キバネズ/涙/捏造しかない/これは二次創作です


!たぶん剣盾のネタバレ含みます!
!どこからがネタバレかわからないですがこれはクリア後クリア後の人間が書いてます!


 泣きたいような気分だ。ネズは立ち尽くす。マリィへのジムリーダーの引き継ぎが済んだ翌朝。ネズはマリィの居ない家で、キッチンの傍らに立っていた。ライブは午後からで、午前中はマリィの挨拶回りについて行こうと思ったのに、アニキは休んでいるようにと言われてしまったのだ。

 ちゃり、ちゃりとチョーカーを触る。泣きたいような気持ちだ。マリィに突き放されたからではない、マリィの成長に、泣きたかった。
 いつのまにあんなに大きくなったのだろう。いつのまに、自分を追い越せていたのだろう。もう、マリィはただ庇護される子どもではないのだ。確かに嬉しいのに、同じくらい泣きたかった。

 とうとう、ぽろりと涙が溢れた。タチフサグマ達が慌てだすのを感じられた。いつもの事だろうに、そう思うものの、今のタチフサグマ達はネズに寄り添ってくれる人を知ってしまっているのだ。だから、早く早くとスマホを探して渡してきた。
 だが、そう簡単に頼れる相手でもない。立場ってもんがあるんですよ。そう語りかけるものの、タチフサグマ達は早く彼を呼べと引かない様子だった。
「仕方ねーですね」
 電話をかければ、すぐに通じた。あ、と声を出す前に、分かったすぐ行くわと通話を切られる。何がわかったのだろう。彼はネズの理解を遥か高く超えている。察しの良さだけなら、エスパータイプだって扱えるんじゃないだろうか。

「ネズ、オレさまだぜー」
 よっと手を上げて玄関前に来た彼を、どうぞと室内に招く。ソファに案内し、紅茶でも淹れますかねと言えば、まずはこっちだと背後から抱きしめられた。すっぽりと、小さなネズは大きなキバナに包まれた。
「おつかれさん」
「何がですか。何も知らないくせに」
「ネズはよく頑張ったもんなあ」
「離してください」
 ぽんぽんと撫でられて、また涙が出てきた。あ、と思う前にネズの頬を彼が、キバナが撫でた。涙を拭われたのだ。
「妹ちゃんに引き継ぎが済んだんだろ?」
「そうですよ」
「なら、今のネズはフリーなわけだ」
「そんなワケがねーんですよ」
「哀愁のネズか」
「アーティストですね」
 でも、ライブは午後からなんだろ。キバナが頭上でくつくつと喉を鳴らした。
「時間になるまでオレさまがネズの世話を焼いてやるぜ」
「結構です」
「あ、でもネズの紅茶は飲みてえな」
 ミルクティーがいいと、キバナはようやくネズを腕から開放し、ニッと笑った。それを見たネズはほろりと一粒の涙を流してから、特別にロイヤルミルクティーにしてあげますと滑らかに語ったのだった。

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