルタワーにでも行くか。キバナはそんなことを考えた。ネズも、バトルタワーなら一緒に来てくれるだろう。彼は観客のいないバトルタワーが、バトルに集中できるからと、存外好きらしい。
「キバナ、温かいものでも飲みます?」
 季節はすっかり秋めいている。冷えますよと、ほかほかのネズはキッチンに向かった。キバナはそれを追いかけて、ホットワインにしようぜと貯蔵庫を開けたのだった。

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