拾いもの

拾いもの/女司書が出ますが恋愛要素はありません/名前変換無し/文アルで逆ハー撃退/12万打お礼リクエスト企画になります。アンタレス様、リクエストありがとうございました!


!アンチ逆ハー!
!悪女というより単に頭弱い女性が出ます!
色々とご注意ください。


「司書、なんか拾ったんだけど」
「あれ、徳田先生? 有碍書で、ですか?」
 確か、潜ってもらったのは、まざあ・ぐうすで、北原白秋先生の訳のはずだ。
 ドロップするなら北原先生だろうか。だが、この図書館には既に北原先生がいる。その場合、魂がドロップするはずだが。
「こんにちは!」
「え?」
 そこにはブロンドの髪をした緑色の目の女性がいた。

「ええとまず、名前を教えていただけますか?」
「名前……ええと、私はどこでドロップしたの?」
「……まざあ・ぐうすです」
「マザーグース! イギリスの本よね! じゃあ私はアリスです!」
「はあ……」
 徳田先生はアリスと名乗った女性を痛々しいものを見る目で見ている。まあ、わかる。司書は頭を抱えたかった。まず、まざあ・ぐうすには有名な訳者として北原白秋がいる。が、本家本元のマザーグースは作者不明、もし作者がはっきりしていても、後世には作者不明として残るという性質がある。よって、マザーグースから文豪は転生しない。更に言うと、彼女はドロップと言った。文豪に馴染みのある言葉ではないはずだ。
 結論として、彼女は、文豪ではない。

「一般人が文豪のふりをしている」
 徳田先生にアリスをさりげなく隔離させるように頼んで司書室で頭を抱えていると、徳田先生と潜書した島崎藤村先生が告げた。
「何かの手違いってことだよね」
「そうなります。ああ、ややこしい子となった」
「司書さんはどうしたい?」
「あの女性を速やかに処理したいですね」
「殺すの?」
「そんな物騒なことはしません! ただ、一度まざあ・ぐうすに潜書すればきっと返せるでしょう」
「時間の猶予は」
「明日までですかね」
「ふうん」
 ところでと、島崎先生はペンをなぞって言った。
「あの子嫌いだな」
「まあ、私もあまり得意なタイプではないですね……」
 司書は遠い目をした。

「司書さん助けて!」
「太宰先生どうしましたか」
 アリスをまざあ・ぐうすに潜書させるべく案を巡らせていると、太宰治先生が駆け込んできた。
「どうしたのですか」
「あの! アリスって人が付きまとってくるんだ! もーむり、気持ち悪い!」
「えっと?」
「媚を売りすぎなんだよ! 女の子は嫌いじゃないけど、あの子は無理。頭弱いし」
 賢い人が好きだよ。太宰先生はそう言って司書室の隅で、そっと膝を抱えた。壇先生が見たら発狂しそうである。こういうときに限って、壇先生には他の国定図書館に派遣となっているので、ままならない。
「でも、徳田先生とアリスさんをここに呼びますが?」
「まじで?! じゃあ逃げる!」
「中庭の奥とかどうでしょう?」
「そうする!」
 太宰先生はそうして駆け抜けて行った。

「私が潜書?! 戦うなんて野蛮なことできません!」
「ご心配なく、文学を守る文士ならば教えられるまでもなく戦えるはずですよ」
「でも! でも! 秋声さんもこの分からずやの司書に言ってくださいよ!」
「僕は潜書に賛成だけど?」
「なんで! 私、戦えないのに!」
「文士なんだろ、戦えるはず」
「信じられない! 私を殺す気なんだわ!」
「そんなつもりはありませんよ」
 そもそもと、アリスはヒートアップする。
「ここの人たちおかしいの、私を愛でてくれないの! 貴女がいるから? 紅一点じゃないとだめってこと?」
「そんな訳は」
「だったら私が司書になる! あんたなんか殺してやる!」
 そうして司書に詰め寄ったアリスに、司書は落ち着いてと宥めた。
「先生たちはシャイなんです。それよりも潜書しますよね?」
「いや! 絶対に嫌よ!」
「そうですか……」
 では、と司書は赤い石を差し出した。
「これを持てば絶筆を避けられます」
「賢者の石? 確かに絶筆は避けられるけど! 痛いのは嫌!」
「では後方について行ってください」
「ああ! 王子様たちが私を守ってくれるのね! 少しはいい案出すじゃない」
 アリスは石を持つと潜書しましょと主張を一転した。
「吊橋効果だとしても、ちやほやされるなら、それでいいわ!」
「そうですか」
 司書はではと徳田先生と島崎先生とその辺にいた太宰先生を緊急だと呼びつけて、アリスに潜書させたのだった。


 帰ってきたのは当然、文豪のみだ。
「アリスってやつ、まざあ・ぐうすに潜書したらすぐに体が解けていってさあ!」
「絶叫しながら消えてったよ。どんな気持ちか聞きそびれちゃった」
「もう二度とこんなバグに遭いたくないね」
 なにはともあれ。
「皆さんお疲れ様でした。今日明日は全体の潜書を取りやめにして、システムメンテナンスしますね」
 是非そうしてよ。徳田先生はハアと息を吐いたのだった。

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