甘い匂いの彼女

タイトル:甘い匂いの彼女
要素:notアオイ/百合
版権:ポケモン
CP:女主×オモダカ

名前変換有り。女主のところに名前をどうぞ。

攻め女主→オモダカの同級生/おおらか/パティスリー『ムクロジ』のパティシエール/カエデは友達


 いつも甘い匂いがする。とは、オモダカからよく言われていたし、まあ職業柄かなとか思っていた。
「オモダカ?」
「女主さんのにおい、安心します」
「それはどうも。こんなところで寝ちゃったら風邪引くよ?」
 オモダカの家に、カロリー摂取しろとの意味を込めて手作りのお菓子を手に押し掛ければ、疲労困憊のオモダカがいた。
 ここまでダメになってるのは珍しいなあと思いながら、よいしょっと声を出してオモダカを抱っこする。知っているだろうか、お菓子作りの基本は作り手の体力と筋力なのである。というわけでオモダカを抱っこしてベッドに運ぶ。この家も広いなあなんてポヤポヤ考えながら、家と同じように広いオモダカのベッドに、彼女を寝かせた。緩く留めておいた髪がはらりと落ちる。あら、と思って髪を結び直そうとすると、くい、とオモダカに引っ張られる。
「女主さんもねましょう」
「はいはい。私はまだ眠くないのでオモダカだけで寝てね」
「さみしいです」
「酔っ払いなの?」
「酒は飲んでません」
「ただのお疲れモードだね。ほら、寝て」
「だって女主さんはあまい匂いがして落ち着くんです」
「お菓子の匂いでしょう?」
「ちがいます。とても甘くて、くらくらする」
「こら、腰に手を当てないの」
「だって、わたくし、こんなに女主さんがすきなのに」
「お疲れなら寝てね。起きたらたっぷり愛してあげるから」
「やくそくですよ?」
「うん。約束」
 ちゅ、と瞼に口付けると、オモダカは嬉しそうに笑って、ことんと眠った。
 さて、このお疲れオモダカの家を片付けなければ。きっと掃除などが出来てないだろうと、私はさっさと動き出した。
 どうやら不在時だけでもハウスキーパーを雇っていたらしく、思ったより埃が溜まっていなかった。冷蔵庫の中には作り置きのおかずがあり、まずこれを作ってから仕事に打ち込んでいたのだろうと苦笑する。私が何度も食事の大切さを説いたからか、オモダカはどれだけ忙しくても食事を疎かにしない。良いことである。ただ、サンドウィッチ作りはいつまでも上達しない。何故だ。
「何か作ろうかなあ」
 キラフロルたちがご飯を期待してはしゃいでいるのを眺めながら髪を結び直して、私は作り置きのおかずを温め、追加の料理に取り掛かった。

 そろそろかなと、ベッドルームに行く。すると、オモダカがむくりと起き上がった。おはようと声をかけると、おはようございますとオモダカは眠そうに言った。
「まだ寝てていいよ?」
「もう起きます。折角、女主さんがきてくれたんですもの」
「ふふ。ありがとう。でも、無理はしないでね」
「はい」
 そしてベッドから降りたオモダカに良い子と額にキスをしてから、リビングにエスコートした。
 食事をしながら、近況をあれこれ話す。どうやらオモダカは最近、チリさんとやらとよく話すようだ。狙われているようなら釘を刺す必要があるな。ふむふむと聴きながら、思案する。ハッサクさんとアオキさんは付き合いが長いので、私のことを知っているが、ポピーちゃんやチリさんは私のことなど知らないだろう。ならば。
「そうだ。オモダカ、今度リーグに差し入れしていい?」
「差し入れ、ですか?」
「うん。『ムクロジ』のスイーツ。勿論、私が作ったやつ」
「いいんですか?」
「いいよお。むしろ、邪魔にならないかなって聞いてるの」
「全く邪魔になりません。それに、その、」
 オモダカはぽぽと頬を染めて言う。
「女主さんと、リーグで会ったら、威厳が保てそうにありません」
「ふふ。そうかもね」
 でも、嬉しいでしょう。そう言うと、オモダカは、はいと笑った。
 キラフロルたちが、微笑ましそうにしているような気がした。

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