キバネズ/とある休暇の使い方/口調分かりません/一人称も危うい/捏造しかない/これは二次創作です


!たぶん剣盾のネタバレ含みます!
!どこからがネタバレかわからないですがこれはクリア後クリア後の人間が書いてます!


 反転する世界でいつも輝いている人。

 ネズは目を覚ました。暗い夜は開け、朝日がカーテンの隙間から射し込んでいる。ふわ、とタチフサグマが身動いだ。うっすらと目を開けて、ネズの目を覗き込む。平気ですよ、そう語りかけてから、ネズはベッドを抜け出した。

 朝起きることは苦手だ。でも、マリィやポケモンたちを思って朝食を用意することは好きだった。
 コンコンと卵を割る。黄身が割れて失敗したので溶き卵にしてマヨネーズを混ぜてからオムレツにする。ベーコンをカリカリになるまで焼いて、時間を見計らってパンをトースターに入れた。
「あ、アニキおはよう……」
 眠たげに目を擦りながらマリィが起きてくる。ネズはへらと下手くそに笑いながら、おはようございますと応えた。
「朝食はすぐ出来ますよ」
「マリィもう大きいけん、自分で用意できると」
「アニキの楽しみを取り上げねーでくださいよ」
 ほらできた。ネズはトースターからパンを取り出し、朝食のプレートを完成させた。


 今日はトーナメント戦に呼ばれているらしい。マリィはせっせと身支度をして、もう出掛けた。ネズは眠気覚ましに泥のような珈琲を啜りながら、さてとと首をひねる。ネズも、本日の予定は既に決まっていた。

 インテリアに凝らない兄妹故に殺風景な家の中の、唯一ごちゃごちゃとコードが伸びる小部屋がネズの作業部屋だ。珈琲だけを持ち込んで、ネズは機械に向き合った。
 音はどうだ。歌詞はどうだ。メロディがズレてないか。ごたごたと考えながら、ネズは自分自身と戦う。ネズはこの時間が嫌いではない。むしろ好きだ。だからこそ、アーティストとして居られる。

 昼になるとアラームが鳴った。簡単な昼食を挟もうと小部屋を出ると、ぬるぬると何かが目の前をゆっくりと横切った。ヌメラである。
「あ、邪魔してるぜー」
 よっと声をかけてきたキバナに、ネズはタチフサグマを見上げた。相棒は、だって人がいなきゃ適当なご飯食べるでしょ、みたいな目を向けてきた。大当たりである。やはり己の相棒は賢い。
「何食べます?」
 作れる範囲ならオーダーを受けますよと言えば、キバナはヌメラを抱き上げながらパンケーキと答えた。昼食としては上々だろう。

 ナナのみを混ぜたパンケーキにあまいミツをかけて食べる。キバナの分はあまいミツではなくベーコンと目玉焼き乗せだ。
「昼飯なのに甘くね?」
「おやつと兼用ですので」
「間食無しってのも持たねーだろ?」
「食べ過ぎよりマシでしょう。あとおれは低燃費ですので」
「いや甘いもの食べててそれはねーわ」
 ところでヌメラやタチフサグマ達に出したフーズは好評のようである。わざわざふりかけを変えただけはある。カブが教えてくれたふりかけの存在にネズは感謝した。
「今日はずっと作業なんだろ? 息抜きにバトルしようぜ!」
「却下です。おまえとのバトルは息抜きになんねーですよ」
「お、褒めてくれんのか」
「プラス思考過ぎません?」
 ていうか何時までいるつもりですか。ジムはどうしたんですか。トーナメント戦は。ネズが矢継ぎ早に質問すれば、キバナは今日は休みだと答えた。その答えにネズがぽかんとすれば、キバナはけらけらと笑った。
「今日のキバナさまはネズのもんだってさ」
 だからマリィが帰るまではお邪魔しますとキバナはからりと晴れた空のように言った。
 ああ、眩しいな。ネズは目をそらしながら、邪魔しないなら好きにしやがれですと口にしたのだった。

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