05:記憶


 一ヶ月に一度は時間を作って会いに来ると約束し、風見は阿笠邸を出た。

 とんでもない事になってきた気がする。風見はそんな事を思いながら、体内の熱を感じた。炎のように熱いこの刀は、守り刀なのだと言われた。しかし、この熱は本当に自分を守るものなのだろうか。
 風見は初めて己の刀と出会った時を思い出した。物置の中、厳重に封がされた箱の中。
(そういえば、)
 刀を選んだ自分に対し、母が言っていた。
「清く正しくありなさい」
 呟くと、風見は頭を軽く振って、休日へと戻ったのだった。


………


 コナンは阿笠邸に入る。
「誰か来てたのか?」
「ええ」
 博士は発明品を見せるために、部屋の奥へと消えていた。灰原がパソコンを操作しながら、答える。
「知らない人よ」
 星の定めも、掟も、運命も。それ以上は言わない灰原に、コナンは理解しきれない顔をした。

「ったく、博士! 刀を見てくれ!」
「またかの?」


………


 少女は自室に立ち、右足で床を叩いた。トン、と音が鳴ると、音も無く少女の身長程の槍が現れる。
 その槍を掴むと、少女こと毛利蘭は慎重に柄をなぞり、切っ先を見る。
「よし」
 曇りは無い。鏡面のような刃は、驚くほどに鋭利だ。


………


 降谷は車に乗っていた。運転をしながら、考える。
 ここの所、刀堕ちが増えている。原因は何なのかと、降谷は苛立ちを飲み込む。
「一つではない」
 複数の因果により刀堕ちが増え、刀による被害も水面下で増えている。対応が遅れていることは明らかだった。
「何なんだ」
 飲み込め切れなかった苛立ちが、口から溢れた。


………


 刀を持つならば。
「清く正しくありなさい」

 刀を×××ならば。
「清く正しくありなさい」

 ×を×××ならば、
 その刃が己の血で濡れたりしないように。


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