風見+降谷+コナン+灰原/秘めた愛/夢の友人シリーズ5


 廻る回る、メリーゴーランドのように。

 花を渡された。マーガレットという花で、色は白かった。おじさんにあげると、押し付けられた。
 少女は黒く長い髪をしていた。澄ました顔で花を押し付けて、颯爽と雑踏に消えた。三つ目の角にある小さな花屋の孫娘。そんなワードが頭に浮かぶ。通りかかるたびに花を見ていたことに気がつかれたのだろう。今度からは歩くルートを変えねばならない。

 花を手に、上司に指定された路地に入る。既に着いていた上司、降谷さんは手の中のマーガレットを見て呆れた顔をした。
「何でだ」
「すみません、捨てるべきでした」
「いらないのか」
「目立つので」
 三十歳の男が持っていたら驚かれるばかりだろう。そう思って言えば、降谷さんはならばとビニール袋を突き出した。
「ここに入れろ」
「はい?」
「バイト先で飾ってやる」
 花に罪ないからな。そんなことを言うので、仕方ないと不透明なビニール袋に花を入れた。

 報告を済ませると先に降谷さんが路地から立ち去る。別方向に自分は向かおうとその背をわずかに見た。安室の姿をした降谷さんのビニール袋に、真っ白なマーガレットが一輪。
 似合わないな。ふと、思った。


………


 夢の中。泉のほとりにあるテーブルにお茶会の準備を済ませると、少女が舞い降りるようにやって来た。今日はアールグレイね。少女は静かに言った。
「そんな気分だったんだ」
「随分と強い香りね」
「忘れたい匂いがあるのかもしれない」
「そう、それは大変ね」
 ならば明日はココアにしましょう。少女はそう言ってテーブルの隣に立った。柔らかな、日本人離れした髪色が、どこか上司を思い起こさせた。


………


 コナンがポアロに入ると、カウンターに白いマーガレットがあった。ペッドボトルに挿されたそれが、僅かに揺れた。
「どうしたの、これ」
「ああ、それは知り合いに貰ったんだよ」
 綺麗だろうと安室が言うと、コナンはそうだねと頷いた。花屋ならばどこにでもあるような花。贈り物によく使われる花だとコナンは考え、気がついた。
「告白?」
「どうしたのかな」
「安室さんは花言葉を知ってる?」
「さあ、どうだったか」
 どんな花言葉かなと問われたコナンは、忘れちゃったと肩をすくめた。白いマーガレット、秘めた愛。まさか、とコナンは頭の隅にその思考を放り投げた。それは知らなくたっていい話のような、そんな予感がしたのだった。



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