落花2/キバネズ学パロ/ただしポケモンはいる/ちょっーと続くはず
!年齢捏造。年齢差捏造。そもそもここはどこだ。を含みます!


 キバナが通う学校は中等部と小学部に分かれている。両者には大きな隔たりがあり、交流は無いに等しい。だが、人によっては中等部に遊びに行ったり、勉強を教えてもらったりしていることは、キバナにも分かっていた。だが、キバナはそういう質ではなかったので、中等部など遠い雲の上の存在のように思っていた。

「今代のあくタイプの天才であるネズを是非バトル部に入れたい!」
 ダンデが熱く語る横でソニアとルリナがまたその話と白けた顔をしていた。
 キバナは小学部の6年生であるダンデの強い推薦で、学校内でも小学部上級生(四年生)に達していて、なおかつ推薦制のバトル部に所属していた。

 なお、キバナ以外のダンデ、ソニア、ルリナ、ヤローは全員小学部6年生である。顧問は小学部教師のカブ(体育教師)とメロン(養護教諭)である。

「ソニア、ネズの情報をキバナにも」
「はいはい」
 そこでソニアは、えっとねと、口にした。
 曰く、ネズとやらは中等部の1年生にして、軽音部に所属。しかしあくタイプの天才と中等部はおろか小学部でさえもで噂される程のバトルセンスを持っており、常からダンデはネズをバトル部に入れたくて四苦八苦している。とのことだった。
「嫌がってるなら無理に入れる必要は無いんじゃ?」
 キバナの最もな意見に、ダンデはそれができる暇はないと断言した。
「夏のバトル甲子園が迫ってるんだ。何としてでもあくタイプの実力派のトレーナーを入れたい」
「でも、甲子園って5人でも行けるんじゃなかったっけ?」
「ソニアはマネージャーだからバトルに参加しない。気を悪くしないでほしいんだが、キバナにはまだバトル甲子園は早い。オレとルリナとヤローだと3人しかいないだろう。3人では同好会扱いになって、甲子園に出れないんだ」
「そういう規定ってことか」
「あれ、キバナくん嫌じゃないの?」
 ソニアが意外そうに言うも、キバナは当たり前だろと返した。
「オレの実力が足りないことぐらいオレさまが一番分かってるの!」
「そうなんだ。うーん、これは育つわね」
「でもねえ、ダンデ。ネズには毎回すげなく断られてるじゃない。バトル部に入りたいトレーナーは他にいるんだから、そっちから声をかけたら?」
 ルリナの意見に、それは駄目だとダンデはまたもや断言した。
「候補は扱いやすいほのお、みず、くさに偏ってる。あくタイプというトリッキーな手を入れておくだけで相手への牽制にもなる」
「ああそう……」
 ルリナは無駄だろうけどと言いながら、じゃあモデルの仕事があるからと部室を後にした。ヤローは牧畜部に顔を出しているため、当然ながら居なかった。
「キバナ、ついてきてくれ。いざとなったら泣き落としだ」
「そんなことができる人には思えないけどねー」
 まあ、部室にはいるから。ソニアはそう言ってダンデと、彼に引っ張られるキバナに手を振った。

 場所は中等部の軽音部、部室。ガチャガチャと音がなるそこで、ダンデは一旦立ち止まると、たのもうと扉を開いた。
 軽音部には数人の学生がいた。その中心には、白黒の髪をした、温室で出会った細身の少年がいた。ノイジーな。彼はダンデを見た途端に眉を寄せた。
「おつかれさまです! 此度はネズさんをバトル部にお連れしようと参りました!」
「ノイジーな野郎ですね。その話なら断ったはずですが」
「然し、そう簡単に諦められるものでありません! なあ、キバナ!」
「え、オレ?! えっと……」
 ちら、とネズを見る。ギターを抱えてどかりと座ったネズと目が合う。薄氷のような冷たくも美しい目に、キバナは、ほうと息を吐いた。
 ダンデへの刺々しい言い方に、一瞬は別人かとも思ったが、この人は本当に温室の人と同じ人だ。キバナは確信した。
「ともかく、その話は聞きたくありません。出て行きやがれ」
「ではまた、失礼します!」
「元気ですね……」
 ダンデに連れられて軽音部を出る間際、ちらと後ろを振り返ると、ネズはあの時のメモ用紙を片手に何やら頭をがしがしと掻き回していたのだった。

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