キバ→←ネズ/『レプリカ』6/孤独にまつわるキバネズのはなし/孤独×鏡×レプリカ/おしまい!


 水から上がった。ネズがぱちりと目を開くと、心配そうにタチフサグマが覗き込む。どうやら、池の前で倒れていたようだ。体は少しも濡れていなかった。タチフサグマ達が抱き止めてくれたようだ。
 ネズは記憶を辿り、手を握りしめる。隣には、半透明のキバナが寝転がっていた。彼の薄いブルーの目が、ネズを見ていた。
「本体なら、病院にいるよ」
 キバナは言う。
「エンジンシティの、総合病院。そこに、いるから」
 だから、離して。そう言われても、ネズは手を離さなかった。
「いいですか、キバナ」
 ネズは根気よく、語りかける。
「それは本体ではありません。おまえも、それも、キバナのひとつです」
 キバナは、ぱちぱちと瞬きをする。信じられないのだろう。でも、ネズとて譲る気はなかった。このキバナも、きっと病院で寝ているキバナも、おなんじだ。

 一人で、寂しくなって、ネズの家を訪ねてしまうような、そんな人間だ。

「うん、ありがとう」
 キバナは、笑った。
「さよなら、あと、」
 だいすき。消えゆく声に、ネズは彼の手がかき消えるのを見送った。


 立ち上がり、タチフサグマやズルズキンが己を守っていたことに礼を言う。そして、スマホに連絡が入った。
『ネズさんですか?! 実は、キバナさまが病院で目覚めたそうで……!』
 混乱しているリョウタに、おれはエンジンシティの総合病院に行きますと告げると、知ってたんですかと驚かれた。
「今、知ったんです」
 ネズはそれではと通話を切った。


 エンジンシティに行くと、カブに連絡をとった。ジムリーダー、それも一等人気の高いトレーナーだ。エンジンで保護されたのなら、カブに連絡が行くはずだろう。
 キバナは何号室ですかと、皮肉混じりに問えば、おやとカブは意外そうに言った。なんと、キバナが倒れて担ぎ込まれたと知っていたのはエンジンシティのカブと、たまたま居合わせたメロンだけだった。
 そう、キバナを保護したのはカブとメロンだったのだ。
『どうしても意識を戻さなくてね、これはおかしいとメロンさんに勧められて、ポプラさんには相談していたところなんだ。でも、彼女に何もしないようにと言われてね。それから、流石にジムリーダーが不在なのはまずいだろうと、ナックルシティに連絡したら、今度は何故かもう一人、キバナくんが居たものだし。何だか、余計に連絡が難しくてね』
「はあ……まったく、おれが動くことは想定内だったわけですね」
『はは、そうなるね。でもさっき目覚めたみたい。助かってよかった』
「ほんとうに」
 そうだ、キバナに、そちらに向かうと伝えてください。
「おれにも言いたいことがあるんで……逃げるなよ、若造」
 びくり、カブの後ろでベッドが揺れた。カブは、お見通しだねと、クスクス笑っていた。
『ゆっくりおいで。部屋の番号なら……』
 そうして教わった病室へ、ネズは迷うことなく、歩き出したのだった。





おしまい!

・・・

キバネズ→これからがハッピーエンド。

リョウタ→何がなんだか分からない。

カブ→愛の力は偉大だね。

メロン→ポプラさんに任せて帰った。

ポプラ→あ、帰ってきたって? なら今度は鏡池の調査をよろしく頼むよ。

マリィ→何があったのか説明だけはしてほしい。

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