くいしんぼう『ドーナツが甘すぎる』の続話です。モルペコとキバネズ。


 モルペコはお腹が減るとあくタイプになるのだ。というのは常識として。
「アニキごめん! しばらくモルペコを預かっててほしいけん!」
「なんですか妹よ、別に構いやしませんけど」
「なんかリーグを改善したいとかで、モルペコには向かんばい、ごめん」
「なるほど、機嫌をとる暇がないわけですね」
「マリィが未熟なばっかりに」
「いいえ、それぐらい大丈夫ですよ」
 じゃあね、モルペコ、いい子にしておくんだよ。そうしてマリィはモルペコをネズに預けてリーグの事務室へと向かったのだった。

 さてモルペコ。ネズはううむと唸る。正直空腹時のほうが扱いやすいぐらいはある。
「どうしたもんですかね」
 とりあえずドーナツでも食べますかと、ネズは財布を手に外へと出た。

 ところでスパイクタウンにドーナツ屋など無い。よってパン屋でそれっぽいものを見繕ってみたが、さすがはスパイク育ち、パン屋のドーナツで満足していた。
 家に帰ると、先客がいた。
「あれ、ネズじゃん」
 ひょっこりと合鍵を預けた男の登場に、ネズはお前でしたかと顔を上げる。
「キバナ、どうしましたか?」
「どうしたのそれ、マリィのモルペコだろ?」
「ええ、少し預かっててほしいと」
「はー」
 なるほど。キバナはそれだけ言ってじゃあさあと、キバナは提案した。
「そのモルペコと戦いたい!」
「トレーナーの許可無しにやっていいわけないでしょう」
「だめかあ?」
「駄目に決まってます」
「じゃあキャンプ!」
「スパイクタウンの外には出させませんよ」
「過保護じゃ?」
「マリィのポケモンですから」
 あむあむとドーナツを食べるモルペコに、仕方ないなとキバナは勝手知ったるキッチンに向かった。
「えーと材料はあるな。オレさまがドーナツ作ってやるよ!」
「またです?」
「簡単なんだって!」
 計量して生地をこねて。少し寝かせて形を整えて揚げていく。

 その間にモルペコは腹いっぱいになってすやすやとネズの膝で寝こけていた。
 さらに、キッチンに進入禁止とさせているので、ネズのパートナーたちは大人しいものだった。

「ほら、キバナさま特製ドーナツだ!」
「モルペコを起こしますか」
 そうしてモルペコを起こして、ネズは山盛りのドーナツに向き合った。
「先にポケモンたちの分けておこうぜ」
「いいですね」
 キバナのドーナツは前と同じく、優しいにおいがしている。ああ、美味しいだろうな。ネズは思わず顔をほころばせた。
 食べようぜ。そうして二人で幾らか減ったドーナツの山に手を寄せたのだった。

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