妹司書は兄審神者に恋してるっ!

タイトル:妹司書は兄審神者に恋してるっ!
要素:文豪とアルケミストと刀剣乱舞のクロスオーバー

※クロスオーバー夢練習用習作です。
※現時点では恋愛要素はゼロのつもりですが、刀剣男士から文豪への好意の矢印はかなりオープンです。人の子だいすき!
※史実を調べきれてないです。

【夢主設定】
※妹司書はヤンデレ
※妹司書→→→兄審神者
兄審神者男主……妹こわい。刀剣男士と文豪は家族。
妹司書女主……お兄様だいすきです!刀剣と文豪は家族(異性と認識していない)。

【登場キャラ】
獅子王……林太郎だいすき
五虎退……南吉くんはともだち
前田藤四郎/大典太光世……秋声だいすき
森鴎外……鴎外と呼んでほしいような気持ち
新美南吉……ごこちゃんはともだち
徳田秋声……真っ直ぐな好意にあたふたする
尾崎紅葉……我は面白いから満足
【敬称】
審神者→文豪……基本はさん付け。
文豪→審神者……基本は男主君か審神者君。
司書→刀……基本は様呼び。
刀→司書……基本は女主さんか司書さん。
刀→文豪……基本はさん付け。
文豪→刀……基本はさん付け。


 主、手紙が届いてるぜ。近侍の獅子王の言葉に、おやと審神者は顔を上げた。
「あれ、誰も修行に出してないけどなあ」
「いや、そっちじゃなくてさ」
 ほらと渡された小さな封筒。真っ白なそれに垂らされた赤い封蝋の印章に、審神者はサッと青褪めた。慌てて封を開き、ザッと穢れを祓ってから手紙を読むと、控えていた獅子王に告げる。
「妹が来る」
 やっぱりと、獅子王はくつくつ笑った。

 とある田舎の国定図書館。かつかつと廊下を歩く音がしたかと思うと、ギィと立て付けの悪い扉が開かれた。
「司書、少し話がある」
「ああ、鴎外先生ですか。話なら徳田先生へどうぞ。私は今、準備に忙しいんです」
「その件についてだ。誰を連れて行くつもりか聞いても?」
「南吉くんが五虎退くんと話したいことがあると言っていました」
「銃一人では何かあったときに困るだろう。会派ひとつ分は連れていきなさい」
「鴎外先生は心配性なんです。お兄様の本丸に行くだけですよ」
「だから、本丸への移動中に何かあってはと」
「では、誰を連れて行けば納得してくださるのですか?」
「武器種の違う四人は連れていきなさい」
 ええ、と司書が嫌な顔をするので、鴎外は長いため息をグッと飲み込んだ。この国定図書館の第一会派として前線に立つ鴎外は、相当な古参であり、司書とは父子のような関係にある。
 その時、チチチと青い鳥が窓から飛び込んだ。待ってと南吉もまた飛び込んできた。
「あれ、青い鳥さんはどこに……?」
「それならお返事を持って来てくれたんですよ。南吉くんも読みますか? きっとお兄様からです」
「わあ、いいの?」
「勿論です」
「司書、話を聞きなさい」
 鴎外の言葉に、あれと南吉が首を傾げた。
「どうしたの?」
「鴎外先生は心配性なんです」
「何度か道中で敵に襲われたことがあるだろう」
「運が悪かっただけです」
「だから……」
「司書さん、他の人は連れて行かないの?」
 きょとんとする南吉に、司書は目をそらした。じいっと見られて、そろりと司書は後退る。ほら見たことか。鴎外はハァと息を吐いた。
「良い加減、諦めたほうがいい」
「うう、先生達は連れて行くと大騒ぎになるので、お兄様との時間が減ってしまいます」
「ボクたちは邪魔なの?」
「いいえ、ただ、付喪神様達は人の子が好き過ぎると言いますか……どんちゃん騒ぎになるじゃないですか……私は静かにお兄様とデートをしたくてですね……」
「うう、邪魔なの?」
「いえ、そうではなく……」
「じゃあ、いいよね?」
「はい……」
 南吉の泣き落としに敗北した司書は鬱々とした顔で文豪の選出をし始めた。床に転がる怪しげな錬金術の道具は、鴎外と南吉でテキパキと片付ける。その途中、ふと青い鳥が飛んできて、金色の葉書を落とした。鴎外が拾うと、ふわっと輝いて普通の葉書に変わる。おそらく己宛だろうと見当を付けて、鴎外は葉書の文書を読むとなるほどと顔を上げた。
「司書、俺も連れて行ってほしい」
 呼び出されたと告げた鴎外に、司書は苦虫を噛んだような顔をした。


・・・

本丸遠征会派
新美南吉……銃
森鴎外……刃
徳田秋声……弓
尾崎紅葉……鞭

・・・

国定図書館遠征部隊
獅子王……太刀
五虎退……極短刀
前田藤四郎……極短刀
大典太光世……太刀

・・・


 寂れた田舎町を見目麗しい集団が歩く。人通りは少ないが、すれ違う彼らからは惚けたような視線が向けられた。そこで司書は目くらましを掛け忘れたなと気がついた。アルケミストは強力な術を使えるが、下準備が必須である場合が多い。特に、目くらましの場合は事前に薬を調合しておく必要があった。しまったなと顔を歪める。

 町外れまでやって来ると、一行は立ち止まる。しばし待つと、山の方からタタッと足音がした。
「おーい!林太郎ー!」
 ぶんぶんと向こうから手を振って走ってくる黒を纏う金色の刀に、鴎外は頭痛を覚えた。司書は気にすることなく、合流出来ましたねと確認した。
「女主さん、久しぶりだな!」
「獅子王様こそ、お久しぶりです」
 頭を下げた司書に、そう畏まるなよと獅子王は笑った。さらにタッタッと軽い足音がして、五虎退が駆けてくると、南吉はパッと顔を明るくして駆け寄った。
「ごこちゃん!」
「南吉さん、お久しぶりですっ!」
「ふふ、きれいなアクセサリーを貰ったからね、ごこちゃんに見せたくてね」
「お手紙で教えくださった根付のことですか?」
「ペンダントだよ?」
 ズボンのポケットから器用に紙袋を取り出した南吉と、それを受け取って開いてもいいですかと微笑む五虎退の楽しげなやり取りに、司書が早くお兄様に会いたいとぼやいていると、のんびりと前田藤四郎と大典太光世がやって来た。そちらにいち早く反応したのは秋声と紅葉であった。
「あ、前田さんに大典太さんだ」
「蔵から出てきたのか。秋声の効果か?」
「そんなわけないです」
 眉を寄せた秋声に気が付かないのか、前田がトトと駆け寄る。秋声さんと楽しげに名を呼び、手を取る。
「大典太さんがどうしても秋声さんに見せたい景色があるそうです。本丸に着いたら一緒に出掛けてくださいますか?」
「べつに僕じゃなくてもいいだろ」
「いいえ! 秋声さんだからこそですよ」
 ふわと笑った前田に、秋声はああうんと生返事を返した。付喪神の真っ直ぐな好意に、まだ秋声は慣れていないのだ。ちなみにその横で紅葉は、大典太が桜をぶわっと舞い上げたのを面白い面白いと見ていた。
「じゃあ行こうぜ! 女主さんは忘れ物はないか?」
「勿論です! お兄様への手土産は忘れません」
「ははっ、いつも通りだな!」
 よおし、出発!そんな掛け声で、一行は歩き出した。


 野を越え山を越え、ではないが、しばらく山道を歩くと、やがて大きな門が現れる。この町の国定図書館とは全く様相の違うそれは、神域への入口だった。政府の派閥はどちらかというと錬金科より陰陽寮のほうが力強いらしく、設備は本丸の方が充実していた。

 門を通ると、ぱっとにわか雨が降った。文豪がチリチリとした痛みを味わい、司書はぶるりと身震いをした。本丸の敷地に入る度に立ち込めるそれは、図書館で行われる有碍書への潜書で纏った瘴気を祓い清める行為である。審神者が発案し、元の主が建築に凝っていたという刀と御神刀の力作であった。一人一人に儀式をしない分、手っ取り早いが、建設費用を考えると司書は気が遠くなるので考えないことにしている。費用を捻出したお兄様はやっぱりすごい。
「本丸に着いたら昼餉が用意してあるぜ!」
「皆さんで食べましょうね」
 にこにこと笑う獅子王と五虎退はしっかりと鴎外と南吉の隣に立っている。なお、秋声は右側の前田と左側の大典太に挟まれていた。前田はどちらかというと懐に入りたいのですがと呟いていた。
 紅葉がくつくつ笑いながら司書の隣に行くと、司書はお兄様に思いを馳せていた。
「うん? 何か気になることがあるのか?」
「昼食をお兄様と食べれるのでしょうか……?!」
「司書の兄は忙しいから、別室で食べているのではないか?」
「お兄様は優秀ですからね!」
「司書も錬金術師として優秀な方だと聞いているが?」
「それは周りが言ってるだけです」
「司書が兄に言うそれも変わらぬだろうに」
「いいんです。お兄様が優秀なのは決まりきったことですから!」
 胸を張る司書に、厄介な憧憬だなと紅葉は楽しそうに笑ったのだった。
 優しいご飯の匂いがする。本丸は、もうすぐそこだった。

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