キバネズ/雨の日/捏造しかない/これは二次創作です


!たぶん剣盾のネタバレ含みます!
!どこからがネタバレかわからないですがこれはクリア後クリア後の人間が書いてます!


 雨模様。

 今日は午後から生憎の雨模様でしょう。マリィを送り出した朝、そんなアナウンサーの言葉が聞こえてきた。
 そうか、今日は雨なのか。ネズは机に戻って眠気覚ましのミルクティーを飲んだ。オフの日に限って雨なのだから、嫌になる。
 でも、雨ならアイツが来るかもしれませんね。ネズはやや上向いた気持ちを大切に真綿で包んで、マグを机に置いた。今日は家の中でやるべき仕事があるのだ。気まぐれに彼を待っても良いかもしれい。

 すっかり黒い雲に空が覆われ、雨粒がザアザアと落ちる昼頃だった。
「ネズー、いるかー?」
 他の地方のアーティストから提供を受けた譜面から顔を上げれば、いたいたとキバナが室内に入ってきた。ずぶ濡れじゃないですかと言えば、ヌメラを遊ばせてたと返された。呆れたことだが、折角雨を喜ぶ種族なのだからと遊ばせたくなる気持ちはよく分かる。
「ヌメラ達のためとはいえ、自分の体調にも気を配りやがれですよ」
「お、心配してくれんのか?」
「これぐらい普通でしょう」
 シャワーなら空いてますし、タオルと着替えを用意しますと言えば、助かるとキバナはシャールームに向かった。なお、タオルはともかくとして、着替えはいつだったか、キバナが勝手に置いていったものである。悔しいことにネズの服はキバナには小さいのだ。
 彼の服がある辺り、侵食されているな、とは思う。でもそれが心地よいと思ってしまうから末期だ。精神の深いところを毒されている。タチフサグマが部屋の隅で丸くなって眠っているのを見て、昼寝時かと再確認した。外は土砂降りの雨となっていた。これではしばらくはキバナを家に返せないし、マリィは帰って来られないだろう。

 シャワールームに着替えとタオルを置いてからしばらく。すっかり泥を落としたキバナが部屋に現れた。助かったぜとの明るい顔に、ハイハイと軽い返事をした。
「ところでさあ」
「何ですか」
「ネズって不用心なのか?」
「……は?」
 予想外の言葉に丸い目と瞬きを返せば、だってとキバナは珍しく拗ねた様子で言った。
「オレさまを簡単に家に上げるし、タオルを用意してくれるし、着替えを置いてってもダメって言わねーし」
 むすくれたキバナに、ネズは嗚呼と笑ってしまいそうだった。この男は気がついていないのか。あの、ドラゴン使いで、チャンピオンのライバルたる男が。
「おまえだからですよ」
 用を聞かずに家に上げるのも、シャワーを貸すのも、タオルを用意するのも、着替えを返さずにいるのも。
「おまえだから、許すんです」
 分かりましたか。そう首を傾げて見せれば、キバナは顔を赤くして、そーかよとソファに座ったのだった。

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