06:私が審神者に就任した日


【審神者視点】


 その日、私は目が覚めると和風建築の中の、畳の上に寝転がっていた。


「あー、川の下の子です。加州清光。扱いづらいけど、性能はいい感じってね」
 よろしくね主と言われて、隣でこんのすけという式が嬉しそうに成功ですと騒いでいたのを聞いて、私は。
 ぼろぼろと泣いていた。

 ごめんね、と謝る。どうしたのと慌てる加州くんに、私はごめんねと思う一度謝った。
「きっと安らかに眠っていたことでしょう、きっと穏やかに時を感じていたことでしょう。それなのに、こんな風に目覚めさせてしまってごめんなさい」
 そのままぼろぼろと涙を零し、ゴシゴシと涙を拭う。これから私は戦争の中に飛び込むのだと式のこんのすけに聞いただったら、泣いててはいけない。それでも悲しいものは悲しくて、涙が止まらなかった。
「あー、あのさ、主」
「う、うん、なにかな?」
「俺たち刀なんだよね、だから、こうして国の非常時に俺を目覚めさせてくれたこと、感謝してるの」
「感謝……?」
「そ、歴史が改変されそうになっている、俺が一番大切にしたい思い出が汚されそうとしている。そんなの、嫌じゃん。苦しいし、そんな非常時に立ち上がれなかったの、刀として虚しすぎるよ」
「そう、なの?」
 うん、そーなのと加州君は笑った。
「だから主、俺の、刀剣男士としてもう一度地に立った俺の主。これからよろしくね」
 笑って、笑って。これから長い戦いが始まるのに、加州君はどこか楽しそうですらあって。私はくしゃりとぶさいくに顔を歪めて、嗚咽混じりに応えた。
「よろ、しくね。私の、はじめての刀さん」
「うん!」
 あはは主の顔ぶさいくになってるじゃんと、加州君はその手で私の顔をゴシゴシと撫でたのだった。

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