椿

 あなたがそう仰るのなら。
 手のひらに宇宙があります。その宇宙はどれほどの大きさでしょうか。
「手のひらぐらいでしょう」
 そう、これくらい。そうあなたは真白な手のひらを私に見せました。白い椿のようなその手に、私はうっとりと指先を走らせます。
「この手はとても綺麗です」
 握りしめば赤くなり、爪で傷を付ければきっとじわりと血が滲むのでしょう。そう笑えば、あなたは目を細めました。
「ならばこうしましょうか」
 するとあなたは小さな針で人差し指の先をぷつりと刺しました。黒いほどに赤い血が、ぷくりと玉になりました。
 白い椿に染みが一つ。
「あなたには似合いませんわ」
「そうでしょうか」
 本当にそうでしょうか。あなたは再度、私に問うたのです。

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