ツバキと僕のお茶会

タイトル:ツバキと僕のお茶会
要素:友情
版権:ポケモン

性別不明主→名前変換無し性別不明主。天冠の山麓にある洞窟の奥、閉ざされた楽園で暮らしている。相棒はメラルバ。

!主人公はショウで固定です!

!ツバキの口調は雰囲気です!
初書きです。


 遠くをウォーグルが飛んでいる。きっとショウが横切ったのだろう。ということは彼が気を立てているに違いない。水筒に粗熱が取れた茶を入れて、蓋をした。

「ツバキさん!」
 たったか走る。ツバキはぎょっと驚いた顔をした。そして、わなわなと震える。
「ちょっと、なにしてるんだい!」
「ツバキさんこそ、大丈夫? お茶持ってきたよ」
「ボクなら平気だよ。何たってツバキだからね」
「はい。そうだね」
「メラルバも元気だね」
「スカタンクたちも。ほら、お茶しましょ」
「わ、走ると転ぶよ!」
 ツバキを木陰に導くと、二人分のお茶会の準備をする。もちろん、ポケモンたちにきのみのお裾分けもした。
 冷たい茶を手に、ツバキは全くあのウマのホネはとぷりぷり怒る。
「またボクとの約束を先延ばしにしたんだよう!」
「ショウさんは忙しいからねえ。というか、ウマのホネは訂正したんじゃなかったの?」
「ツバキとの約束を守らないやつはウマのホネだよ」
「あっそう」
「興味なさそうだね」
「ショウさんは僕に食料とかを融通してくれたからね。まあ、トントン」
「みんなウマのホネが好きなのかよう!」
「ツバキさんも好きでしょ」
「うぐぐ」
 それはそうだけど、そうじゃない。ツバキの主張に、くつくつと笑った。
「そういえばツバキさん、風邪気味だったでしょ。治ったの?」
「平気だよう!」
「ふーん」
「疑うのかい」
「ツバキさんはペラップより話す癖にそういうところは言わないからなあ」
「素直じゃなくて悪かったね!」
「素直ではあるよ」
「どっち?!」
「まあまあ」
 そうして足元に擦り寄ってきたメラルバを撫でながら、そういえばと口にした。
「ショウさんに相談してみたら?」
「嫌だよう」
「でも、ギンガ団の技術なら、風邪なんてあっという間に治るんじゃないの?」
「借りを作りたくないんだよう」
「ショウさんはヒスイの英雄だけどね」
「ウマのホネはウマのホネだよう!」
「え、違うの?」
「英雄ってのは、いないよ」
 ツバキはそっと目を伏せる。こうしていると、きれいな人だ。思わず、静かに息を吐いた。
「居るのは、ツバキ賞をあげたウマのホネだけ」
「どうして?」
「英雄っていうのは、神話の中にいるんだよ。今を生きる人間じゃない」
 生きながら、英雄なのは、それはもう、人間じゃないのだ。ツバキの言葉に、ふうんと適当な相槌を打った。まだ精神的に若いツバキの、その瑞々しい感性に首を傾げる。
 ツバキはいつまでも純粋な人だ。純粋すぎて、ヒスイの大地にいつか囚われるんじゃないかとすら思えた。だとしたら、そんなツバキを救い出すのはショウなのだろう。
「ツバキさんはやっぱりショウさんが好きなんだね」
「だから! 違う!」
「信頼してるんでしょ」
 ツバキ賞を、簡単にはあげないからね。指摘に、そうだねとツバキは渋々頷いた。
「はあ、あのウマのホネを捕まえる秘策とかないのかよう」
「ところで何を約束したの?」
「イモモチを」
「いももち?」
「イモモチを一緒に食べようって、あっちから言い出したのにい」
 やっぱり仲良しだし、大好きだよね。くつくつ笑うと、違うよとツバキはむきになったのだった。

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