あなたが是と言う迄に

毛利藤四郎+鳴狐+お供のキツネ+浦島虎徹


 茶室の中。目の前には熱いお茶。並ぶのは毛利と鳴狐とお供の狐。かこーんと、どこからか鹿威しの音が聞こえた気がした。
「今日のお八つ貰ってきたよー!」
 そう言って入室したのは浦島だ。彼は慣れた動作で毛利と鳴狐に菓子を配る。お供の狐の前にも歌仙特製のお八つを置くと、さてと浦島は言った。
「第○×回、池田家の宝物会議をします!」
 池田家の宝物といえば大包平。ここ最近の大包平についての報告会だ。なお、この会合に入りたがった鶯丸は、当の昔に出禁になっている。観察しすぎでちょっと怖いのである。

「最近、大包平さんの周りに本歌さんがいるんですよねぇ……」
 悩ましいと言いたげな毛利に、鳴狐がぼそりと呟く。
「本歌さんはいい刀だよ」
「先日は鳴狐のために胡麻汁粉を作ってくださいましたしねえ」
 そんな鳴狐とお供のキツネの証言に、そうだよと浦島も同調する。
「本歌さんはすっごくいい刀だって! 俺言っただろー?」
「僕もそれは賛同するんですが、大包平さんにべったりなのはちょっと……ついでに写しさんの方も大包平さんを気にかけてますし」
 あれは絶対に何かあったのだろう。毛利が目を鋭くする横で、鳴狐は熱い茶で舌を火傷しそうになっていた。気をつけなさいとお供のキツネが騒いだ。
「写しさんといえば、この前、古備前部屋に菓子折りを届けてたよね?」
 あれは誰からなんだろう。浦島が言うと、本刀でしょうと、毛利はバチンと決めつけた。
「何気に誇り高い刀ですし、菓子折りを運んでくれと頼まれたら自分で渡せと言うような刀じゃないですか。ですから、あれは写しさんから古備前……大包平さんへの菓子折りです」
「うーん、ちょっと毛利が小学生探偵じみてて怖い……」
「真実はいつも一つなんですよ!!」
「ヤケにならないでね?!」
 ああもうと浦島が頭を抱えたところで、鳴狐がそれよりもと発言する。
「それよりも、本丸が騒がしいよ」
 大包平さんと本歌さんだけじゃない。そうぼやけば、毛利はそうですねえと同意した。
 大包平と本歌のじじまご風景。髭切と獅子王のわだかまり。そして、愛染と太鼓鐘の微妙な関係。
 そういえばと、毛利は目を細めた。
「愛染くんはふぎゃれる可愛い子ですが、太鼓鐘くんはふぎゃらない背の高さなので、僕としても眺めていて微妙な気持ちです」
「……どっちも小さい子だったらよかったの?」
「おもいっきりふぎゃれます!!」
「ブレないなあ!」
 もはや天晴である。浦島は甘い菓子を苦いお茶で流し込んだ。
 かこーんと何処からか鹿威しの音がする。ほんとに鳴ったと、浦島は目眩を覚えた。審神者がまた本丸を改装したのだろう。既に要塞じみた本丸の、さらなる改造はもはや審神者の趣味の域だろう。

 そういえば、長屋はまだ壊さないし、当分壊すつもりはないと言っていたな。浦島は現実逃避の傍らに考える。あの長屋は審神者にとっても愛着のある場所らしく、自分の代の間は壊さないと豪語していた。だが、耐久性などを考えれば、十年後ぐらいには壊さないといけないかもしれない。
 その時が来たら、審神者含め悲しむひとは沢山いるのだろう。浦島はそんなことを考えつつ、大包平さんに日頃の感謝を込めて何か贈り物でもと何故か意気込む毛利と鳴狐を止めに入ったのだった。



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